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ツゲにツツジを接いだそれ

感想と解釈のブログ

ごきげんよう、柘榴です。

令和5年5月現在、今年のゴールデンウィークは脳内クラッシュ演劇『DRAMAtical Murderフラッシュバック』の観劇を繰り返しています。
というのも、自分は比較的最近になって初めてドラマダというコンテンツを知り、ついに再演の機会が訪れたということで、この令和時代に原作ゲームを初見プレイしたのち舞台のチケットを取りに取りました。

原作ゲームを遊んだパッション冷めやらぬまま、今回の再演で紅雀ルート・クリアルートの2ルートの全公演に足を運べる喜びと衝撃、初めてドマステを生観劇できた感想と時々解釈を記念としてここに残しておきます。
なお、あくまでも個人的解釈に終始するため、大きく見解が異なる部分があっても色々な解釈ができる楽しい作品なんだなと割り切ってください。





※本記事で取り上げている脳内クラッシュ演劇『DRAMAtical Murderフラッシュバック』の原作にあたるPCゲーム『DRAMAtical Murder』は成人向け作品です。本記事では具体的・直接的表現を避けた上で成人向けシーンの存在にも触れますので、閲覧の際は十分にご留意ください。


※PCゲーム『DRAMAtical Murder』のスクリーンショットについて、2023年5月1日閲覧現在の著作物転載ガイドラインに基づき、ニトロプラスの許可の上でニトロプラスの著作物を引用しております。これらは他への転載を禁じます。






 

 




■原作ゲーム後だからこそ味わえる追体験:複数メディアから受ける感情の連続性

まず、本記事の感想は個人的なドラマダシリーズの体験が多分に関わってくるので、簡単に自分がシリーズに触れた流れを話させてください。
冒頭でも微かに述べた通り、自分は元々好きだったコンテンツに舞台版クリア役・山縣悠己さんの出演が決まったことを機にドマステの存在も知った経緯を持ちます。
ドマステ初演は公式配信で少しだけ観ていたためざっくりとしたストーリーは知っていたものの、常々原作ゲームもやりたいと思っていたので、再演の報を聞いたこの機に思い切ってPC版で原作ゲームも初プレイしました。


もちろん一番最初に攻略するのは、シリーズを知ったきっかけのクリア!


完全初見で攻略も見ずにやるけどきっといけるだろ!


クリアと行くぞ!!プラチナ・ジェイルに!!!








【©NITRO ORIGIN/PCゲーム『DRAMAtical Murder』共通ルートより】


??????????



なんで幼馴染みと行くことになってんだ???



そんなわけで初見プレイで当たり前のように紅雀ルートに入りました。なぜ?
(真面目に推察すると、恐らく共通ルート時に好感度の内部パラメータを紅雀に振るかクリアに振るかの2択の選択肢の際に無意識で全部紅雀を選んでいたのだと思われます)

結論から申し上げると、全うに滅茶苦茶楽しんでエンディング迎えました。自分がやたらと幼馴染み属性のペアと縁があるのはなぜでしょうね。

というように、自分の初めてのドラマダ原作プレイは、紅雀ルートに進んでからクリアルートに向かう道筋を描く結果となりました。大抵のコンテンツで好きになりやすい属性が幼馴染み・銀髪・人型の人外辺りなのでなるべくしてなったとも言えます。
この当初の想定からは若干ずれたゲーム体験を経たことで、ドマステ再演で見た景色には、自分にとってゲームプレイ前に初演の映像を観た時とはまったく異なる感情を抱くものとなりました。

 


第一に、今回の公演スケジュールから自然と最初に紅雀ルートを観劇→次にクリアルートを観劇という日程になり、自分の原作ゲームの攻略順と同じ順番になるのが、自分にとっては原作ゲームで感じた胸の高鳴りの追体験のように思えました。
初めてゲームを遊んだ時と同じく、共通ルートで行動を共にする機会が多い紅雀の姿に、蒼葉の恋愛劇の嚆矢となる彼への期待が膨らむ。蒼葉を通じた描写はもちろん、攻略対象キャラクターが四人横並びになる際に紅雀とクリアが隣同士になる立ち位置が多かったのも、どことなく共通ルートで紅雀かクリアかの2択に迫った選択肢が頭に浮かびます。

そんなクリアに対してですが、紅雀ルートでは当然紅雀に注目しつつ、初見プレイならではの「なんとなく別のキャラも気になってくる」気持ちも観劇中にリフレインされました。
気っ風も器量も良く腕っぷしも強い、人好きのする為人の紅雀を主軸とした共通~紅雀ルートの描写では、クリアは正体不明でなんだか怪しい雰囲気です。当然、初めは蒼葉もクリアを警戒し、反対に幼馴染みの紅雀へは全幅の信頼を寄せます。
ですが、狼狽する蒼葉のことを紅雀と一緒に心配するクリアを受け、蒼葉もしっかりクリアの方向を見て紅雀に対してと変わりなく感謝を伝えているなど、プレイヤー視点=蒼葉の視点を通して少しずつクリアの心根の優しさに触れていきます。

たとえ媒体が変わろうと、誰にも物怖じしないノイズや徐々に心が壊れていくミズキ……語れば枚挙に暇がないほど、紅雀と碧島を探索して他のキャラクターの魅力に触れていく体験の面白みは、ゲーム初見プレイ時のそれと遜色ありません。
紅雀ルートで幼馴染みの恋愛模様を楽しむ傍ら、まさしくクリアのことももっと知りたいと思わせる土台も、自分の中で着実に築き上げられていったと感じています。


■メディアミックスだからこそ生まれた差異:各ルートのストーリー再編成への所感

毎公演日替わりで6つの個別ルートに分岐するのがドマステ再演の面白さのひとつで、毎日様々な蒼葉の顔を見られるのは実際に半端なく面白いです。
そんな中、自分は紅雀とクリア両名のルートを観劇して、面白さの中にも別のベクトルが潜んでいると強く感じました。
それは、舞台版単体で見た際の物語がわかりやすいかわかりにくいかです。

紅雀の個別ルートは、原作ゲーム・舞台版共に彼が束ねるチームのメンバーが登場したり、深い因縁を持つ竜峰も新登場したり、刺青で人心を操る奇異な計画が判明したり、実は竜峰も蒼葉達の本来の目的たる東江と繋がっていたり……等々、様々な人物・能力・事件が複雑に絡み合うストーリーです。
紅雀の多様な人間関係や彼の秘密が描かれたことで「幼馴染みの蒼葉も知らない紅雀」という側面が強調されるのは、蒼葉と紅雀の一筋縄ではいかない幼馴染み関係への良いエッセンスとなり、原作ゲームではより二人の関係の進展に目が離せなくなったのをよく覚えています。

一方、限られた時間内で収めるためか適度に原作のストーリーが再編成された舞台版では、次から次へと新しい人物や能力が飛び込んでくるため、舞台版単体で見るとやや忙しない感もあります。
とはいえ、劇中の紅雀による激しい怒気や大剣を振るう疾走感とは相性が良く、終盤の告白描写のもどかしさとも場面のスピード感に緩急が出て「あの色男で頼もしい紅雀が蒼葉への恋路にだけはへどもどしている」というギャップがより魅力的に映るのもまたひとつの感想であり、必ずしも情報過多のわかりにくさ=つまらなさには帰結しません。
つまり、舞台版紅雀ルートはその複雑さが物語の深みにもなれば心地良い煩雑さにもなる、総じて忙しなさが幼馴染みの知らない面を次々知る紅雀ルートとマッチしていたと言えます。

【©NITRO ORIGIN/PCゲーム『DRAMAtical Murder』紅雀ルートより】


対して、舞台版クリアルートは、舞台版紅雀ルートと比較すると全体的にスッキリとまとまっていた印象を覚えます。
こう感じる理由を自分なりに考えたところ、「専門用語が多くなく」「劇中で開示された特異な事象が1種類のみに絞ってあるから」ではないのかと思いました。

