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*******Ｄａｙ８６以降・前回までの話*********
コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取あうようになる。
父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたこと、莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、立石が困っていることを知る。莉子をキーパーソンとする、という大前提を先に明確にしたうえで、コオが影で動く立石との連携は機能し始める。
ゴールデンウイークにコオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。
旅行から帰った次の日、莉子にケアプログラムを提案するために出かけるが、莉子は外で父と話したい、といったコオを拒否、家から追い出そうとする。コオは、何とか父と言葉を交わしはしたが、母の言葉でコオを責め立てる莉子と、それを止めない父に疲弊して実家を後にした。遼吾に状況を話し、助けを求めたが、コオを突き放す遼吾の言葉に、絶望する。
過去の瘴気に毒され、感情に溺れ切ったコオを理解できず、コオを放置することを選んだ遼吾。
コオは絶望を抱えたままそれでも、日常を送ろうとする。
そのなかで、コオは莉子が決められなかった主治医候補をリストアップし、莉子の友人にコンタクトを取ろうと試みるが、返信はなかった。
コオは胸騒ぎを感じる。
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父のケアマネージャー立石からFAXが届いたが介護サービス、ケアプログラムは、父のリハビリととしてのデイケアは、入っていなかった。
週２回の入浴サービスと、介護ベッドのレンタルのみだった。
どう進めてくれたのはわからない。FAXのはしには、主治医がはっきりしたら１日のデイが必要か？と書き込みがしてあった。
コオはため息をついた。
仕方がない。キーパーソンは私ではない。莉子なのだ。主治医が決まって、リハビリの必要性、デイケアの必要性を主治医が莉子と父に言ってくれればいいのだが。
やってもやっても、莉子にも父にも届かない焦燥感、むなしさは着実にコオの心を蝕んでいた。
コオは市のメンタル関係の相談窓口を調べた
ともかく、窓口はたくさんある。しかし、気を付けなければいけないのは、同じ役所のものでありながら、彼らは横の連絡がない。なのに利用者の耳に心地のいい名前の付いた窓口はたくさんある。
心の健康センター、心の電話、メンタルヘルスセンター、心の相談窓口、精神保健相談、等々。
片っ端から電話をかけた。コオが求めていたのは、この時点ではどうもおかしいと思う莉子に介護の必要な父がよりかかっている、どうしたらいいか、という相談で、欲しかったのは受診支援やこの先どうしていくのがいいかの具体的なアドバイスだった。
でも何もなかった。彼らは基本的に【話を聞く】だけなのだ。
それだけでいい人も確かにいるのだろう。でも、コオはそうではなかった。コオは話を聞いてくれるだけでいい、などと思っていなかったし、助けを求めていた。具体的な、手を。具体的な動きを。
一番具体的だったのは【次に妹さんと話すときは録音をしてください】というものだったが、それですら、よく考えたら彼らは全く動く気がないのだ。しかし、コオはこれをきっかけにボイスレコーダーを購入する。録音してください、といった役所側の人間が、今に至るまで、コオの録音を聞いてくれたことは一度もない。しかし、これは、後に別の形で役に立つことになる。
また、別の窓口でコオは
「統合失調ではないかと思うような被害妄想がある」
とも伝えたが、そのときの電話口の女性は、莉子の身なりはどうか、とコオに尋ねた。コオが
「なんなら、私より身ぎれいにしてるくらいです」
と答えると、
「それは、医者に訪問診断してもらっても、正常、と診断される可能性が高いですね」
といったきりだった。
コオは今でも悔やんでいる。あの時コオは電話した窓口の名前と、電話口に出たスタッフの名前をすべて記録しておくべきだった。それがあれば、もっともっと、強く後に主張することができたのに、と、コオは心の底から悔やんでいる。