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*******Ｄａｙ８６以降・前回までの話*********
コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取あうようになる。
父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたこと、莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、立石が困っていることを知る。莉子をキーパーソンとする、という大前提を先に明確にしたうえで、コオが影で動く立石との連携は機能し始める。
ゴールデンウイークにコオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。
旅行から帰った次の日、莉子にケアプログラムを提案するために出かけるが、莉子と決裂。コオは、何とか父と言葉を交わしはしたが、疲弊して実家を後にした。
遼吾に状況を話し、助けを求めたが、コオを突き放す遼吾の言葉に、絶望する。
過去の瘴気に毒され、感情に溺れ切ったコオを理解できず、コオを放置することを選んだ遼吾。
コオは絶望を抱えたままそれでも、日常を送り始めるが、遼吾との距離は、徐々に深く、確実に遠くなっていく。
そのなかで、コオは莉子が決められなかった主治医候補をリストアップし、莉子の友人にコンタクトを取ろうと試み、莉子の受診支援を依頼するため行政のメンタルヘルス相談窓口を利用しようとするが、上手く行かず、焦燥感を深める。コオは少しずつ病んでいく。
そんな時、父から電話が入り、コオはデイケアでのリハビリをもう一度すすめ、父は行くことをコオに約束する。
夜、莉子から電話が入った。
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電話を取ったのは次男の健弥だった。
「母さん、莉子おねえちゃんから。代わってって。」
莉子は、自分の甥っ子たちに、自分を叔母さんではなく、莉子お姉ちゃんと呼ばせていた。健弥はめんどくさそうだ
「取り込んでるから出られないって言って。」
コオは莉子の電話にはハナから出る気はない。健弥はそれをつたえたようだったが、恐ろしく嫌そうな顔になった。こういう時の健弥は本当に遼吾にそっくりだと思う。今にも受話器を渡そうとしながら、健弥は言った。
「それでも出てくれって言ってる。」
「切っていい。母さんは出られない」
（そんなことやらせんなよ）と言わんばかりに、コオを見た健弥だったが、言われた通り
「なんか出られないらしいんで、すみません。」
と言って切った。用があるならファックスで送ってこい。私はもう、莉子のヒステリーを聞くだけの心の余裕はない。しかし、確かに健弥には悪いことをした。
「健弥、ごめんね。嫌な事させて。」
コオがいいおわらないうちに、遼吾の携帯電話が振動した。遼吾は電話番号を見てため息をついた。
「・・・出てくれって。」
コオが嫌がっているのが分かっていても、遼吾は、電話をコオに差し出した。
「何、忙しいんだけど。」
「パパの事・・・困るのっ！！」
ヒステリックな莉子の声が響き、思わず顔をしかめたコオは、
「忙しいから出られないって言ったでしょ。用があったらファックスにして。」
とだけ言って、まだ莉子のキンキンした声が何か言っているようだったが構わず、電話を切った。
もちろん、また着信。
「もう、莉子の番号ブロックして。あなただって、家でも仕事場でも、かけてこられるの困るでしょう？」
遼吾は黙って、まだ着信を伝える携帯にむかった。ブロックしているようだった。
おそらくは、父がデイケアに行こうと思う、と伝えたのだろう。それについて莉子は異議を唱えて喚きに電話をかけてきたに違いない。もううんざりだ。莉子も。遼吾の態度も。コオは激しくイラついた。