たとえば、リブやライムといった作中独自の固有名詞がついた概念にクリアは関わることが然程なく、個別ルート後の新たな専門用語においてもダイ・ミュージック以外は特に出てきません。
そのダイ・ミュージックについても、舞台版の作中でその言葉が出てきたのは数度きり、その後の歌や声にまつわる能力は「僕たち兄弟の歌」「マスターの特殊な力」など独自の固有名詞を持たない表現が採用されていきます。共通ルートで明かされたスクラップという語すら好んで用いられません。
歌や声にまつわる言葉に極力特別な表現を使わないのは、クリアが自らの歌を愛する人を喜ばせるための優しく素朴な手段として大切にしているようで、なんとなく嬉しいものがあります。

そんなクリアの歌声は、実は人の心にはたらきかける力、すなわち共通ルートで明かされた蒼葉の声が持つ能力と同種の力を有すると作中中盤で明らかになります。これは劇中でも「蒼葉の声とほぼ同質のもの」と明言されています。
新たな特異現象の判明という点では紅雀ルートの刺青と似た要素であるものの、こちらは共通ルートの時点が明かされていた蒼葉の能力と地続きであり、情報の種類としては増えていないためすんなりと頭に入ってきました。
クリアが特殊能力を宿した所以である、彼が機械生命体だという点に関しても、既にオールメイトという生物型の機械が身近な世界観が提示されてきたためシームレスに馴染む部分でしょう。

このような自分が感じた両ルートの違いは、一概にどちらが優れているかという話ではありません。
そも、プレイヤー視点=幼馴染みの蒼葉も知らない紅雀の側面があることを描写する紅雀ルートで忙しないと感じるほどの知らない新情報が飛び交い、「プレイヤー視点=蒼葉から様々なことを学んでいった」とクリアが謳うクリアルートでは着実な積み重ねを主軸とし急展開と呼べる箇所が抑えられているというのは、ある種それぞれのストーリー展開に対して理にかなっている気さえします。

原作ゲームとは印象が変わる可能性を帯びるストーリーの再編成で、原作から続く関係描写の肝をより体感できるバランスにそれぞれ設定されていたのは、マルチシナリオ形式の本作品へ「ただ蒼葉の恋愛の相手が違う」以上の楽しさを受け取れる幅を広げてくれました。


■舞台版だからこそ描ける心情表現:名キャスティングと名演出のハイブリット

前項ではストーリーの再編成の話を少ししましたが、ドマステ再演においては、再編成以前に舞台版では原作そのままの表現が流用できない制約も存在します。
クリアルートで代表的なのは「メカバレ」「成人向けシーン」「歌」の3点でしょうか。

まず挙げたいわゆるメカバレについてですが、前述通りクリアの出自は東江が製造した機械生命体です。
そのため、外傷を受ける窮地の場面になるや、クリアの外装は次々に崩壊していきます。原作ゲームでは本人から見て顔の右半面・右手首・左手から腕の損傷が特に酷く、それらのメカ部分が終盤はずっと丸出しの状態でした。ニトロキラルってここまで大胆にキャラの皮膚持ってかれるんですね。

【©NITRO ORIGIN/PCゲーム『DRAMAtical Murder』クリアルートより】


もちろん、この世に顕現した人間である以上、舞台上での完全再現は物理的に不可能です。
この「クリアのメカバレ表現が困難」という制約に対して、制約がむしろ見応えのある演出へ転換されたステージは実に鮮やかでした。

まず、山縣さん演じる舞台版クリア、通称“山縣クリア”苦しむお芝居が本当に素晴らしい。
これまでのコミカルな振る舞いから一転、肉体の崩壊も省みず、命を懸けて蒼葉への信愛を貫けば貫くほど苦しく痛々しい様相を呈する山縣クリアは、あたかも目の前でクリアの外装が剥げていく場景を想起させていきます。
クリアルートは日常パートでは愉快な、恋愛パートでは切ない空気が多い分、ここぞという時の苦しげな場面は目を引くものがあり、見ている人間へ激烈なインパクトをぶつけてきました。

その上で、原作で一番メカ皮膚が顕著だった顔半分を映さない立ち回りをされたら最早メカバレクリアにしか見えません。

というのも、既にメカ皮膚が露になった時系列でクリアが蒼葉と対話する終盤シーンでは、客席正面からみてクリアの顔の右半面が一切見えないような方向にされていることが多いという、シンプルながら一度でも原作ゲームをプレイしていれば効果抜群の演出が施されていました。
真に迫る山縣クリアのお芝居をぶつけられ「舞台上のクリアは相当のダメージを負っている」という世界観に入りやすい地盤を固められた後だと、顔や腕が見えないというだけで十二分にこちらの想像力を掻き立ててきます。
山縣クリアによる鬼気迫る演技とクレバーな演出の融合には、舞台に立つクリアがメカバレしているかに思わせる力が確かにありました。


  (クリアが劇中中盤までガスマスクで過ごす点も、素顔開示後の表情演技が強調されるギミックになっていて面白い)


その後、クリアと蒼葉は原作通り愛を確かめ合うのですが、成人向けシーンの代替演出の巧妙さもまた良い。
大前提として、舞台版はあくまで全年齢向けの催し物のため、該当のシーンは全てダンスによる比喩表現に留まります。翻って、該当のシーンで存在した台詞は9割方排除されていきました。
クリアの物語だと、原作ゲームでは蒼葉がスキンシップの最中でクリアのメカボディの感触にも言及し、それが容姿の開示に怯えるクリアへ「どんな見た目でもクリアはクリア」と受容を示した蒼葉の気持ちとの一貫性につながる演出がありますが、そのような心情表現の裏付けも舞台版では全てカットされてしまうというわけです。

にもかかわらず、その制約を逆手にとってきたのが舞台版クリアルートでした。
舞台版クリアルートの特徴として、クリアの容姿の開示後、蒼葉がクリアを見つめている場面が多い点が挙げられます。これは、アフタートークで公式サイドからも同様の発言が出たことから、ある程度意図されたところだと読み取れます。
ふとした場面でも視線を向けるクリアと蒼葉。そのような流動的な身体表現の中で培う積み重ねは、止め絵の表現を主とする一般的なAVGフォーマットを採用した原作ゲームではかえってできない演出です。
あえて原作そのままの台詞は用いずに舞台ならではの言葉では表現できない感情の機微を差し込むのも、ドマステ再演ならではの見応えを生んでいたと呼べるのではないでしょうか。


結果として原作には存在したメカボディへの言及がないのも、メカバレをこちらの想像力に担う舞台版の構成に鑑みると良い塩梅にも思えます。
メカバレ言及と視線の交え合いという、一見まったく異なる心情描写のアプローチながら、どちらに対しても共通して「蒼葉はクリアが何者だろうと受け容れている」という愛情の一貫性を自分は受け取りました。

 (初対面時の蒼葉はクリアへ警戒の表情を見せており、関係性が成熟して受容の眼差しに変化していくのもミソ)


このような演技と演出のハイブリッドが活かされるのは、メカバレや成人向けシーンの補完に留まりません。
極めつきは、クリアのファクターであるに関しても然りです。

クリアが好んでいる行動であり機械生命体としての要でもある歌は、舞台版ではダンスで演出されていきます。そもそも、ドマステは基本的に身体表現や兼ね役でのお芝居、そしてダンスで物語を代替やメタファーとして表現する機会が多く、そのフォーマットに則ったものとなります。
といっても、メタファーに替わったからといって歌のシーンでの魅力や感動が損なわれるかと言えばそうではありません。

