「尊攘堂」から「しっぽ学」まで | がいちのぶろぐ

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連休の中日。晴れてかなり気温も上がった日になった。我が家から近い京都大学で、今日だけキャンパスの一般公開をしているということで、ちょっと面白い建物を見学してきた。

 

行った建物は、「尊攘堂」という名前が付けられている。まさに「尊王攘夷」の「尊と譲」である。今日貰ったパンフレットには、次のように記載されている。

 

 

 

「この建物は、明治時代の政治家、品川弥二郎(1843ー1900)の遺志にもとづき、本学に寄贈された吉田松陰や尊王の志士たちの遺墨・遺品類をおさめるため、1903年(明治36)に建てられた。」

 

 

 

だから、「尊攘堂」という名前が付けられている。品川弥二郎は幕末の長州藩士で、吉田松陰の弟子で、桂小五郎とも一緒に活動をし、「蛤御門の変」にも参加していたそうだ。

 

Wikipediaでは、品川が「維新で亡くなった志士たちを顕彰するため、京都に尊攘堂を建立して京都帝国大学に寄贈」したと紹介している。ただ、詳細不明の部分もあるようだ。

 

 

 

それにしても、こうした話を読んだだけでも、一見しておく必要がありそうな建物だと思っていた。だから、オープンキャンパスの今日は、チャンスとばかりに見学に出掛けてきた。

 

京都大学の時計台がある本部構内の西の端、新たに建てられた総合博物館のすぐ南側に、この「尊攘堂」が、周りの建物とは場違いの姿で、ひっそりと建っている。

 

パンフレットでは、「煉瓦造平屋建・寄棟屋根の擬洋風建築とよばれる建物」だと説明されており、続けて次のように説明されている。

 

 

 

「破風付きの窓や小屋根、切妻のポーチなどの洋風要素を配して」いて、内部は「一段高い小室が奥にひかえ(中略)中央広間の天井をめぐる漆喰装飾と照明の唐草装飾とがあいまって、華やかな印象を醸し出している。」

 

 

 

こうした建物なので、「明治時代における特徴的な建築例として、1998年に国の登録有形文化財に指定されている」ということだ。

 

 

 

今日、見学した限りでは、現在は京都大学構内の建物の建て替え工事等に際して、土の中から発掘された土器類などが、ガラスケースに納められ展示される場所となっていた。

 

 

 

付け加えるなら、品川弥二郎は幕末の動乱期を生き抜き、明治になって英・独へ留学に派遣され、帰国後は官僚として明治政府の要職を務め、最後は内務大臣にまで上り詰めている。

 

また、品川から寄贈された「吉田松陰や尊王の志士たちの遺墨・遺品類」などは、京大付属図書館に収蔵・保管されているそうだ。

 

 

 

さほど広くはない、この「尊攘堂」と周囲を見るだけなら、ものの10分余りで終わってしまう。だから、隣り合った総合博物館にも入ってみた。

 

通常であれば、一般は400円の入館料が必要だが、今日はオープンキャンパスで、こちらも無料公開。ただし、70歳以上は通常も無料としてあったから、私はいずれ無料組だ。

 

 

 

自然科学系というか、動物の進化や熱帯林の昆虫類などの展示もあったが、私には「江戸時代の京都の街の変遷」を何枚もの古地図で表した、人文系の展示の方が面白かった。

 

 

 

また小さな展示だったが、「しっぽの秘密」展というのが、とてもユニークな研究成果で、私には面白かった。

 

その中でも、「しっぽのことわざ」にはなぜかネガティブなものが多い、という主張の展示では、思わず噴き出してしまった。確かにそうだと思う。

 

 

 

「しっぽを巻いて逃げる」「トカゲのしっぽ切り」「しっぽを出す」などなど、ろくな例えに使われていない。そう言われればそうだ。これは確かに、しっぽが気の毒だ。

 

また「九尾の狐」などと言われるが、そもそもしっぽは1本だけで、それに真ん中に骨が通っているから何本にも分かれようが無い、と説明されていた。

 

〝歳古りたる狐〟が妖怪変化となった場合、しっぽが何本にも分かれることがある、というのはあくまで想像上のお話なので、現実には有り得ない。それはもちろんだけど…。

 

 

 

その展示スペースにあったパンフレットでは、ヒト科の生物グループにはしっぽがないという指摘がされている。

 

ただ「長い尾のあった祖先とすでに尾をなくした祖先の化石は発見されて」いるけれど、「その間をうめるような化石は見つかって」いないそうだ。

 

なので、「いつ・なぜ・どのようにヒトがしっぽをなくしたのかは今も謎のまま」だそうだ。こんな研究って、すごく楽しくて夢がありそう。このあたりが〝京大らしさ〟なのかも。

 

これを「しっぽ学」と呼んでいるらしいが、この視点から見ただけでも、ヒトの誕生とつながって来る研究だと思う。