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あらすじ BattleDay0-Day86

*******Day86以降・前回までの話*********

 

父が退院した。コオは、父の退院後の様子を知るため、ケアマネージャー立石と連絡を取る。

そこでコオは父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に2週間の短期入所していたことを知る。

更に立石は莉子がケアプログラムを決定できないのでサービスを開始できないこと、主治医も決定していない

などトラブルをコオに伝える。

コオは今後自分の提案を、立石がプロとして莉子に提案してくれるように依頼する。

大前提を先に明確にしたうえでの連携は機能し始めた

 

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  ベッドレンタル。風呂のみの介護サービス、半日のデイケアと丸一日のデイケア。

 コオは考え続けた。父は話をすることで回復してきたように思う。だから、これを途切れさせないためには、丸一日のデイケアが必要だろう。風呂はそれに合わせて2回から3回。いきなりデイケアを3回はきついだろうから、1回から2回くらいから始めるのがいい。父は昔から規則正しく何かをやるのが好きだから、習慣になれば機械のようにそれを実行していくだろう。

 コオは、父の、要介護度2の状態で月に使える介護サービスのほぼ上限までを書き出し、その料金を計算した。そしてそれを少し削ってみた。デイケアはまずは1回か2回.入浴だけの半日サービスを1回か2回.介護ベッド。

 母の残したお金を使ったとしても、この金額なら5年は行けるはずだ。病院などの突発的な事態があっても、それは莉子とコオが支払いをしていけば払えないことはないだろう。高額医療費の申請をすれば、ある程度は戻ってくるし、父だって、たくわえがゼロということはないはずだ。定年時はまがりなりにも会社の工場のトップだったはずだし、家は持ち家だ。旅行やお金のかかる趣味もない。

 ただ、気がかりなのは年金額が不明なことだ。月々の父の収入はおそらく年金だけのはずだ。父は証券会社に口座を持っており、株をやっていた。病院にいる間に、何とか聞き出したところでは、父は、もちろんもう株を売り買いできる状態ではないし、そもそも株そのものは、入院した時点ですでに売ってしまっていて、もうほとんど持ってない、と言った。それでも、一度はコオの夫、遼吾に、証券会社の口座の管理を頼みたい、とも言っていた。しかし、あとからまたもや莉子が、自分に管理させてくれ、と言ってきたのだが。

 いずれにしても、株からの収入はおそらくゼロと考えていいだろう。メインの月々の収入は年金。そして、大した額ではないだろうが、莉子のバイト代が、深谷家の月の収入すべてのはずだった。

 その中から、光熱費、医療保険、固定資産税、住民税が固定で出ていく。莉子の分の年金もそうだ。健康保険は父の扶養に入っているだろう。

 

 この時点でコオが間違えていたのは、莉子は健康保険は父の扶養に入っているのではなかったということだ。父はすでに75歳を超えており、後期高齢者医療保険という別制度の枠組みに入っていた。これは国民健康保険とは全く異なる枠組みで個人の枠なので、必然的に莉子は莉子個人で国民健康保険に加入している必要があった。

 

 「小さいお金じゃないのは確かだけどさ・・・」

 

遼吾はコオがノートに計算をしているのを覗き込んだ。

 

 「この歳になって・・・緊急の時に出さえ、まとまったお金が出てこないっていうのは、悲しいよな・・・」

 

もちろんそれはコオ達家族の事ではなく、莉子の事だった。