何せ、山縣クリアはダンスが滅茶苦茶に上手すぎるので。

直截な言い方をすれば、舞台上でのダンスが上手ければ上手いほどクリアが心を込めて歌っている証左になる歌→ダンスの比喩表現は、まさしく華麗なダンスでこちらを惹きつけるキャストのパフォーマンスとがっちり噛み合っていました。
舞台上で舞い踊るクリアからはどれほど彼が蒼葉のことを想って歌っているかが伝わるようで、特殊能力としての歌のシーンすら、それまでの満身創痍をものともせず華麗に踊る姿に蒼葉を守るクリアの覚悟を感じられます。
これもまた、キャスティングと演出の妙が見事に重なった点だと言えるでしょう。



■“山縣クリア”だからこそ得られた観劇体験:コンテクストの蓄積による多重構造

何より、本編中の「歌のメタファーとしてのダンス」を幾度も見ていると、クリアのダンスそのものに文脈が蓄積されていきます。
それらのコンテクストが美しく開花する瞬間こそ、エンディングダンスではないでしょうか。

ドマステにはエンディングにもダンスパートが存在しており、それまでどのルートにおいてもダンスによる演出が取り入れられてきたので、キャラクターの恰好いいダンスに対して突飛な感覚や殊更な違和感は生じません。
このためか、キャラクターとしての最低限のライン(常に大剣を支えて踊る紅雀等)を除いて変に韜晦することなく、キャストの方々の実力が存分に活かされるステージにもなっています。


そこでのクリアが本当に凄かった。


いや……クリア…………あの……。


マジでお前……エンディングのクリア…………本当にすごすぎ…………。



いきなり気が触れた文章を書きましたが、思い出しただけで正直な感想がこれになるので許してください。
自分は、このエンディングダンスで、乱暴にまとめれば下記のような感情の流れで心を揺さぶられました。


他ルートで終始コミカルテイストに描かれたクリアがいきなりバチバチに恰好いいダンスを披露する

「うわあ!いきなりかっこよくなるな!!」
「あのガスマスクあり得ないほどダンス上手くない!?!?」
「クリアって一体何者!?クリアルートも絶対観なきゃ!!!!」

自ルートで歌の比喩表現としても採用されたクリアのダンスが恰好よさ全振りで披露される

「歌のメタファーのことを考えると蒼葉の隣で踊ってるだけで含蓄が溢れる……」
「あんなに恰好よく踊るなんて本当に本当に本当に蒼葉のこと好きじゃん…………」
「結ばれて良かったねクリア…………輝いてるよクリア………………」



山縣クリア、どう転んでも見ている人間に爪痕残す気?????


といった風に、もう少し体裁の良い表現へ整えると、いずれのルートにおいても舞台のクリアはきわめて強烈な観劇体験をこちらに与えてきました。
身近な存在と結ばれる紅雀ルートを見終えた後だと、身近とは程遠い変人がいきなり正統派な恰好よさを見せてくるギャップが楽しい。切なく優しいクリアルートを見終えた後だと、打って変わってクールでキレのあるダンスで魅せるのがもう本編のような悲しい障壁を持たない示唆みたく思えて、クリアルートの終幕としてはあまりにも美しい。誰が主役のルートでも釘付けにならざるを得ないクリアの一挙一動には、際限なく魅入られるものがあります。
あまりに魅入られすぎて「東江こんな凄いもん量産しようとしてたの!?!?二秒で碧島征服できるから東江早く潰れろ!!!!」という無茶苦茶な感情さえ込み上げてきました。なぜ??

ここまで散々どこが凄かったのかの言語化を試みてきましたが、これに関しては百聞は一見に如かずなところもあるので、同演目の撮影およびWeb投稿可能時間内で撮った自ルート山縣クリアでも見てください。
そして、自分だけの心揺さぶられる体験を今からでも味わってください。

 

 



■おわりに:山縣クリアに感謝を込めて

前述した通り、自分は歴は浅いながら少し前から山縣さんの活躍を拝見しており、なおかつ銀髪キャラや人外属性が好きなためクリアのこともすぐに好きになりました。
ですが、それらの条件だけでは、今回の観劇で得た気持ちの数々は成り立たなかったと感じています。

キャストとキャラクターどちらも知らなければ成立しない、あるいは先に好きになった順番が違っても同じ感情は生まれない、もしくは紅雀ルートではなくクリアルートを先に観劇したという順番の違いでも、抱く感想は変わっていたかもしれません。
数ヶ月前に原作ゲームを初見プレイしたばかりゆえに追体験できるフラッシュバックと、絵や言葉以外の表現も用いる舞台版ゆえに新たに得られる衝撃が合わさったからこそ、今回のような体験ができました。

自分だけの最高の観劇体験を得られて、ドマステ再演を観に行けてよかったという気持ちに満ちています。
ありがとうDRAMAtical Murder。ありがとう山縣クリア。





それでは。

ごきげんよう、柘榴です。


先月22日は『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 ヨシュア』ことBrave Child(ブレチャ)のニューシングル『TELOMERE』のリリース日でした。
シリーズ初の二枚組構成、どちらのディスクのドラマも凄まじすぎて絶叫しながら聴きました。
視聴を終え、例によって今回もヨシュアに救われてしまったので、今記事でもいち自傷経験者devilsとしての視点から感想と個人的解釈を書いていきます。解釈と自分の経験を照らし合わせる都合上自分語りが入ったり真面目な解釈の合間合間で特にテンションのおかしい文章があるので、解釈を読みにきた場合は適度に読み飛ばしながらご覧になっていただけると助かります。
なお、本記事は全項に渡りディアヴォシリーズの本編のネタバレを含みます。シリーズの「製品を視聴して登場人物の隠された側面を楽しむ」という作風の性質上、シリーズをこれから履修する場合作品の魅力を大きく損ねる可能性があるため、シリーズ未履修の方はご注意ください。






【©Rejet/『ディア♥ヴォーカリスト』公式Twitter(@climax_recoads)より(https://twitter.com/climax_records/status/1539163840289832960)】


 

 




1.はじめに

■この記事を読むにあたっての大前提
・本記事には「考察」という表現がありますが、いつもの通り便宜上のものです。特に今回は個人的な感想・経験を意図的に混ぜながら書いています。
・本記事は自傷行為(広義のリストカット)についての言及またはそれを伴うフィクション描写への感想を主としますが、本記事は「自分がこうなった・こう思ったからあなたもこうすればいい」というものではありません。
・本記事は自傷行為を推奨する意図はございませんが、自傷行為に対して否定的見解および警鐘を鳴らす内容でもございません。
・本記事で言及された自傷行為描写はすべて個人の見解、および対象キャラクターが架空の人物であることを前提とした内容です。自傷行為における動機・精神状態・方法・自傷の箇所ならびに範囲・その後の傷の状態や精神的ケアにつきましては個人差が存在します。すべての人に本記事の言及が当てはまるわけではないことをご理解ください。

■この記事を書くにあたって
毎度のこと言っていますが、自分は自傷経験があり、その動機・行動・時期に至るまで奇跡的にすべてヨシュアと被っていたことから、彼と出会い精神的に救われた経緯を持つdevilsです。その辺りは↓の今までの記事をご覧ください。
『ディア♥ヴォーカリスト』のヨシュアに救われること:Rejet作品の自傷行為描写における考察
自傷経験者が『ディア♥ヴォーカリストXtreme ヨシュア』に救われること:感想と考察もどき
『ディア♥ヴォーカリストEvolve』のヨシュアの新曲が私信だった:歌詞考察と自傷と承認
自傷経験者が『ディア♥ヴォーカリストEvolve ヨシュア』に救われること:感想と考察もどき
自傷経験者が『ディア♥ヴォーカリストRaving Beats!!! ヨシュア』に救われること

前作『Raving Beats!!!』からかなり期間を空けての今作ですが、リリースまでの間にもシリーズ自体は動いており、最近ではヨシュアとエーダッシュのぬいぐるみを購入しました。
通販で届いたその日に並べて写真を撮ったのですが、








