京都市で違法として摘発された〝民泊〟が、とうとうゼロ件になったという記事が、京都新聞に掲載されていた。
そもそも簡易宿所と呼ばれる宿泊施設は、外国人観光客が急増したことから、急激に建設・登録ラッシュが起きた。
しかし京都市の場合、こうした簡易宿所が周辺住民との間で様々なトラブルを引き起こしているとして、市が条例によって厳しい規制を行ってきた。
その一例として、京都市内の簡易宿所に対しては、「駆け付け」条項と言われる規制が行われている。
例えば、特に1棟貸しの簡易宿所などでは、ホテルや旅館とは異なって宿泊客がチェックインを済ませれば、その後は、施設内に管理者がいないケースも多い。
こうしたケースで、夜遅くまで宿泊客が大きな声で騒いだりした場合、困った近隣住民は簡易宿所の管理責任者に電話などで連絡をすることになる。
連絡を受ける管理責任者は、いつでも対応が可能で、しかも連絡を受けてから10分以内を目安として、現地に到着できる場所に住んでいなければならない、と定められている。
これは、なかなかに厳しい規制である。10分以内ということだから、管理責任者は簡易宿所から直線距離でおおむね1kmの範囲内に居住している必要がある。
そうして、近隣住民の苦情に対応することが必要になる。またチェックインに際しては、現地で宿泊施設の『鍵の受け渡し』をすることが原則とされている。
過去には、例えばJR京都駅前で宿泊客と管理責任者が出会って、遠く離れた宿泊施設の『鍵の受け渡し』をすることも珍しくなかった。
もっと極端な場合には、1棟貸しで暗証番号を打ち込むタイプの施錠方式であれば、事前のメールで『鍵の受け渡し』に該当するやり取りを行う施設もあった。
こうなれば、宿泊客と管理者側がお互いに顔すら見ることなしに、宿泊することが可能だった。外国人であっても、パスポートの直接確認などはもちろん行われない。
そういうことでは、宿泊客の管理が十分に行えるとは思えないということで、簡易宿所の現地で双方が対面した上で、『鍵の受渡し』を行うことが定められている。
こうした厳しいルールとすることで、近隣住民とのトラブルは随分と減り、違法な管理を行う簡易宿所も徐々に減って行った。
しかしこのコロナ禍で、京都の町から外国人観光客の姿が消えてしまった。新規の観光目的での入国者がほぼゼロになったのだから。
その結果、簡易宿所の中でも外国人観光客に特化していたところは、一気に経営状態が悪化し、手広く簡易宿所を経営していた会社が、経営破たんしたというニュースもあった。
その一方で、主として国内客を相手にしている簡易宿所や、いわゆるプチ・ホテル的な経営のところもあり、こうしたところは苦しいながら、色々な戦略で誘客を図っている。
最近では『ワ―ケーション』や『リモート・ワーク』に対応できるように、Wi-Fi環境を整えたり、昼間利用を呼び掛けたりと、あの手この手で頑張っているところも少なくない。
そんな様々なことが色々と作用した結果、簡易宿所の違法営業がゼロ件になった、ということなのだと思う。町中で、営業をストップしたままの宿泊施設を見掛けることもある。
逆に高級ホテルなどは、京都市内で相次いで開業ないしは開業予定を発表している。1室の宿泊料金が5万円を軽く超え、中には10数万円するという高級ホテル群である。
こうした高級ホテルは、コロナ禍がいずれ終息し、必ず京都に観光客が戻って来ることを前提として、今だからこそ可能になる建設を行ったり、従業員教育を行ったりしている。
〝ふところ勘定〟が許せば、こうした逆張り的な行き方も、一つの戦略的な考えだと思う。簡易宿所のブームが去って、これからは富裕層向けがポイントになるということだろう。
いずれにしても、オリンピックによる観光客の誘致を見込んだ戦略こそ、このコロナ禍で大外れになってしまったけれど、京都というブランドはまだ生きているということだ。
それにしても、私も今週には2回目のワクチン接種が待っている。これから急ピッチでワクチン接種が進めば、少なくとも国内客だけでも人流が増えて行くだろう。
それが良いことなのか、それとも大変な冒険なのかは、今のところ全く分からない。ただ、基礎疾患がある高齢者としては、まだしばらくは外出自粛というのが正しい行動のようだ。