Day380-ここまでのあらすじ

 コオは、

「莉子のYesを確認したいなら、まずは莉子が施設に確認に行くこと、見学を済ませる期限は来月末。」

「それをやらないなら、私は、もう、この老人ホーム探しの件からは手を引く」

と父に伝えた。父は、「莉子を、ゆっくり時間をかけて説得する」といい、コオは

次の月の末までに、莉子が施設を見学し、意思をはっきりさせるとこ。さもなければ、手を引くことを父に宣言.

 その意思表明は一定の効果はあったものの、結局莉子は、期限ぎりぎりに設定した見学日をドタキャンした。

父は、莉子は期限内に、「ノー」という結論を出したのだから、コオに次を考えてほしいという。

コオは、新たに条件を設定し老人ホームを探したい、と高齢者住宅紹介業者の藤堂を頼る。

藤堂は3つの施設を選び出し、見学をすることになったが、

1番目の施設でコオはネガティブな印象しか持てなかった

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「いかがでしたか?」
「…」

見学を終えて次の施設に向かう途中、車の中で藤堂が声をかけた。コオは、逡巡した。

 「あの…説明してくださった方って、施設の方なんですか?施設長さんとか?」
 「ああ、後藤さんは、営業です。」
 「営業!?」

コオは驚いた

 「なんか…是非入居してくださいって感じじゃなくて、ちょっと驚きました(本当はすごく)。今まで見学してきた施設はどこも・・・その・・・いいところを色々説明してくださってたけど、今回は…そのう・・・」
「ああ、GKグループさんは、そういう感じなんですよ。どこも。多分、特に宣伝しなくても、価格と立地で、入居者さんが次々いらっしゃるからでしょうね。実際お安いですし…」

 ・・・つまり足元を見てるってことか。コオは舌打ちしたくなった。
 コオがネガティブな印象しか持てなかったことを、藤堂はすぐに見抜いたように思えた。もっともあの説明の場でのコオの様子を見れば、今までのコオを知っている藤堂なら気づかないわけはない。いつも見学時に持ち歩いて、山のようにメモしていたノートは開きもしないし、空き部屋の見学だけはしたけれど、実際の使用中の部屋の見学は断ったくらいだったから(もう充分です、とか言って)。


「2件目の ”GKおの” なんですが、正直、”GKみや” より、ちょっとレベルは落ちると思います。どうされますか?断ることもできますが。」
「すみません。申し訳ないですが、お断りしてもいいですか? 私、”GKみや” は、正直好きになれませんでした。それより落ちる、と藤堂さんがおっしゃるなら、きっとそうなんだと思います。私なら…あそこには入居したくない。」

 コオはきっぱりといった。