カワイイ~~~~~~♡

届いたのが昼頃で、早速一緒にお出かけ!と思ったのですが、その日の予定が通院だったので潔く辞めました。ヨシュアはともかくエーダッシュを病院に連行すな(『Wired』参照)
閑話休題。以前の記事ではエーダッシュを絡めた感想も書いたりしましたが、今記事では他のバンドマンとの関係描写にも注目して、以下から書いていこうと思います。


2.『Unlimited』におけるヨシュアと自傷に関する描写の考察

■ヨシュアと自傷は断ち切れない:自傷寛解後の"その後"を描く挑戦
今作『Unlimited』はディアヴォシリーズ初の二枚組ディスク仕様で、一枚目では従来通りヴォーカリストとヒロインの物語、二枚目ではヴォーカリストとバンドメンバーの物語を描きます。
新しい試みもさることながら、ヨシュアのメインストーリーにおいては、前々作『Evolve』で晴れて自傷癖に寛解の兆しが見え、前作『Raving Beats!!!』はドラマパートが非常に短い仕様だったことから、今作で初めて習癖が寛解し始めてからのヨシュアに本格的なスポットが当たると言えます。

自分はここまでの事前情報で、今作ではヨシュアが過去にバンドを解散させてしまった原因に向き合う物語か、ヨシュアとヒロインの幼なじみ関係を掘り下げる物語になると予想しました。
理由は二点あります。一点目は同じく過去に別のグループに所属していた経験を持つヴォーカリスト・ユゥが、ひとつの課題を解決したら次の課題にぶつかり向き合うようなストーリー構成を持っているからです。ディアヴォキャラは全然精神的課題を解決しないスローステップの男達ゆえ(そこがリアルで好き)前例がユゥのあれこれとヨシュアの自傷癖しか現時点で存在せず、そのユゥの傾向に鑑みました。
二点目ですが、今作は前述の仕様上、各バンドの有りようにフィーチャーしていく傾向にあり、ヨシュアのひとつ前にリリースした『Unlimited レオード』では過去描写も豊富に盛り込まれていました。なら、ヨシュアは新生ブレチャの結びつきを実感するにあたり、まずは苦い袂の分かれ方をした旧ブレチャについて精算するか、あるいは過去編として幼なじみ関係についてかでは……と思いました。

さて、そこまで考えたところで、いざドラマパートを視聴し真相を探った結果、










「具体的なコトは、オマエの想像に任せるよ。
 ケド、誰かと揉めたとか、そーいうんじゃない。
 揉めるどころか、その人は守ってくれたんだ。
 オレが知られたくないと思ってるコトに気付いて、他の人には気付かれないよーにしてくれた。
 なのにオレ……ナニも言えなくて」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 ヨシュア』DISC1 Track.4)




絶対傷痕のことじゃん!!!!!!



今作も自傷関係の話なの!?!?!?


大絶叫しました。なぜなら、それまでの流れではヒロインとの馴れ初めやヨシュアが音楽に関心を抱いていったきっかけ等、いかにも自分が当初予想した「幼なじみ関係の掘り下げ」「過去の音楽についての言及」にストーリーが方向づくと予想させてきての傷痕を見られた展開です。蓋を開けたら今回も自傷の話!!!!サイコー!!!!!
つまり『Unlimited ヨシュア』は、過去設定の掘り下げを行いながら過去を重視せず、自傷寛解後の未来に目を向けた構成だったのです。

注目したいのは、今作のヨシュアは習癖が再発したわけでも、衝動に駆られたわけでもない、一貫して寛解途中の自傷経験者として描かれた点です。
自傷がコンテンツ終盤に寛解しその後の様子は少しの描写で済ませることがポピュラーであろうフィクションコンテンツの自傷行為における描写傾向の中、これまでと同じ長い尺をきっちり使ってその後を描いてみせることは、非常に意欲的な挑戦なのではないでしょうか。
もちろん、盛り上げを重視した過度にエキセントリックな演出ではなく、ヨシュアが実際に生きているような地道なペースで向き合っていくのも、ディアヴォーカリストという作品が持つ変わらない魅力と呼べるでしょう。

「……ホント?
 オマエだけじゃなくオレもスベスベなら、
 ココの温泉効果あるんだねえ」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 ヨシュア』DISC1 Track.5)


ラブラブシーンでもド直球に自傷を想起させてくるの、意欲的ってレベルじゃない。


■カレに寄り添う第三者:バンドメンバーとの関係描写の妙
ディスク二枚目ではヨシュアのバンドメンバー三人も本格登場しました。誰との掛け合いも必聴ですが、今記事ではなかんずく触れておきたい存在がいます。
それは、ブレチャのギタリスト・ソータです。

ソータは前々作『Evolve』で名前と簡単な話し口調が公開され、前作『Raving Beats!!!』でキャラクタービジュアルとプロフィール情報が追加、今作でようやくキャラクターボイスがついたような、いわばまだまだ登場したばかりのキャラクターです。ヨシュアと知り合ったのも作中の途中からのため、シリーズ開始当初からバンドを組んでいた他のバンドマンに比べると二人の関係性も発展途上な状況となっています。
とはいえ『Unlimited』以前からいわゆる“バンメン”キャラの中では比較的何かと話題に挙がることが多く、リリース記念アー写でも目立つ位置に配置されています。
そんなソータを見ていての感想ですが、




カワイイ~~~~~~♡

というのは冗談……ではなく、それまでのソータの情報は、とにかく可愛らしい印象をこちらに与えるものばかりでした。
ビジュアル無し時代に特典やTwitterで開示された「チャラチャラした見た目(だけど人見知り)」という情報は若々しさと派手さの象徴として瞳の大きな作画で表現され、少し控えめな性格を持ち、五歳ほど歳下のヨシュアからも友達感覚で接されているようなソータ。特にヨシュアとの距離感ですが、彼以外に歳上という部分がピックアップされやすいマツやユキに比べかなり特殊な造形をされています。
このようなソータの可愛らしさの強調は、今作で永塚拓馬さんによる、大人・歳上属性よりも容姿相応の声音を優先したようなボイスが追加されたことにも顕著でしょう。


(記念すべきボイスがついて初のソータの音声。かわいい)

そんなソータは『Unlimited ヨシュア』では、ある特別なポジションで作劇されました。
ヨシュアの古い自傷の痕を見てしまう、ヒロイン以外の作中人物で初めてヨシュアの自傷癖を知った存在としての大抜擢です。

「いざ自分のコトになると……わからなくなっちゃうんだよね。
咄嗟に迷って言えなくなる。ヨシュアのほうも、オレに遠慮してるのがわかるし……」
〔…〕
「やっぱり難しいね……人との距離の取り方って」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 ヨシュア』DISC2 Track.2)


傷痕を見てしまったソータはその場では上手い言葉がけができず、過去回想でもこのように独り懊悩しており、今の自身はその時と同じだと俯きます。
元々優しくおとなしい性格として描かれてきたソータが、ここにきてRejet作品の十八番である一人で精神的困難を抱え込むタイプであると判明。それまで設定の点在するだけのサブキャラクターに深みが増したのと同時に、一人で悩んでしまう強い説得力が生まれました。

自分は当該描写を受け、これはシリーズではソータしかできない役どころだと感じました。
ヨシュアと正面から向き合い続けるヒロインや自分のポリシーが明確な他のヴォーカリスト達はもちろん、同じブレチャのメンバーでも、竹を割ったような言動のマツや絵に描いたような大人の対応で振る舞う年長者ポジションのユキでは、「ヨシュアの傷痕を受けて独り悩む」という描写はできなかったと思います。
しかも、その描写が無理矢理とってつけたような設定追加ではなく、元々ソータが持っていた人物描写と地続きになっているのも絶妙なバランスではないでしょうか。

後日、ソータとヨシュアはぎこちない空気の中、二人きりで話すことになりました。
ソータに自らの習癖について明かすヨシュアは、それまでとは違い落ち着いた態度でした。もしもヨシュアがこれまでに自身の習癖について乗り越えてこなかったら、あるいは、もしもヨシュアにとってソータが信頼できる人と思えていなかったら、もっと激しく狼狽し隠蔽しようとしたでしょう。
そして何より、そんなヨシュアに対するソータのアンサーが凄すぎた。



ヨシュア「心配かけてたら、本当にゴメン。全部話すと、長くなるから……あのね、実はオレ──」
ソータ「待って。言わなくていいよ。オレ……ナニも見てないから」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 ヨシュア』DISC2 Track.3)




ソータ~~~~~!!!!!!


