「又旅社」での「還幸祭」 | がいちのぶろぐ

がいちのぶろぐ

環境問題と経営の接点、中小企業の戦略やマーケティング活動,
観光・伝統産業関連などについて、「がいち」が考えたこと、思ったことを書きとめてゆきます。

実は昨日は、祇園祭の「はしご」をしていた。午前中の「花傘行列」の巡行見物と、夜になってからのお神輿の「還幸祭」である。

 

昨日のブログには、午前中の「花傘行列」の話を書いた。そして、昨日の夕食後には「堀川三条」までバスに乗って、三条会商店街にある八坂神社「又旅社」に出掛けていた。

 

 

(三条堀川の三条商店街にある「若狭屋」も祇園祭仕様の飾り付け)

 

「又旅社」は、社格としては八坂神社御旅所などと同じように、「境外末社」という位置付けになっており、その場所は長い三条会商店街の中の「三条大宮」という位置になる。

 

 

 

四条東大路の山側に鎮座する八坂神社からすれば、直線距離で2.5km以上離れており、随分と遠い場所のようにも思えるが、この一帯までが八坂神社の氏子区域ということになる。

 

この「又旅社」がある「三条大宮」というのは、平安時代には現在の二条城も含め、「禁苑(天皇のための庭園)」として広い面積を占めていた「神泉苑」の東南隅に当たっていた。

 

この「神泉苑」は平安時代より、「禁苑」であるとともに〝祈雨の修法〟の場であり、空海が祈りによって雨を呼んだという「雨乞いの場」でもあった。

 

この「神泉苑」に湧く池は、「古山城湖の名残の池」とされており、日照りの年にも涸れることがないので、「竜神(善女竜王)が住む池」とされてきた。

 

 

(神泉苑の「法成就池」)

 

「神泉苑」とは、そういう〝いわれ〟のある場所だった。だから祇園祭との関係について、Wikipedeaでは以下のような解説がなされている。

 

「貞観5(863)年に都に疫病が流行り、神泉苑で御霊会が行われた。貞観11(869)年には神泉苑の南端に66本(当時の律令制度の国の数)の鉾を立てて祇園社(八坂神社)から神輿を出した」

 

お分かりいただけただろう。「神泉苑」という、枯れることのない池のある園地であり、空海が祈りを捧げたともされる場所で、『疫病退散』の祈りを捧げる祭りが行われたのだ。

 

 

(神輿を先導する「神宝」列の神官)

 

その祭りの場所が「神泉苑」の南端であり、そこに八坂神社の末社として「又旅社」が今も祀られている、ということだ。つまりは、ここから祇園祭が始まった、という場所なのだ。

 

 

(又旅社の斎場には斎竹と「オハケ」という3本の御幣が立てられる)

 

ということで、この1週間、四条寺町の〝御旅所〟に駐輦していた3基の神輿は、昨日の夕方、ヨッコラショとおもむろに〝みこしを上げて〟動き出した。

 

 

(御旅所の3基の神輿)

 

そして、メインの神様・素戔嗚尊が乗った神輿である「中御座」は、氏子町を回った後で今も「神泉苑」にまで御挨拶に向かう。

 

 

 

この「中御座」を担いでいるのは、「三若神輿会」として江戸時代中期から神輿の奉仕をしている団体である。

 

「三若会」の名称は、「三条台村若中」だから「三若」となったということだ。三条台村というのは、江戸時代にこの三条大宮周辺の地域の名前だったという。

 

 

 

だから、「神泉苑」の端にある八坂神社の末社「又旅社」の周りの庶民が、神輿の担ぎ手として祇園祭の奉仕をしてきた。

 

 

 

少し離れた室町通・新町通の三条~四条一帯が、〝鉾町〟として「風流(ふりゅう)」の山や鉾を出して、派手なイベントで神様を喜ばせる奉仕をしたのとは異なる奉仕だった。

 

 

 

それでも直接に神様を載せて、神幸祭・還幸祭で神様をお運びするという役割を担ってきたのが、元々はこの「三若会」という組織だった。

 

現在は3基の神輿を、「三若会」の他に「四若会」「錦会」などとして、他の氏子町も分担して神輿を担いでいるが、3基の神輿とも「還幸祭」では、必ず「又旅社」に拝礼する。

 

つまり、祇園祭の原点はそこにある、ということを表している。だから昨夜も、「中御座」の神輿だけは、「又旅社」であらためて神官からお祓いを受けた。

 

 

(中御座の神輿は又旅社で神官のお祓いを受ける)

 

昨夜、神輿が到着する前から、「又旅社」の前では祇園太鼓という法被姿の人たちが、和太鼓と鉦でずっと景気付けをしていた。また狭い商店街に、地元の人たちも詰め掛けていた。

 

 

 

(次には「東御座」の四若会の神輿が続いた)

 

「又旅社」が鎮座する三条会商店街としては、地元の神輿であり、地元の祭りであり、地元バリバリという意識だろう。それは、とても楽しい参加意識だと思う。