「あった!ここだ!」
グリーンの壁とモペットをショーウィンドウの中に発見した僕の疲労はそこで消え去った。
(モペットというのは、人力でもエンジンでも走ることのできるペダル付き原動機付き自転車)
ロサンゼルスを旅先に決めた理由の一つはこの店、DERRINGER CYCLEに来ることだったので、これで目的の一つは成就されたのだ。それは山登りで、やっと山頂へ辿り着いたときのそれに似た達成感でもあった。
昨日に続いて、サンタモニカで自転車を借りて3rdストリートにあるDERRINGER CYCLEを目指した僕は方位磁針を頼りに迷い無く目的地に到達した。
スマホのような電子ガジェットが普及している現代では、方位磁針は紛れもなくローテクだが、知らない土地を自転車で巡るなら、地図と方位磁針はベストミックスだ。方角さえ間違わなければ、小回りの利く自転車なら細かく軌道修正しながら目的地へたどり着ける。しかも電力を使うガジェットではないので電池切れで困ることもない。
DERRINGER CYCLEの前に自転車を停めて、躊躇なく店へ入ると、僕と同じ歳くらいの青年がパソコンに向かって仕事をしている。
彼こそまさに日本で読んだ雑誌「Lightning」で紹介されていたエイドリアンだ。
店内はゴミ一つ落ちていないほど綺麗で、そこに数台のモペットが並んでおり、そこは僕にとっては、世界中にあるどんな博物館よりも興味をそそられる場所だ。
店に入るなり、開口一番「日本の雑誌で君の店を見たよ。すごくかっこよくて日本から見に来たんだ、一生に一度のことさ」
僕は、少し前に学んだフレーズをとっさに使ってみた。一生に一度のこと・・・Once in a lifetime
彼はとても喜んでくれた。
写真を撮ってもいいか?と尋ねると何でもないことのように許可してくれた。僕はモペットや店内の至る所をカメラに納め、エイドリアンと一緒に写真を撮った。
彼は僕にTシャツをくれた。お店に来てくれた人にお土産としてプレゼントしているらしい。
これがロサンゼルスでの最大の収穫だったかもしれない。
エイドリアンは紳士的でセンスもすごくいい。
店内の棚にはスティーブマックイーンの写真が飾ってあった。どうやら彼もスティーブマックイーンが好きみたい。