ソータが選んだ回答は、他のメンバーにも言わない選択でした。
ここで面白いのが、ディアヴォという作品で描くバンドの有りようです。バンドの要であるヨシュアの秘密について、今作ではバンド内で共有されない二人の秘密として扱われました。
これは、ディアヴォーカリストという作品が「ヴォーカリストコンテンツ」であり「バンドコンテンツ」ではない、バンドメンバーの扱いの難しさにも起因すると考えられます。
あまりにもバンドの絆を描きすぎる、つまりヒロインが蚊帳の外の状況でヴォーカリストが動きだしすぎるのは作品の「ヴォーカリストとヒロインの物語」という主旨からずれ、だからといって今作ではその仕様上バンドメンバーをないがしろにできない。篝火のようなツーピースバンドなら一対一でまだしも、複数人いるメンバーからの抜擢となれば別ディスクのヒロイン以上に目立つ存在にすらなり得ます。
にもかかわらずソータ一人が特にスポットライトを浴びる構成にしたのは意外性があり、バンドの有りようにフィーチャーする回でもヨシュアの秘密が直接的にバンド全員での結束につながるわけではないのが、「ヴォーカリストコンテンツ」であるディアヴォならではの面白さに感じます。

大役にソータが抜擢された点とディアヴォーカリストの骨子と崩さないまま頭の抜けた活躍を見せられた点、これらにはいずれも、前述した友達感覚で接せられているヨシュアとの距離感が効いています。
たった一歳差でもジジイだガキだと罵り合うディアヴォ世界、五歳歳上などはメタ的には大人・歳上属性の扱いが如実に表れます。そこをソータは可愛らしいビジュアルやマツやユキよりも少し頼りない=期待されるロールプレイにそぐわない人物像を有していたことで、ヨシュアとは同年代の友人のような、フラットな目線での課題への向き合い方となりました。

派手な見た目とは裏腹におとなしめの性格という元々の人物像も、「何か精神的困難を抱えているゆえにおとなしくなる」というリジェ男子らしいアクセントや「仲間の習癖を知りその場で白黒はっきり発言できなくなる」という自傷にまつわるリアル感へと見事昇華されています。バンドメンバーの中で一人だけをキーマンとして扱う思いきった作劇ながらも、ソータとヨシュアと彼の習癖の描き方は、ディアヴォシリーズが有する「ヴォーカリストとヒロインの物語」を維持しつつもご都合主義と感じさせない地点へ着地していきました。
ヨシュアを支える役目はヒロインでも、ソータもソータなりの方法でヨシュアに寄り添うことができるのです。


■自傷を取り巻く生々しさ:ボイス追加による世界観の強化
直球の表現ですが、ヨシュアとソータ、この二人の演技が滅茶苦茶いい。
ヨシュアのメインストーリーの演出は決まって生々しい。音声媒体という聴覚のみで情景を浮かび上がらせる作品で、自傷した際のカッターの音や物が崩れる音等のSEに、島﨑さんが演じるヨシュアの絶妙な呼気と狼狽と疲弊が加わって毎回こちらへ緊張感を与えていきました。
そのように、島﨑さんによる自傷まわりのシーンの演技が生々しすぎて、他の音声つきキャラクターと掛け合いになった際、かえって音声の雰囲気がちぐはぐになる懸念を自分はしていました。
しかし、その懸念をいとも簡単に覆したのが、永塚さんによるソータの戸惑いです。

ヨシュア「あ……そーだよね。……それじゃあ、また、来週……」
ソータ「うん……。またね……」

(『ディア♥ヴォーカリストUnlimited エントリーNo.2 ヨシュア』DISC2 Track.2)


特に上記引用部分に至る、ヨシュアの習癖がソータにバレた後の、二人で帰路につく際の気まずい空気はこちらまでなんとも居心地の悪い気分になりました。自分は自傷関係の話題ではヨシュアに感情移入しているので、こちらまで友人に習癖がバレた光景を連想しては気まずくてたまりません。気まずすぎてこの感想記事書くまで一度もリピート視聴できていませんでした。

今作でのヨシュアは、ヒロインと共に少しずつ強くなってきたお陰もあり、従来ほど激しくはないものの傷痕を見られた直後はさすがに動揺してしまいました。そんな彼に上手な対応のできないソータが、ソータの過度に抱え込みかける新たな一面の強調となっており、その上で二人とも優しい性格ゆえ努めて平静を装おうとしている声色がいい味を出ていました。
そして、それぞれが当事者と第三者として動き、作中での自傷に関する扱いや反応のパターンが増え、より一層の生々しい奥行きを生み出していきました。

自分は番外編のコメディでヴォーカリスト達が大絶叫するようなコテコテのフィクション的誇張表現も大好きですが、ヨシュアのメインストーリー、特に自傷に関しては当事者ゆえ心の中のリアリティラインが厳しくなってしまっている都合、如何にフィクション的な誇張がないかを重要視して聴いています。
ヨシュアとソータの生々しすぎる「自傷経験者がバレた瞬間の空気」は、まさしく誇張抜きの彼らの心境を受け取りました。


■消えないままの傷痕をなぞる:制約の中で習癖寛解者を描くこと
もうこのブログで何度も書いていますが、自分はヨシュアのメインストーリーにおいてはもっとも好きな部分は、自傷行為を現実以上にショッキングな見世物として扱わない、派手な演出に飛び付かない点です。
そもそも、今作で取り扱った「習癖寛解者のその後を描く」という題材の時点で今までよりも地味な画になることは想像がつきますし(これまで一見のインパクトがあった自傷シーンおよび自傷しかける葛藤シーンがないため)、だからこそ自分は今作では自傷以外の課題を取り扱っていくものだと予想していました。しかしながら、その予想を大きく裏切ってきたことは、自傷行為という共通項をきっかけにヨシュアをもっと好きになった自分には嬉しい誤算でした。

あくまで「ヴォーカリストコンテンツ」であり「バンドコンテンツ」ではない、すなわちバンドメンバーの扱いが難しい制約の中で第三者からの反応を描ききる等、常に作品としての面白さとヨシュアの自傷癖に対する誠実さを両立し続けてくれるのが、自分は当時者として何より嬉しいです。

消えないままの 傷痕をなぞる
きっと分かち合うためだよ

(『ディア♥ヴォーカリスト Unlimited エントリーNo.2 ヨシュア』収録、ヨシュア『TELOMERE』より)



3.おわりに

■大 天 使 な が に ゃ ん
今回のキャストフリートークとキャストインタビュー、永塚さんが自分がソータに感じたことをこのブログで書いた箇所以外全部言ってくれててたまげました。インタビューは現在誰でも閲覧できるので今すぐ読んでください。
あと、自分は新曲『トロイメライ』を試聴して「ヨシュアのピアノとソータのギターのユニゾンが二人の少し近い距離感を示しているようで良い」みたいなことを思ったのですが、公式サイドの方も似たような印象を受けていたのがハッピーでした。今回のドラマパートで二人のことが更に好きになったので。


島﨑さんは相変わらずヨシュアに対していい人すぎる。サイコー。

■最後に
今回の記事の文章もあくまで自分個人の見解です。時折主語を大きくして書いている部分もありますが、決して自傷したことのあるユーザー全員の総意ではないことをご容赦ください。機会があれば文章など適宜修正するかもしれません。
これからの作品では引き続き自傷癖と向き合い続けるのか、はたまた別の困難にヒロインやメンバーと共に立ち向かうのか。これからのヨシュアの生き様からも目が離せません。


