伝統産業ミュージアムがリニューアル | がいちのぶろぐ

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京都・岡崎公園の一角に、「みやこめっせ」という施設がある。その地下には、「京都伝統産業ミュージアム」という、こちらはとてもユニークな展示施設がある。

 

 

 

名前の通り京都の伝統産業というか、繊維・工芸・焼物など京都を代表する工芸品の展示と、アンテナショップなどが置かれている。

 

 

この施設のホームページには、「京都では、茶道や華道、能、狂言をはじめとする独自の文化、古くから受け継がれる素材・技術を用いた伝統産業が育まれて」きたと書かれている。

 

だから、「その高い技術・歴史は、京都にとどまらず、広く日本の文化を形づくるうえで重要な役割を担って」いるとも。その通りに違いない。

 

 

 

こうした理由から、「京都伝統産業ミュージアムでは、京都に息づく産業とその背景の紹介を通して、広く伝統産業の振興に取り組んで」来たということだ。

 

私はこの施設を、ユニークで楽しいと思っている。しかも、かつては職人さんの実演があったり、時には舞妓の踊りがあったりもしたが、お客の入りが悪くて縮小されてきた。

 

このミュージアムには、併設されている土産物のアンテナショップがあったからだと思うが、創設以来40年余りにわたって、展示部分は無料公開してきた。

 

 

 

しかし、さすがにそれでは行き詰ってしまう。ついに、今月から入館料500円を徴収することにした。さて、500円と中味が見合っているのか、そこは難しいところだと思う。

 

 

 

興味のある人には、それでも安いと思えるかもしれないし、それほど興味を抱かない人であれば、これまで無料だった時も来ていなかっただろう。

 

さらに、伝統産業と一口に言ってもその幅は実に広い。繊維産業の織物・染物・和装小物類などもあれば、焼物・土物の陶芸や人形などもある。

 

 

 

 

また工芸品と言っても、仏壇・仏具という総合的なものから、竹・木・石・金属などを使う工芸品もあれば、漆器や畳、それに掛け軸などの表装品まで、ありとあらゆるものがある。

 

 

 

早い話が、私たちの身の回りにある製品は、家庭電化製品を除けば、大なり小なり伝統工芸と重なり合う部分があると言ってもいい。

 

椅子やテーブル、タンスに食器類もあれば、洋服だってプリントが施されていたり、組み紐類が使われていたりする。これらも、ルーツをたどればすべて伝統工芸と出会う。

 

 

(漆塗りのサーフボードも展示/傷つけたら大変かも)

 

ただ現在、伝統工芸と認識されているものは、すべて〝手仕事〟のニュアンスが強いものである。そして京都という町には、産業としてこの伝統工芸が集積している。

 

ということで、この施設も存在するのだが、なぜか相変わらず伝統産業ミュージアムは客の入りが悪い。無料でそうだったから、有料化すればもっと悪くなるだろうとも言える。

 

 

 

そんなことでは困るのだが。今日、この施設の近くにちょっとした用事があったので、ついでに見物に出掛けてみた。ハイ、相変わらずガラガラでした。

 

有料化されたから、途切れていた職人さんの実演が再開されていた。企画展示として「職人の道具展」が開催されていたが、こちらもなかなか楽しいものだった。

 

 

 

京町家の屋根に乗って、にらみを利かせている「鍾馗」さんを製造するための型枠や、招き猫の土人形の型枠、様々な飾り金具の製造工程などなど。

 

 

 

私には、面白すぎるほどの展示の数々だった。言ってしまえば〝ホェ~!〟の連発だったし、職人さんが〝漆塗り〟のお箸の製造の実演をされていた。

 

また〝擦り型染め〟の体験コーナーでは、外国人女性の方が説明を受けながら、一生懸命染め物づくりにチャレンジをされていた。

 

 

(体験コーナーにて/女性の撮影許可はもらいました)

 

一般展示でも、京仏壇はなるほど総合伝統工芸だと思わせるし、竹細工は小物だけでなく、竹の床几なども置かれていたが、もう〝床几で夕涼み〟という光景も無いだろう。

 

 

 

 

それでもよく見て回れば、〝あんなこと〟や〝こんなもの〟などの展示と出会える。風呂敷でビン類を包む方法を、自分で実際に包んで試せるコーナーもあった。

 

良いんだけど、きっと訴えかけるポイントが、何か足りないのだと思う。

 

 

 

今回のリニューアルを機に、メインキャラクターとして伏見人形の犬が選ばれた。施設でも、でかでかとこの犬がアピールされている。

 

この犬のネーミングを一般募集していたけれど、その結果、どんな名前になったのか、今日はどこにもこの〝犬の名前〟が見当たらなかった。

 

 

 

行政は〝文化庁が京都に来た〟と大いに浮かれているけれど、結局、このあたりの力の入れ方のピントがボケている。良い施設なんだけど、宝の持ち腐れとはこのことだと思う。

 

きっと何かが足りないのだと思う。今日も平日の午前中だったとはいえ、余りのお客の少なさは、土産物コーナーの店員さんの人数がお客を上回っていたほどだった。