今日の新聞に、オーバーツーリズムの解消に向けて、外国や日本の取り組みを紹介するとともに、新たな視点からの提案も示した記事が掲載されていた。
離島などであれば、そこに至るためのルートが限られているので、玄関口となる場所で「入域税」を徴収したり、入域する人数に制限を設けたりすることが可能になる。
だから、イタリアのヴェネチァだとか、日本でも沖縄県の竹富島や西表島など、地理的条件からこうした対応策が可能なケースが紹介されていた。
(沖縄の離島観光スポット/石垣島川平湾)
しかし離島のような場所ならともかく、通常はどこからでも入域できるのだから、「入域税」を取ったり、人数制限を設けたりすることは、対策として非現実的である。
だから観光スポットの中には、事前予約制にして一定以上の人数がそこに来ないようにする、といった対応を行うところも現れているそうだ。
例えば通常の観光とは異なり、夜間のライトアップ・イベントを行う場合などであれば、入場の事前予約制や、事前のチケット販売とすることで人数制限を行うこともできる。
(有料で行われたライトアップ・イベント/下鴨神社)
だから、こうした〝イベント〟的な催しであれば、時間や場所を区切ったり、入場人数を決めたりという具合に、集客数に制限を掛けられる可能性はある。
私自身が経験した事例では、寺院の大改修現場を関係者が案内するイベントがあったし、お茶席への入場に人数制限がある、といった事前予約制も聞いたことがある。
(大徳寺方丈/解体修理現場の見学会)
私の事例は、さらに事前申し込みによる抽選だった。私は昨年は抽選が外れて、今年は運よく当選できた。これも一つのアイデアだと思う。
しかし例えば清水寺のように、お寺の拝観だけでなく周囲の散策も観光の一環だったり、周辺の観光スポットとの移動も重要である場合は、単独での事前予約なども不可能となる。
(清水寺/産寧坂周辺の過去の人出)
一方で、観光スポットの寺社が独立して存在している場合なら、京都では、すでに苔寺・西芳寺が長く往復葉書による申込制を採用しており、事前予約は不可能なことではない。
さすがにこうした事前の申し込みなども、時代に合わせてネットでの申し込みと、金銭面でも事前の決済とすれば、お互いスムーズに予約と観光ができるだろう。
早い話が、レストランや料理屋と同じような予約システムを採用すれば、観光スポットによっては、周辺も含めて極端な混雑は防止できる。
京都でも事前予約制が困難なのは、ピンポイントで1カ所を拝観するのではなく、〝界わい性〟が観光の要素となっている「嵐山地域」と「清水寺周辺地域」くらいなのだ。
(嵐山/「竹林の小径」の過去の混雑)
その他で界わい性を持っている地域は、桜の季節の「哲学の道」周辺など、ある程度対象が限られて来る。そうであれば、対応策を立案する場合でも考えようもある。
(過去の「哲学の道」の桜の時期の風景)
結局のところ、観光寺院の場合は拝観料を徴収するから、事前予約制といった対応策も考えることができるが、その点神社の場合は参拝が自由だから、予約制の採用は困難だけど。
神社の場合は、お祭り見物などで多くの人が集まるなら、これは日時が限定されるから、オーバーツーリズムという感覚にはならない。その日限りのこと、ということだ。
そう考えれば、京都の場合もバスが混雑して市民が乗れないとか、周辺道路が渋滞して動かないといった状況は、実際は限られた場所と時期だけの出来事である。
それなら、京都でコロナ禍以前に運行していた、主要駅と観光スポットを結ぶ「急行バス」を復活させるしか方法はない。こうすることで、市バスの混雑問題はかなり解決される。
あとは、自家用車による観光地周辺の混雑の問題ということになる。これは、きわめて単純な対応策として、時間貸しの駐車場を観光スポットの周辺に作らなければ良い。
以前から言われてきたことだけど、パーク・アンド・ライド方式で、京都市内の観光スポットから離れた場所に自家用車を駐車して、そこからは公共交通を利用してもらう。
これ以外に方法はない。それは〝できない〟のではなく、〝やるか、やらないか〟という行政の姿勢の問題である。色々なことに配慮をすればするほど、結論は「ノー」になる。
〝ダメもと〟でチャレンジしてみるという、蛮勇を振るえる市長が現れない限り、いつまでたっても〝特定の季節と場所〟での道路混雑の現状は変わらないと思う。