Gatton Caravan Park | 暴走ピノキオ 文学・音楽・地域研究

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 17時間もの長旅を終えてガトンに着いた。
エージェントの人に教えてもらったブライアンというマネージャーに電話してガトンのバス停まで迎えにきてもらうことにした。
 電話に出た相手の英語の発音からして電話の相手はどうやらオーストラリア人ではない。まあ日本人でもないようだが中年のアジア人男性といったところか。

 しばらく待つことになったので、荷物を置いて椅子に腰を下ろした。すると散歩中の現地のオーストラリア人に「Good Morning」と気軽に挨拶された。これはシドニーではありえないことだ。日本でも田舎に行けば知らない人同士で挨拶するのは不思議じゃない。となると、ここガトンもそれなりに田舎なのだろう。早朝だし、人通りは少ないが、長閑な雰囲気はなく、なんとなくごく普通の町で生活しやすい感じがする。
 やっぱり僕は密集した環境を好きになれないようだ。

 さて、トヨタのハイエースで迎えに来てくれたのは電話の主とはまた別の韓国人の青年だった。見たとこ二十代後半で痩せていて、髪は伸び放題の長髪。眼鏡をかけていてまじめそう。有り体に言えば、オウム真理教で修行している青年といった感じだが、不健康な感じは一切無く、クイーンズランド州の陽に焼かれて顔は真っ黒だった。韓国人のようだがシドニーでは見かけないタイプだ。笑顔であるとか、よく喋るわけでわないが、気遣いができて信頼できる印象だった。

 車に乗り、5分くらいでキャラバンパークに着いた。僕はこのキャラバンパークで生活するらしい。

 まだ早朝だったのでキャラバンパークの管理室は閉まっていた。バスで寝てなかった僕は眠かったので、管理室が開くまで隣にあったビリヤード場にあるソファーで寝ることにした。

 2時間くらい寝ただろうか。そろそろ管理室が開いているだろうと思い、向かってみると白人のおばさんが受付にいて、「あなたがビリヤード場のソファーで寝ていた男の子?」と聞かれ、イエスと答えた。

 なんだろう。エージェントからブライアンという名前のファームでの仕事を紹介されたんだが、システムがいまいちわからない。つまり僕はキャラバンに宿泊しながら、畑へ仕事をしに行き、お金を稼ぐという日常をこれからこなしていくようだ。
 
 ここで、日本ではなかなか馴染みのないキャラバンについて説明しておきたい。
 オーストラリアでキャラバンと呼ばれるものは、日本式に言えばキャンピングカーのようなもので、キャラバンは牽引する車両と、それによって接続され牽引されるワンルームのような部屋を含めた乗り物と言えば分かりやすいだろう。僕はこれ程まで大きいキャンピングカーを見たことは無いが広大なオーストラリアではノーマルなキャンピングカーのようだ。そして、キャラバンパークという場所はそういったキャラバンの部屋の部分だけを置いて宿泊施設にしているところである。
 このガトン・キャラバンパークにはそういったキャラバンが100部屋くらい置かれていた。今までの人生でキャラバンパークなんて知らなかったし、これはちょっとしたカルチャーショックで、そこに寝泊まりするなんてなんだか楽しそうに思えた。

 僕が案内されたキャラバンは大きめで、すでに3人の韓国人たちが共同生活をしていた。
 
 そこに1人の日本人(僕)が参入するのは気が引けたが、彼らとは色々なことで話ができて楽しかった。
 韓国人の女の子は野性的で好きじゃなく、日本人の女の子が大好きなこと。タマネギの収穫作業が大変なこと。

 翌日、早速最初の仕事へ向かった。
畑でエシャロットという長ネギのような野菜を収穫した。しかし、実際は長ネギに似て非なる植物でユリ科の多年草らしい。

これを時間内にたくさん穫ってかごに入れ、そのかごの数でお金が支払われるのだが、最初はうまくいかない。日本人にも2人会ったが、実際に作業の仕方を教えてくれたのは韓国人達だった。泥を除くために少し皮を剥くのだが、これが剥きすぎたり、剥きが足りなかったりで、僕のエシャロットがひどくてクレームが来た。
 これで本当に稼げるのだろうか。心配になってきた。

 ある日、仕事がなかったのでキャラバンの中でのんびりしていた。するとあのブライアンがやってきた。見た目はなぎら健壱そっくりの中肉中背の50手前くらいの韓国人だ。僕はブライアンなんて名前だからてっきり白人のオーストラリア人かと思っていたのだが、まさか韓国人だったとは。
 そのなぎら健壱似のブライアンに仕事があるから来てくれと言われ、彼の車に乗せられてトマト工場まで連れて行かれた。そこで早速仕事を得て、トマトのパッキングをする仕事についたのだった。

 ベルトコンベアに乗せられたミニトマトが女性の作業員達によって色別に分けられ、更に流れてきたミニトマトは自動的に大きさ別に分けられて箱に収まるようになっている。そのトマトが収まった箱をパレットに積む仕事が僕の与えられた仕事だ。

 この仕事、ほかの仕事より楽だし簡単。ラッキーだ!
 

 あの時、キャラバンでのんびりしていて良かった!

       ( 2004  オーストラリアの思い出)