議論の中で思考を止めないために | がいちのぶろぐ

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環境問題と経営の接点、中小企業の戦略やマーケティング活動,
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QPSという言葉を知った。Q=Quality(品質)、P=Price(価格)、S=Service(サービス等)という、経営的に不可欠な3つの要素を表す単語の頭文字だった。

 

顧客が何を求め、ライバルは何をどのように提示しているのか、といったように、これらは自分の立場・ライバルの立場・顧客の立場を比較検討する場合のベースだろう。

 

顧客は価格(P)よりも品質(Q)を重視しているとか、ライバルは価格競争に持ち込もうとしているといったように、経営の場面ごとでの状況を考える際の要素となる。

 

当たり前と言えば、当たり前のことに違いない。品質と価格とサービスは、どんな場合にも着いて回るのだから、どんな場合にも何らかの比較対象の尺度と成り得る。

 

だからと言って、ライバルに〝勝つため〟に価格を下げようとしても、「どのような理由」によって、「どれくらいの価格の幅」で下げ得るのか、説明できないといけない。

 

〝安ければ良い〟という発想であれば、その価格に見合った品質になってしまうかも知れない。もしくは顧客へのサービスが手抜きで、おろそかになってしまうかも知れない。

 

元々の品質やサービスを維持したままで、価格だけを下げるとなれば、それは利益を圧迫するかもしれない。下手をすれば、利益が出なくなるかも知れない。

 

このようにQ・P・Sの何か一つを変化させようとすれば、影響は他の2つにも及んでくる。それを考えることもなしに〝エイ、ヤッ〟で進むのは、まともな仕事とは言えない。

 

ではどうすればいい。自分の考えを進める際に、または考えるため人と話し合いを進める場合に、〝エイ、ヤッ〟で決めてしまうような乱暴なやり方を避ければ良い。

 

〝乱暴なやり方を避ける〟といっても、それでは具体的にどうすれば良いのか。これが、その事業における経営のポイントということになる。

 

こんなことを延々と書いてきたのも、今日配信されていたダイヤモンド・オンライン誌で、著名な経営コンサルタントの小宮一慶氏が、面白い記事を書かれていたからだ。

 

小宮氏は「『思考停止語』を活性化させる、シンプルな方法とは?」と題して、「相手と論理的に話をすること」の重要さを書いておられた。

 

小宮氏が言われるには、議論や思考の場では「思考停止語」を使わない。「思考停止語」とは、それを言った途端に反論もできなくなるし、わかったような気分になる言葉らしい。

 

「では、お客様第一で考えよう」と言われたら反論はできないが、結局は何が「第一」なのか何も説明されていない。だけどこの言葉によって、話はそこで途切れてしまう。

 

同じように、「一歩踏み込んでみよう」という言葉は、「何を」「どの方向に」一歩踏み込むのか全く示されていない。けれど、みんなが何となく肯いてしまう。

 

これでは思考が停止して、その先に何かを生み出すことが無いと言われる。たしかにそうだ。こういった種類の言葉は、経営だけでなくいろいろな場面で使いがちな言葉だ。

 

方向性や大きさの度合い、次のステップの内容など、何かが明確で具体的であることによって、それが叩き台となり次の議論へとつながって行く。

 

小宮氏も記事の中で、「数字と根拠をセットで使うことで説得力が生まれ」ると書いている。

 

逆に会議の場などで、「もう少し安ければ」といった形容詞を使うなど、「あやふやな言い方を許してしまうと、具体的な解決策に落とし込む訓練の機会を奪って」しまうとも。

 

だから仕事の場面では、このQ(品質)・P(価格)・S(サービス)を、どんな考え方で展開するべきか、可能な限り具体的な「根拠と数字」で表現することが重要だと述べる。

 

小宮氏は記事の最後を、「思考停止語を聞いて納得する人は、失礼な言い方をすれば論理的思考力が低い」と結んでおられた。

 

この表現は皮肉っぽくも聞こえるが、確かに〝みんなで頑張ろう〟では、「何を」「どんな方法で」「どんなところまで」頑張ればよいのか、具体的には何もわからない。

 

それは〝わかった気分になっているだけ〟というのが、小宮氏の言いたいことだと思う。とても分かり易い話だった。