『Kくんと一緒』vol.9 〜ラストダンス〜 | Mosh Monster's Thinktank

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HxC,Punk,Screamo,Metalなど、好きな音楽についてのひとり言、ライブレポ、自身がC.E.Oを務めるマーチャンダイジングショップgrimparkの情報。

好きなファッションについての話をひたすら語ります。語りすぎます。

あろうことかコロナ禍で自粛ムード漂う年の瀬に唯一の忘年会をKくんと二人で開催することになった。

暗闇に紛れるように現れたK。

いつものように風呂に数日入ってない様子で余命いくばくもない髪の毛が頭皮に張り付き、スラブデニムのような風態だ。

ちゃっかりArc'teryxのマウンパを着ているK。
今季のBEAMS別注品で彼の月収と同額の1着だ。

そもそもは15年ほど前からArc'teryxのマウンパを愛用してるのは僕。
もう5着くらいは色違いで所有してます。

ここ2〜3年とくにArc'teryx着用者が増え、バックパック(アロー22)使用者も大増殖。
そんな中で9月か10月くらいに銀座のBEAMSで今季のマウンパを見て地元に帰り、Kに「今季のArc'teryx別注カッコいいけど街中アークだらけだし迷うなぁ」と話した僕。

ここからのKは速かった。
1週間もせず「アークとビームスの買った」とLINEがきてあたかも「俺が見つけたからお前より先に買った」とでも言いたげな文言。

昨夜初めて着用してるのを見ましたがArc'teryx初心者あるあるでSLとLTなどの違いも分からず買ったパターンで袖丈はダブダブで着丈も尻を越えてモモ裏まであり、なんとも野暮ったいサイズ感で過疎地の農民のようなKの顔と相まって街中にあふれるアークさんの誰よりも似合っていなかった…残念。

地元の餃子専門店にてプチ忘年会をすることにした僕とK。
毎度のように「味ついてるので何もつけずにお召し上がりください」と言われても小皿にタプタプに酢だけを入れてベチョベチョに浸して食べるK。
発情したオカピのような顔で咀嚼するKを見るとやはりなかなか僕の箸は進まない。

Kに箸休めを任せると毎回ほぼコレ↓
チャンジャとオニスラ。
お酒飲める年齢になってたかが5回目の飲み会で"俺は飲み慣れてる感"を頑張って出してる大学生みたいなクッソつまんねーチョイスです。

ビールだよ?餃子もくるんだよ?
ふつう炙りチャーシュー頼むよね。

自分で頼んだチャンジャとオニスラにはなかなか箸をつけなかったK。この炙りチャーシューが運ばれてくると「あったかいうちに…」と車に轢かれたカピバラのような顔で食べ始めた。

はっきり言って何のハイライトもない夜ではありましたが強いて言うならKのお家芸の話。
僕らが席について約30分後、となりの席に20代の女の子2人組が来た。
それ以降、Kはグラスを口に運ぶたびに目を血走らせて女の子2人組を見つめ、グラスを置くと唇を舐めずるという"終末のキモ芸"を展開した。
片方の女の子がそれに気づき、居心地が悪くなったのかほんの1時間ほどでお会計して帰っていきました。

次に通されたのも女の子2人組。
Kは懲りずにグラスのフチをネブりながら目で猥褻行為を試みるも突然その2人組の知り合いらしい男性が合流して一転して絶望顔になった。
優しげで清潔感のある男性が楽しそうに女性2人に囲まれてお酒を進める隣の席に妬みと憎しみを抱いたK。

震える手で箸をつかみおもむろに冷めた餃子にカブりついた瞬間、勢いよく肉汁が飛ぶ。
美しく弧を描いたKの口から飛んだ肉汁は隣のテーブルには届かなかったもののお隣さんの足元の床に着弾し、周囲ドン引。

「なんだアイツ、見た目も食べ方も汚ねぇ」
「肉汁飛ばしてんじゃねーよ浮浪者」
「こっち見んなし」
「え?人間?あれ人間なの?」

ヒソヒソヒソヒソ…ザワつく店内。

静かに席を立ったKはトイレに籠城し、10分ほど出てこなかった。泣いていたのだろう。


トドメを刺したのは店員のお姉さん。
自分で頼んだオニスラをKが貪り食べてる最中に黙って皿ごとさげて歩き去る奇跡が起きた。

アリクイのような顔でジャクジャク咀嚼してる最中にスーッと持ってかれたK。
箸を持ったまま厨房へ消えていく背中を見つめ、下を向いて静かに箸を置いた。

「お前、キモい。もう帰れよ」
…まぁそういう意味だろう。


そんなわけで2020年もKは最高、至高だった。