それでは。

ごきげんよう、柘榴です。

2013年から2022年現在において自分が特に力を入れて応援したコンテンツを挙げるとするなら、間違いなくネルケプランニング主催の『アイドルステージ』シリーズとRejet制作の『ディア♥ヴォーカリスト』シリーズが挙げられます。

この2タイトルに共通する点は、登場キャラクターを現実に存在するように扱っている点です。

時に実在する商業施設に赴き、時に時事ネタを取り入れ、時にコンテンツの関係者=本当に実在する人物へSNSでメッセージを送る。そうやって現実世界と強くリンクさせることで、コンテンツへの没入感が深まる形式が、自分には合っていたのだと考えています。
特に『アイドルステージ』シリーズ(以下ドルステ)は、自分は2013年4月公演のシリーズ第2弾『プレゼント◆5』初演から入ったため、まさにこの実在扱い(以下アナザーワールドAW)の黎明から発展までと共にシリーズを追ってきたことになり、まさに自分がドルステを語るにあたって無くてはならないものです。

 

Q.パンフやブログに出演者の名前がないのですが…。
A.アイドルステージ「プレゼント◆5」には、
“舞台にてキャラクターを演じる出演者”という観点はございません(公演概要ページ等、例外あり)。
作品内のアイドルたちは「現実に存在している」前提のもと、
舞台における二部のライブ、Twitterやブログなどを公開させていただいております。
大人の「ごっこ遊び」を、出演者の皆様と共にお楽しみいただけますと幸いです。

(『プレゼント◆5』OFFICIAL BLOGより/https://present-5.hatenablog.com/entry/2014/03/01/170013)


公式ではこんな風に説明されています。

実際、今回のブログで当初は自分がドルステを追った9年間で印象に残ったことを11個ピックアップして感想を残そうと、手始めに年表を書き出したのですが、

 

【ドルステとわたし年表11選】
▪2013年01月 自分が『忍たま乱太郎』で一番好きなキャラクター・田村三木ヱ門がミュージカル版初登場。同時期、当時のキャストである佐藤流司さんの初主演舞台として『プレゼント◆5』の告知を受ける。
▪2013年04月 『プレゼント◆5』初演を観劇。黄赤2推しリボン。神席過ぎて大和京介から「ワクワクドキドキ×3 プレゼント」の部分を目線全部貰い、ハマる。以来本公演へ必ず一度は行くようになる。
▪2014年07月 『ETL vol.4+ ~電波受信!電波受信!至急集合せよ!』で茅嶋暁と水星人★ミミタの「恋愛至上主義」を目の当たりにし、RSSバトルペアに転がり落ちる。
▪2014年08月18日 プレゼント◆5公式Twitterで本田礼生さんと茅嶋暁のツーショットが掲載され、史上初の「担当アイドルと同じ空間に存在するアナザーワールド」に衝撃と感銘を受ける。RSSバトルペアへの光明も見出だす。
▪2014年08月31日 『CHaCK-UP』を観劇。前回のRSSのお陰あり青チャーム。昼ミミタの冷たい視線と声音の客降りハイタッチが最高過ぎて爆湧き。
▪2014年10月 服部翼(現・服部武雄)バースデーイベント『ゆるつばフェスティバル』に参加。本田礼生さんと茅嶋暁のスペシャル映像でRSSバトルペア概念を食いつなぐ。
▪2021年01月20日 GS382「まほろば」MV解禁。加賀深友の眼光に射抜かれ、プレゼント◆5の後輩ユニット等の情報を知らない時点で一瞬にして心奪われる。
▪2021年01月27日 『プライムーン』開演。朱撫子。山縣悠己さんが加賀深友の幼なじみだとCO。これを受け幼なじみAW概念に人生滅茶苦茶撫子の道が始まる。
▪2021年07月23日 『プライムーン』8K上映会に参加。舞台挨拶で山縣さんの肉声で滅茶苦茶凄い幼なじみAW概念を浴びて永久朱撫子でいようと心に誓う。
▪2021年12月12日 『GS382─暁の章─』開演。人生で一番多くリピートする。18回行った。
▪2022年05月21日 『プライムーン&GS382─2022年に愛を込めて─』で人生初の全通を果たす。


アナザーワールドに入れ込んだ部分が多過ぎる。

というわけで、当初の予定を変更し、現行弾メインアイドルとその"お友達"こと役者の方々への感謝と感想を述べて、アナザーワールドと共にあったこの日々への謝辞としたいと思います。きちんとした文章での役者さん宛てのお手紙は後で別途で出します。
ちなみに現行弾のみの理由は、シリーズどころか人生で初めて全通した舞台が『プライムーン&GS382─2022年に愛を込めて─』でもっとも観劇回数の多い舞台が『GS382─暁の章─』という、随一で濃密なAW時空人生を送ってきた弾だからです。

(それはそうと自分はSOJ学院選抜クラスと同年代なので、第3弾で選抜クラスの彼らと共に青春を過ごせた経験は何物にも替えがたいと思っています。青春の中でRSSバトルペアに大盛り上がりしてたの???)

なお、ブログの内容上、意図したアナザーワールドの外からのメタ的視点の文章も存在します。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


丸山龍星さんと白金明くん!

バンドマンコンテンツに5年以上身を置いている自分にあの「INA-ZUMA」が刺さらないわけがなかった。最高にROCKな歌い方で魅せる白金明像を作り上げてくれてありがとうございました!
初日や2日目はちょっと尊っぽい?と第2弾から入った自分は懐かしい感覚を覚えましたが、徐々に明くん独自のヴォーカルが光り輝いてきてゾクッとくる高揚感を引き出されました。あの明くんならではの歌唱へシフトしたことで彼が白金尊の傀儡で終わることなく、白金明がこの時空で生きた証明を果たしたようでサイコーでした。

丸山さんと明くんの出会いのAWもエモ全振りでとても印象に残っています。後日勝手にスマフォに自撮り入れる明くんお茶目すぎる。明に捧げたい𝓔𝓣𝓔𝓡𝓝𝓐𝓛 𝓛𝓞𝓥𝓔。
なお、私は『愛を込めて』で丸山さんを存じ上げた理解度激低人間なのでここからは単なる空想ですが、もし『愛を込めて』の公演期間が一ヶ月くらいあったら、きっと別の角度からのAWになっていたのかなとも思っています。
即効的に心に響くエモーショナルなAWも最高だったけど、ギャルがバンドマンに絡む中長期的AW、見たくなかったといえば嘘になる。新メンお友達組ゲストでの8K上映会待ってますえらい人。

 





内田葵さんと武部南波くん!

ドルステ史において最初にして現状唯一の「役者とアイドルが同学年」というAWの歴史に名を刻んだお二人!(※武部南波が2020年度専門学校現役年齢入学と仮定した場合)
学業と芸能活動の両立でSNS更新が控えめになりがちな旨を仰っていた時もある中で、相棒という近めの距離感や敵視という遠めの距離感とも異なる、同年代の親しい友人に対する武部南波像を日々投稿してくれてありがとうございました!
南波くんのフランクな口調を伝言していただいたお陰で、『愛を込めて』で南波くんが他のファンには敬語キャラという属性が確定した際の胸のときめきも増しました。

くわえて、おそらく南波くんの意匠としてTwitterでリボンの絵文字をよく使っているのも、座組最年少のフレッシュな価値観でプレ5ファン流れ撫子の自分は刺激を受けました。
確かにリボンのマークはプレ5ファンにとって大切なモチーフだけど、だからといって重さを与えるのもプレ5らしくないと自分は考えていたので、(後にプレ5の後輩ユニットに加入するとはいえ)気軽にリボンの絵文字を使ってくださるのが嬉しかったです。
継承と元祖のマリアージュ・SVAアカデミー男子とその"お友達"が行ったことに意味のあるAWだったと思います。

 




内田航さんと一橋キリコくん!

