Day380-ここまでのあらすじ

 コオは、

「莉子のYesを確認したいなら、まずは莉子が施設に確認に行くこと、見学を済ませる期限は来月末。」

「それをやらないなら、私は、もう、この老人ホーム探しの件からは手を引く」

と父に伝えた。父は、「莉子を、ゆっくり時間をかけて説得する」といい、コオは

次の月の末までに、莉子が施設を見学し、意思をはっきりさせるとこ。さもなければ、手を引くことを父に宣言.

 その意思表明は一定の効果はあったものの、結局莉子は、期限ぎりぎりに設定した見学日をドタキャンした。

父は、莉子は期限内に、「ノー」という結論を出したのだから、コオに次を考えてほしいという。

コオは、新たに条件を設定し老人ホームを探したい、と高齢者住宅紹介業者の藤堂を頼る。

藤堂は3つの施設を選び出し、見学をすることになったが、1番目の施設でコオはネガティブな印象しか持てなかった。

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「それでは...最後ですが、コスモスホームです。場所は正直かなり不便です。バス停も少しばかり離れています。」
「そうですか…お値段はかなりお安いのはそのせいですか…」

2件目の見学はスキップして、3件目のコスモスホームは、

寿市の中ではかなり西のはじっこ、県境の河川敷にほど近いごちゃごちゃとした住宅街にあった。


 「こちらです。」

 「あ、すごく…新しく見えますけど。」

 「確か3年前にたったので、確かにまだ新しいです。低層住宅地名の中なので、日当たりも悪くないですね。」


 少し前に見た”GKみや”は暗いばかりだったから、コオは気分がよくなってきていた。

 多分”GKみや”の方が特別違っていたのかもしれない。以前見学した他の施設と同じく、コスモスホームは、施設長をはじめとした数名のスタッフが、出迎えてくれた。

 

 入口から近いところに、壁にはめ込み式の大きなテレビ。8人ほどが腰かけらるテーブルとイス。

テレビを見ている年寄りたちのそばに、テレビを見ずに本を読んでいる老人がいた。

 

 「ああ、松本さん、何読んでるの?」

 

 施設長に声をかけられた松本老人は目を上げて、本を見せた。 施設長はにこにこしながら少し会話を交わし、コオと藤堂に施設を案内して回った。コスモスホームは以前父が希望したホームに比べると、全体的に普請がすこし安上がりであるようには見えた。それでも、コオは、施設の明るさと、スタッフの暖かな感じに、もうその時点でほとんどこのホームに決めていいのではないか、と考えていた。