小説「室町無頼」を読んでいる | がいちのぶろぐ

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私は、現状では京都市内で最も大型となった大垣書店に足を運び、とりわけ京都・観光文化検定(京都検定)の参考となる色々な書籍を物色することが続いていた。

 

この数年で、京都の繁華街にあったジュンク堂やブック・ファーストといった大型の書店が撤退した。それ以来、京都で大型の書店と言えば、大垣書店くらいになってしまった。

 

 

 

昨日も大垣書店の京都経済センタービルにある本店で、文庫本の小説のコーナーを見ているときに、偶然にも垣根涼介氏の『室町無頼(上・下)』(新潮文庫、2019)を見かけた。

 

 

 

垣根氏と言えば、戦後に移民した先の南米で、日本政府による棄民政策の犠牲となった人々の政府に対する〝復讐劇〟を描いた『ワイルド・ソウル』や、バブル崩壊後のリストラ作業請負人を描いた『君たちに明日はない』シリーズなどで知られている。

 

というか、私はある知人に勧められて垣根氏の小説を知ることになり、読み始めてその面白さにハマって、一時期は文庫本になっている小説を一気に読み進めたことがあった。

 

その後は白内障が悪化したこともあって、文庫本を熱中して読むことも減っていたが、昨年の2月に両眼の白内障手術をしてからは、また読書癖が復活している。

 

そのお蔭というか、読書ができるということを前提に、昨年末には京都検定にもチャレンジする気になり、まさかと思った2級の検定に何とか一発で合格できた。

 

 

 

これに味を占めて、京都検定で最難関の1級を3年計画ぐらいで受験しようと、かなり無謀な計画に挑むことにした。これも、私が生きている〝証し〟だということで。

 

それで、受験する上で多少は役立つだろうと、新書や文庫になっている京都関連の書籍を次々に買い込んで、この間はとにかくあれもこれもと読み漁っている状態だ。

 

そんな時に、書店で垣根涼介氏の小説『室町無頼』と出会ったことになる。この小説は足利尊氏が開いた〝室町幕府〟が京都の町に置かれていた、「室町時代」を舞台にしている。

 

垣根氏にすれば珍しい、歴史・時代小説というジャンルに括られる小説だと言えるだろう。ご存知のように、〝室町幕府〟は第3代将軍足利義満の時代にピークを迎えた。

 

義満は金閣寺(鹿苑寺)というか「北山第」を築いて、ここを日本政府のいわば〝政庁〟とするくらいになり、その時点では天皇をしのぐほどの権力を手に入れた人物である。

 

 

 

しかし足利幕府は、本来は部下であるはずの、管領を務める細川家や畠山家など、実力者の守護大名に囲まれて、義満以後の足利家の将軍はどんどんと無力化して行った。

 

将軍家が無力化して行ったために、幕府が置かれている京の都の中ですら十分な警察権が及ばなくなって治安が悪化し、同時に「土倉」などと呼ばれる金融業者が力を付けてきた。

 

また天皇を頂点とする公家社会や、比叡山延暦寺・日吉大社などの大寺社なども含めて、上層部を構成する人たちと庶民の間に貧富の格差が大きくなっていった。

 

庶民の間では、鎌倉時代に興った法然・親鸞の浄土宗派、日蓮と弟子による法華宗派などが、乱世と格差社会の中で勢いを持つようになり、苦しむ庶民の土一揆なども起きた。

 

こうした混沌とした中世の社会情勢を背景に、垣根氏が「室町時代」を無頼の人生として生き抜いた人々の像を描き出したのが、この小説『室町無頼』ということになる。

 

そうは言っても、垣根氏がこの小説の中で、現代に通じるだろう人間の生き方の種々相を語っている部分が、小説を読んでいても随所に見受けられる。

 

例えば、「人生とは選択する瞬間の連続で、(中略)加速度をつけて早くなる世の移り変わりに、否応もなく人々の暮らし、行き方は巻き込まれていく」と書く。

 

だから、「今までの生き方を頑なに変えようとしない者は、(中略)たちまちその奔流に巻き込まれ、飢えて路頭に迷う」と言う。

 

この小説は、当然ながらコロナ禍以前に上梓されている。そうであっても、厳しい指摘には違いないけれど、現在のコロナ禍に襲われた状況はこういう時代ではないだろうか。

 

小説ではさらに、「選択がはたして正しいかどうかも分からないうちに、さらにその次の選択を迫られる。(中略)後戻りは聞かない」と追い打ちが掛けられる。

 

そして、「己の生き方の規範と世間が認める良識とは、必ずしも一致しない。しばしば相反する。その狭間の中で、常に引き裂かれる自分がいる」と、生き方の機微を描いている。

 

今は上・下2巻に分かれ、全体で730ページほどもあるこの小説の、ようやく上巻が終わろうとしている段階である。昨日から読み始めたので、まずますのペースかもしれない。

 

そう言えば昨日の午後、私が関わっているNPO団体の、今年度の活動に関して相談に乗ってもらうために、京都府庁にある「NPOパートナーシップセンター」に出掛けていた。

 

 

 

この団体の主たる目的である、「やさしい日本語」の実践的なトレーニングを行うことも、このコロナ禍では、リアルに人を集めて開催することがなかなかできずにいる。

 

 

 

それを解消するために、できれば府の補助金を得て、何かワークショップのようなことを開催できればありがたい、と思っているのだが。

 

ということで、府庁での相談が終わってから、大垣書店に立ち寄ったりしていたので、昨日は時間的にこのブログを書くことができなかった。

 

そのことの言い訳は、最後になってしまったが一応書き留めておかないと、と思った。