俺らの航が一等賞!愛でられる存在しか勝たん!
航さん(内田姓が複数名いるため下の名前呼びで失礼します)はドルステ参加期間に別途でネット配信によるオーディションがあり、コンテンツ外の人間にもわかりやすい話題の配信をしたほうが本来有利な場であろうにもかかわらず、ドルステのイベント後にはきっちりAWで感想を共有しあってくださってありがとうございました!

該当の配信が飲酒配信なのも滅茶苦茶良かった。ドルステキャストってベロベロに酔った状態でもAW崩壊なさらないんだと匠の技に感銘を受けました。
また、その際に航さんがはにかみながらふと口にした「深友くんかっこいいよね、大好き」という発言は今も鮮烈に覚えています。
当時はなぜ一橋キリコが加賀深友を敵視するのかのルーツが判明しておらず、航さんとキリコくんの正式な邂逅もまだだったため、「本来真っ先に仲良くなるべき相手と仲良くなれていない状態で大嫌いな同級生が自分を差し置いて褒められている」という滅茶苦茶やばい状況の誕生に大興奮しました。一橋キリコが加賀深友の目映さに網膜を焼かれて『暁の章』カテコで真顔になる瞬間が大好きだったので。

そんな一橋キリコを取り巻くAW、どこまで意図されたのか不明なのであえて好き放題書きますが、劇中で対比として描かれたキャラクターがアナザーワールドでも対比の展開を見せる点が初の試みで初見で本当に声をあげるほど驚きました。
AW史で誰よりも先に"お友達"と出会っている時系列の加賀深友と、誰よりも最後に"お友達"と邂逅した一橋キリコ……対比じゃなければ何と言う……。

やがて、キリコくんのキャラクターの掘り下げが進みAWの幅が広がった『愛を込めて』期間に編み出された、超がつくほど精巧なAWには更に驚かされました(精巧過ぎてコンテンツ外の人に色々勘違いされたという逸話含め)。
その後キリコくんが光速でデレたのも『愛を込めて』で描写された対人関係への人間性の補完のようで二度おいしく、「一緒に輝く」というAWとメタの狭間のような絶妙な言葉がお二人のキーワードになっていたのも素敵でした。 明るくニコニコ大天才な航さんと、自分で輝くための道を切り拓いたキリコくん。お二人が交わった時空だからこそ、あの言葉がひときわ眩しく印象に残ったのだと感じています。

 




吉高志音さんと浅黄宵くん!

コンスタントに行われるネット配信により、第5弾キャスト陣の中でもっとも気軽にドルステの話題共有の場を提供してくれた吉高さんと、何度配信があっても話題が尽きないほどの思い出を残してくれた宵くん!
舞台上での確かなパフォーマンスと舞台の外での楽しいAWシェアハピ、ありがとうございました!

個人的に黄アムール寄りの箱アムールゆえ、吉高さんの配信ではこちらの思い出を過剰に背負わせそうで三日月の話題が出た際は常に緊張感がありましたが、吉高さんはどこ吹く風でエンターテイメントに変える力があり、拝見する度すぐに笑顔にしてくれました。
これも、吉高さんご自身のお人柄はもちろん、「ここは順くんリスペクト」「ここは宵くん独自の自己プロデュース」とはっきりコメントできるくらい宵くんのパフォーマンスのインパクトが毎回強かったからこそ実現したのだと感じます。

それに、吉高さんといえば何といっても声が綺麗!あの綺麗な声で直球の黄ティアラマウントをとられるのが脳が混乱して心地よかったです。
シンプルに馴染みがとてもいい声だったので、宵くんへの気持ちを語ってくれる吉高さんの言葉や、吉高さんと時空を交えたからこそあの声音で仲間へ想いを告げる宵くんの言葉が一層響いてきました。宵くんの台詞パート、本編・楽曲中台詞共に大好きです。

 




大野紘幸さんと青羽朔くん!

AWのお約束を最大限に破った表現を今からしますが、第5弾主演の一人が大野さんで本当に良かった!

疑問を持たせたら負け、ツッコまれたら説明が面倒というネックを抱えたこの"大人のごっこ遊び"で、疑問もツッコミも介入させる間もないフルスロットルでエネルギッシュなAW展開にティアラとして元気をもらいました。
止まらない朔くん愛を拝見していて笑顔と驚愕の嵐でしたが、朔くんの魅力は多すぎるからあのスピード感で感想を言っていかないと余すとこなく青羽朔というアイドルの魅力を文面化できないのもまた事実なので、相性ぴったりのお二人の時空が交わったのだと感じています。
そして、お二人の時空が交わったからこそ、『プライムーン』本編で青羽朔という人間の吐露や宣言ひとつひとつがあんなにも胸を打ってきたのだと確信せずにはいられません。

だからこそ、願わくは大野さん主演&朔くん主人公の第5弾最終作も見たかった……!
とはいえ、主人公作・非主人公作問わず朔くんは第5弾どのタイトルでも活躍シーンに見応えがあり、会場に足を運ぶ度ワクワクした気持ちも朔くんから沢山もらいました。お二人だからこそ作り出せるあの楽しい時間を、最終作までありがとうございました!

 




川村玲央さんと赤河望くん!

シリーズ11年の一区切りという重圧を察するに容易い場でのダブル主演&ダブル主人公の完走、本当にお疲れ様でした!
箱ティアラから赤ティアラにシフトしたのもうちわを作ったのもかなり遅かった自分にも最高にキュートな視線を浴びせてくれたのんちゃん、そしてのんちゃんのキュートさを最大限引き出す応援をしてくださった川村さんに感謝を込めて。ありがとうございました!

キャラクターの成熟に伴い初登場弾よりもAWに自由の利く第5弾で「のんちゃんは川村さんにちょっぴり塩対応」と読み取れる方向に時空を交えたのは天才だと思いました。
偶然だとは思いますが、幼なじみという目に見えてわかりやすい信頼のバロメータを持つ深友くんと信頼関係が少しわかりにくい態度ののんちゃんがAWでも対照的になるのが実に鮮やかで、思わず膝でドラミングしました。のんちゃんドラムやってるだけに。

8K上映会の応援上映で、川村さんが元気いっぱいな大野さん&吉高さんとはまたタイプの違うリアクションをなさっていたのも良かった!
のんちゃんに愛を囁かれる度にその場で項垂れてため息を吐く川村さん、とても印象的でした。のんちゃんに心奪われて動けなくなるタイプのティアラは"いる"。
他にも、超かわいいのんちゃん応援うちわを作成したりと、日々クリエイティブなAWでユーザーを楽しませてくれました(それにしても第5弾主演経験者は全員クリエイティブにアイドルを応援していたからすごい)。器用な川村さんとのんちゃんの時空が交わってくれたお陰で、赤河望というアイドルがあんなにも綺麗でかわいく顕現してくれたことには、何度感謝してもしきれないものです。

 




江副貴紀さんと富蛇野仁くん!

AW確立後のドルステ史上初「お友達の提案が本編に干渉する」という偉業をやってのけたお二人!今でも心の声でめぐむんコールをする度「江副さん考案のニックネームなんだよな……」と噛み締めています。

ラップ担当やダンス担当はほとんど明示的に描かれてきた中で歌唱力の面は実力問わず突出した演出が与えられない傾向がシリーズにあった中、暗にヴォーカル担当として仁くんが活躍していったのは、それだけシリーズの凝り固まった部分に風穴を空ける力が仁くんの歌にはあったのだと、撫子として日々ステージを拝見してきて思います。
江副さんと時空を交えたことで引き出される仁くんの絶対的な歌唱力が、継承者でありながら既存の因習を破壊する元祖を体現したような富蛇野仁像に一役買ったのだと、感謝を述べずにはいられません。ありがとうございました!

