これまでの話、Battle Day0-Day86 のあらすじは、以下のリンクをご覧ください、
*******Day86以降・前回までの話*********
父が退院した。自分の家族と仕事で忙殺されていたコオは、父の退院後、父の様子をうかがうために、ケアマネージャー立石と連絡を取る。そこではじめて、コオは、父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に2週間の短期入所していたことを知った。
更に立石は、莉子がケアプログラムを決定できず、父が1週間の間、入浴サービスを受けることもできていない、こと、本来決まっているべき主治医も決定していないことをコオに伝える
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すこしずつ色々なことがつながってきたような気がした。
「いちおう、今まだ病院からもらってあったお薬が残ってるようなので、差し迫ったものではないんですが…」
と立石は付け加えた。
「連休明けには、と思ってるんです。主治医も、ケアプログラムも。今は介護ベッドだけは入れてる状態ですね。」
「デイケアとかに行って、リハビリするのは。」
「それも、ケアプログラムがきまって、莉子さんがうん、と言ってくださらないと、進まないんです。」
コオはため息をついた。
「・・・わかりました。あのですね、プロの目から見て、どれくらいの入浴頻度、っていうのが普通ですか?父のような容態の場合。」
「そうですね、2回から、3回でしょうか。できれば3回。」
「でしたら、それを、立石さんが妹にこれで行くのがスタンダードです、これで行きましょう、と提案してもらえませんか?業者も含めて。」
「え・・・っ。でも、莉子さんが反対したら。キーパーソンはあくまで莉子さんです。お二人が違う意見を言われたら私たちは。」
立石が急に警戒モードに入ったのにコオは気づいた。コオはその答えも、もう用意してあった。
「ええ、妹はキーパーソンです。意見が食い違ったら、妹を優先してくださって構いません。私の意見を通す気は全くないです。安心してください。でも、今、彼女は何も決められない状態です。ただ、私が決めれば、私が決めたというだけで彼女は反発するでしょう。ですから、私がこうしたいという内容が、立石さんのプロの目から見て、妥当なものでしたら、それを立石さんのプロとしての提案、という形で妹に言ってほしいんです。」
「なるほど・・・でもそれじゃお姉さまが。」
「私はどうでもいいです。父が穏やかに過ごしていけるなら別に。ともかく、選択権を全部彼女に与えると、結果的に彼女は何もやらない。選べないんです。でも、立石さんがプロとして、これこれを提案します、他に特にご希望がないようでしたら、これがいいと思います、という形にすれば、彼女は聞くと思います。」
「・・・わかりました。また、ご連絡いただけますか?」
もちろんだ、と言ってコオは電話を切った。
あらゆる場面において、選択をする、ということには責任が伴う。自分の事であれ、他人の事であれ。莉子は、責任を取ることを回避しているのではないだろうか、とコオは思った。でも、それは立石もある意味、同じであるようにも思えた。
顧客に、”あなたが進めたからでしょ”と後で文句を言われたときに、責任を取らないで済むための。
いや、そこまで言うのは酷かもしれないが、責任を取りたくない二人がいくら話をしても事態は進まないだろう、と思った。
