今月3日に、菅総理が電撃的に総裁選挙に不出馬を表明してからというもの、社会全体が何だか重心を失ってしまったような、フワフワとした状態が継続しているような気がする。
とは言え、自民党の総裁選挙が29日に終わり、臨時国会で新たな総理が決まるまでは、辞めると表明していても、あくまでも菅総理がまだ総理大臣だ。
だが、菅総理が今から新たな施策を行うなどということは、常識的には有り得ない。これまで行ってきたことを、粛々と継続する以外には何もなすべきことがない。
同様に総理官邸を担当する記者も、菅総理に向かって質問を投げかけて得られる回答は、現在も政府の意見とはいえ、今となればそれもあまり意味を持たないだろう。
次の自民党総裁が選出され、臨時国会で総理指名が終わるまでの、1カ月間にも及ぶ空白期間は、コロナ禍で医療逼迫が起こっていても、この国はただただ漂流を続けている。
そんな中で昨日、福田赳夫・康夫氏親子・元総理の孫であり子である、福田達夫議員が中心になって「党風一新の会」なる若手議員グループを立ち上げた、という記事を見かけた。
とうとう親子3代にわたる総理を目指したグループ作りかな、という感じがして、私はちょっとした驚きも感じた。
そう思っていたら、今日配信の東洋経済オンライン誌には、さっそく「自民総裁選、若手議員・党風一新の会が変える構図」と題して、この動きの解説記事が掲載されていた。
「これまでの総裁選は、派閥を軸とした多数派工作で結果が決まるケースが多かった」ので、「若手議員は派閥領袖の言いなりで投票してきたのが実態」だったという。
それはまあ、そういうものだろう。しかし今回は、菅総理の突然の退任表明を受けて始まったとあって、総裁選挙は現状では大混戦になりそうだということらしい。
そんな中で、「所属全衆院議員の3割近い若手の決起は、『総裁選の構図を一変させる可能性』(自民幹部)も秘める」と書かれていた。
もちろん、こうした「若手議員らが、最終局面で派閥の締め付けをはねのけて行動できるかは不透明」だとも書かれている。派閥のトップにも、思惑があるから。
この「党風一新の会」というグループは、派閥横断的に70人もの議員が呼びかけ人になっているという。入会者も90人に及ぶらしい。
そして、「福田氏らは総裁選の日程が決まった時点から各派若手有志との個別会合を通じて、党総裁選では自主判断で投票先を決めることを主張していた」という解説だった。
福田議員らは「強引とも取られる政権運営や、国民意識と乖離した言動も散見される」から、「国民の声に向き合い、明確なメッセージを発信するよう求める」という主張らしい。
そうであってほしいと思う。ただこうした若手議員は、安倍政権の下で〝楽な選挙〟で当選してきたと思われている。いわば、逆風の下での選挙は初めてのことだ。
だから、「誰が新たに総理総裁になったら、自分も当選できるかを必死に考え」るから、こうした行動になっている、ということも言えるようだ。それもまた、何だかなあ。
ということだが、この福田氏自身が大変な〝サラブレッド〟であり、「見識や調整能力では小泉(進次郎)氏よりはるかに上」といった評価もある人物らしい。
もっともこの90人という勢力は、誰か特定の候補を推すために集まった、ということでもないらしい。いざ投票となれば、「バラバラに投票することが確実」と見られている。
つまり、このグループが〝一致結束して〟どの候補かを神輿として担ぐ、ということでもなさそうだ。このあたりも、最初から腰が砕けた印象がある。
だから記事でも、「党内の派閥領袖や大幹部は『ひよことしてピヨピヨ鳴いても、最後は鳥小屋に入れるだけ』と冷笑」しているなどと書かれる始末だ。
しかし、「過去に例のないガチンコ勝負の総裁選となれば、若手議員1人ひとりの投票で結果が決まる可能性」もあるから、「総裁選本番での台風の目になる」と締められていた。
これはいよいよ、80歳代や70歳代で〝長老〟や〝領袖〟などといわれる高齢者が、ふんぞり返っていたのでは、時代に置いて行かれるということを実感するときかもしれない。
政治家として右だの左だのという前に、何よりも「若さだよ、山ちゃん!」ということだろう(このCMのセリフがわかる方も、もう決して若くないけれど)。