他にも、意外とがめつい部分もある仁くんを総じて「かわいい」と包括する江副さんの初志貫徹ぶりが好きでした。
8K上映会の舞台挨拶で「もしもGS382がバーベキューをしたら」という話題でうっかりなかわいさを表現するために「めぐむんは生焼けの肉を食べそう」と表現できる撫子、他にいます?富蛇野仁の変わり者な部分もひっくるめて「かわいい」と包み込む江副さんのAWと、それに他の撫子も納得たらしめる仁くんの愛らしい変幻自在さは見ていて楽しかったです。
ネット配信の際に手製の仁の恵みハチマキがマネージャーさんに捨てられそうになった回も好きです。めっちゃ笑った(ゆうくん)

あと、自分が芸能人の個別ファンクラブに入会したのは江副さんのみそ汁部が初めてでした。最初は仁くんの限定写真やエピソード目的でしたが、お陰様で一区切りした今も退会の予定は当面ありません。
みんな、みそ汁部に入ろう!

 




上山航平さんと焼田侑弥くん!

心技体すべてが高水準で日々コンテンツユーザーを様々な角度から笑顔にしてくれたお二人!
クール系で擬似恋愛担当アイドルという人によってはあまりオモシロにさせたくなさそうな属性がベースだった焼田侑弥が躊躇いなくコメディにも馴染む幅広さをみせていったのは、AWとしてもメタ的視点における演技としても、間違いなく上山さんの采配の勝利です。ありがとうございました!

個人的に元祖GS382を初めて見た際、加賀深友がダンス・富蛇野仁がヴォーカル・そして焼田侑弥がビジュアルがとりわけ突出している印象を覚えましたが、侑弥くんが丈の長い衣装を翻し長い手足で舞い踊る度、それまで他ユニットのパフォーマンスの空気が残る場も一気にGS382のものへ塗り替えられるようで、その瞬間が撫子としてたまりませんでした。

また、上山さんが展開されるAWは「ほぼ一貫して焼田くん呼び」「焼田侑弥からの甘めのメッセージが贈られる」等、どれも後にユーザーに定着した焼田侑弥像の先駆け的存在でした。担当アイドルはヤマト等の例外除き名前呼びがデフォルトだった中での焼田くん呼び、慧眼が過ぎる。
侑弥くんからの敬称の表記が「~くん」ではなく「~君」なのも、わかる~わかるよ~(イワミン)

 




山縣悠己さんと加賀深友くん!

赤リボンとしてドルステと出会ったゆえ「プライムーンのような継承者ポジションが現れたら大和京介の面影を探して色眼鏡をかけてしまうのではないか」という不安を抱えていた自分の前に、彗星のごとく現れた加賀深友くん。そして、彼と時空を交えてくださった山縣悠己さん。
大和京介に重ねる暇のない圧倒的なパフォーマンスと徹底的に単なる大和京介の継承者になることを回避させたテクニカルなAW、その両面から加賀深友をオンリーワンの存在として輝かせていたのが印象的で最高でした。

 


のっけからこれ。
 


こっちは加賀深友のかわいいところ当時まだ知らないんですわ。
 


こっちは加賀深友の製作物も当時まだ知らないんですわ。

もちろん、芝居パートを観劇している実際の視点では加賀深友のかわいげのある部分も製作物のこともユーザーは知っています。しかしながら、CHaCK-UPの正体がSOJ学院生と知らないていをロールプレイしていくように、デビューしたての加賀深友に対してユーザーは、アナザーワールドとしてはあくまで知らんぷりをする部分です。
ですが、山縣さんは深友くんの幼なじみなので知っていてもおかしくない。この「知っていてもおかしくない」の余白を生み出したことが、自分には衝撃にして革命に感じました。
アナザーワールドを介した際に発生する弊害として「芝居パートで良かった部分を即時的に伝えづらい」という点が個人的には挙げられますが、山縣さんが率先して芝居パートの小ネタを織り交ぜることで、こちらもそれとなくすぐ感想を伝えやすい環境を作ってくださったのはありがたかったですし、仮に向こうがメタに近い発言を仰ったところでオーディエンスが勝手に「まあ幼なじみだし知ってるか……」と解釈してくれる。無敵?
まさに幼なじみAW概念は、「自分が演じている」以外のメタ発言をほぼ全てカバーできる、長年の壁を突破するかのような革命でした。

それなのに8K上映会で山縣さんが誰よりもAW絶対遵守だったのもサイコーだった。

ユーザー自ら間口を狭めないよう緩めるところはちょっとAW緩めとこう!という雰囲気が古参ユーザーの間でじわじわ根付き始めてきた(※筆者観測圏内の話)令和時代に、劇場という概念にも公演という概念にも厳しく目を光らせる姿勢、痺れました。このぶっ飛んだバランス感覚もエンターテイメントとして確立していたのだからなお凄い。
それと、同イベントで「ご家族がGS382を応援している」というトークテーマの際「お母さんも前からみゆう知ってて……」と発言なさったの、さすがに幼なじみAWに対するディテイルが行き届きすぎてビビるしかありませんでした。天才?

当然、自分が加賀深友を応援し続けてきた所以は幼なじみAW概念に留まりません。加賀深友が山縣さんと時空を交えて得た抜群のパフォーマンスも然りです。
自分が一番欲しがり続けた加賀深友のファンサが歌詞「己のまほろばを見失うな」あるいは「まぎれのない勇気の証」の目潰しファンサなのですが、理由は、加賀深友の真っ直ぐ射抜く眼光が確実に直撃するファンサだからです。少し上述しましたが、自分が加賀深友に"落ちた"要因が彼の眼光で、その気持ちは最後まで変わりませんでした。
ちなみに、二番目に欲しかったファンサはアイラブユーのハンドサインでした。あれはAW確立後のドルステ史上2つ目の「お友達の提案が本編に干渉する」事例です。加賀深友、主人公公演千秋楽ラスト捌け際で幼なじみから教えてもらったファンサすな。

 


とはいえ、もとより歓声NGという制約の中生まれたユニットなだけあって、ファンサをはじめとする客席への明示的な働きかけがなくとも魅了するのが元祖GS382の三人の強みだと自分は考えています。
深友くんの圧倒という言葉がよく似合うダンスはどのナンバーでも最高でしたし、新規メンバー加入に伴い歌割りが変わる中「まほろば」落ちサビソロパートが加賀深友・富蛇野仁のGS382ヴォーカルツートップで貫徹したのも、紛れなく深友くんの実力が正統に評価された結果ではないでしょうか。

 


それはそれとして幼なじみAW概念エンド、因果?
一区切り前の最後の加賀深友ソロショットが「幼なじみにご褒美として手作りプレゼントをもらい喜んでいる時の写真」なの、最後の最後まで格の違いを見せつけられてお別れの涙を引っ込めて笑いながら拍手してしまいました。
これだよこれ……自分の9年間のAW時空人生でもっとも心躍らされたアナザーワールドは……!本当にありがとうございました!!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






最後に、山縣さんがプレゼント◆5の前進であるV系バンド・血の雨と無恥もアナザーワールドに取り入れていたことにかけて、自分も好きなバンドソングの歌詞を引用させていただきます。

 

 

拡がる世界の中、輝いてた
舌を出して突き刺せ 僕が、僕であるが為のNight
不可解なリアルじゃさ 物足りないね!

(篝火『エスカレーション!』より)


アナザーワールドと一旦離ればなれになったこのリアルに物足りなさを感じた時も、この9年間でプレゼントされた最高の時間と経験は消えずに前へ進めると、自分は信じています。
アイドルは不滅!アナザーワールドも不滅!

それでは。





注釈:タイトルの罫線より前の部分も篝火「エスカレーション!」より引用しました(読点筆者)