クリスマスな日曜日、私は特にすることもなく、といって今日は全国高校駅伝大会が京都市内で開催されるので、下手に出掛けるとバスがストップしてしまい動けなくなる。
いつぞやは都道府県対抗女子駅伝の日に、それを忘れて出かけたため、乗っていたバスは全チームが行きすぎるまで足止めを食う、という状況に巻き込まれたこともあった。
だから今日は、我が家から市内の中心部に向かう道路も、午前中はまだ交通規制がないからと思い、繁華街の本屋に出掛けていた。本屋と言うべきか、あの丸善書店だったが。
なぜ〝あの〟という言い方になるのか。それはただただ、梶井基次郎の極短編小説『檸檬』の所為である。
その小説で、主人公は寺町二条の青果店で偶然に見かけた檸檬を買い、それを懐に入れたまま丸善書店に行く。
そして丸善書店では、書籍の上にその檸檬を置いて出る。主人公は、その檸檬が大爆発する妄想に浸りながら、新京極を歩いて行く。たったそれだけの小説である。
ただ主人公は鬱屈していて、その鬱屈する気持ちを持て余していた。そして衝動的に檸檬を置いて、店を出てから檸檬が大爆発することを妄想する。
その時代の青春とは憂鬱に縁取りされ、かくも生き難いものだったらしい。今の時代であれば、こんな生き方をする人間は、どのように表現されるのだろうか。
とにかく、その丸善書店に出掛けていた。といっても現在は、おしゃれなファッションビルの地下の2フロアを丸善書店が占めていて、上層階には無印良品なども入居している。
とにかく、私にすれば久しぶりに丸善書店で本を買おうという気になった。それというのも、ちょっとした理由があったから。
私は以前にマイナンバーカードを入手して、政府から5千円をもらっていたが、先日、自分でパソコンからチャレンジして、健康保険と銀行口座をマイナンバーと紐付けした。
これによって、わたしのスマホのPayPay口座に、今度は1万5千円也が振り込まれた。だから、このお金で何か買い物をしよう、という気分になった。
ということで検索をしたところ、丸善書店ならPayPayで支払いができるとわかったので、たまたま欲しい本があったから、その本を買いに出掛けた次第だった。
求めていた本は簡単に見つかり、無事にキャッシュレスで買い物ができた。こういう場合は、やはりちょっと得した気分になる。
そうとなれば、欲張って〝ついで買い〟にもチャレンジしようということで、あちこちの書棚を見て回り、これは読んでみたいという気分になった本も買い求めてしまった。
行き帰りのバスも町中も、若者のカップルがたくさん出ていたし、プレゼント品の売り場は賑わっていたけれど、私はただ本を買うだけという無意味なクリスマスの日になった。