掲載されました、中国新聞文化面「緑地帯」 「バンクーバー朝日軍と希望の橋⑤」 より
「この大きな川を渡ると、成功した人だけが行くことのできるRainbows endがあるんだ。僕と君は大きくなったら必ずそこで会おう。」幼なじみと誓い合う子どもの夢と希望を描いた曲「Moon River」は映画のヒットソングを数多く手掛けるジョニー・マーサーの作品だ。これは昭和の時代の「Moon River」のような話。父親が移住したカナダから、5歳で広島の親戚宅に1人留学をした上西功一さん。私の祖父は親戚の中でも一番年上で、お兄さんのような存在だったそうだ。上西家は兄弟が多く、いつもにぎやかでみんなとても仲が良かったそう。
家の近くには大きな山があり、カブトムシを捕ったり、春には山菜を摘んだり。川では、どじょうや小魚などを追い掛け、夏には水遊びをした。秋には庭になる柿をもぎ取り、ススキの間をトンボが舞う。冬になると、うっすらと凍る地面を滑って遊んだという。ともに遊び、学び、過ごした子ども時代は夢と希望にあふれていたことだろう。
彼らは約束していたはず。「きっと僕たちは大人になったら立派になって、また会おう」と。その思い出を懐かしみながら、アルバムをめくる。キラキラした目で、子ども時代の話しをしながら一枚一枚。功一さんは言う。「子供の頃のことは忘れられません。どうしてもね。」それは父がくれた贈り物。カナダで事業を成功させ、異国で日本人の居場所を切り開いた父は功一さんにとって誇りである。親子のその深い愛は戦争をも乗り越え、あの一本のフィルムは未来へとメッセージを運んだのだ。

