東京都心部の人口減少をどう考えるのか | がいちのぶろぐ

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今日のダイヤモンド・オンライン誌で、不動産コンサルタントの沖有人氏という方が書かれた「コロナで大激変!東京23区の人口流出が収束後も続く可能性を考える」という記事が面白かった。

 

記事はまず、「東京23区(都区部)は、外部からの流入人口の多さで膨張してきた。そんな大都市が、この1年で流入よりも流出する人口が多い」という。

 

それはそうだろうと思う。この1年余りのコロナ騒動では、東京の都心部が危険だという報道が、これでもかとばかりに連日繰り返し流されたから。

 

 

 

同時に〝人流〟を減らそうということから、もしリモートワークが可能なら、それを活用することが望ましいと、現在も推奨されている。

 

記事では、「通勤時間を短くするために、都心寄りで駅近の賃貸物件を探していた傾向は影を潜め」たという。リモートワークで、「都区部を出ることを検討するようになった」から。

 

その上、リモートワークで〝画面に背景が映る〟ことを考えると、「家賃の予算には制限がある」ので、「部屋数を増やし(中略)た分だけ、駅から離れている物件に人気が集まる」ことになる。

 

こうした〝画面映り〟などということも、家族がいるならまだしも、独身の1人暮らしでリモートワークを行う立場になれば、実際問題として切実な話だろうと思う。

 

 

 

かつてバブル景気が華やかなりしころ、テレビの〝トレンディ・ドラマ〟では、東京の都心に近いと思われる地域の豪華なマンションに、若い独身男女が住んでいたものだった。

 

いくらバブル景気に湧いていたとはいえ、そんな都心近くにある豪華なマンションに住める若いサラリーマンなどは、きわめて少数派だろうと思っていたが。

 

その点では、「バブル景気の時は、土地価格の高騰からマイホームの購入は郊外」にならざるを得なかった。いわゆる「都心から離れて住む」ので、「ドーナツ化現象」と呼ばれた。

 

この記事を書いた沖氏の言によれば、「今回の人口減少では、持ち家需要は旺盛で分譲マンションも戸建ても売れ行きは非常にいい」そうだ。

 

「一方で、賃貸は独身世帯の流入減少で稼働率が悪化して」おり、「今回は単身の賃貸層が地方や郊外に移転している」という特徴があるそうだ。

 

その証拠に、「今年4月に都区部の賃貸住宅市場にやってきた人の数は昨年比で6割程度に落ち込」んだ。今では、「竣工した戸数の分だけ空室が生まれる事態になって」いるとも。

 

さらに、今回のコロナ禍では、「都区部は流出人口だけでなく、直近1年間の出産・死亡人口もマイナス1464人」だったそうだ。これも前年比で大幅に減少したという。

 

つまり、流入より流出が多いという〝社会的減少〟と、出生より死亡が多いという〝自然減少〟が同時に起きていることになる。だから、一気に人口減少になる状態だ。

 

これは大都市圏以外で人口減少が起きる場合に、〝社会的減少〟によって子どもを産む世代が減少し、さらに残された人口の高齢化が進んで〝自然減少〟が起きる、ということとさして変わらない。

 

つまり、リモートワークがさらに進展するようであれば、もはや東京都区部といった大都市圏に住む必然性が薄れて来る。

 

だからテレビ番組で、時おり、ワンボックスカーを改造した車で生活しながら、同時にリモートで仕事もしている、という人を取り上げるケースを見るようになってきた。

 

今日の記事の後半部分では、沖氏も不動産コンサルタントの立場から、「今後の論点は、コロナ収束後もリモートワークがどの程度残るか、になる」と述べておられた。

 

そして、「思い出すのは、何度となく試行錯誤したサテライトオフィスの顛末だ」と言われる。「人はサテライトオフィスにいると、本社との情報格差があると勝手に思い込み、不安になる」というのだ。

 

わかるような気がする。会社を離れて仕事をするというのは、フリーならまだしも、あくまで会社員という立場であれば、やはり「本社との情報格差」ということを意識してしまうだろう。

 

沖氏も「そのために、必要性がなくても本社出社日を設けるなどの対策が取られてきた」と述べておられた。

 

だから記事の最後では、「働き方改革はそもそも業務の効率化が主目的だった。それが担保されるなら、仕事はどこでもできるのは望ましい」と、沖氏も書いておられる。

 

「都区部にいなくても仕事ができるなら、都市圏への人の流入は今後も増えないかもしれない」というのだ。

 

進められているワクチン接種の効果が現れて、コロナが収束したとしても、「働き方改革はそもそも業務の効率化が主目的だった」から、リモートワークでもよいとなれば、「東京の人口動態を左右する」かもしれない。

 

東京という刺激に溢れた街であるからこそ良い、という考え方もできるかもしれないし、もっとワーク・ライフ・バランスを考えて暮らしたい、という人もいるだろう。

 

それこそ、1人ひとりの考え方・生き方の問題であり、個人差の大きなものだと思う。大げさに言えば、〝あなたにとって仕事とは何ですか〟という問い掛けそのものである。

 

現在、全国の各地で、こうした問いへの答えを求めて、若い人たちによる色々な試みや胎動が始まっていることも、様々な情報媒体で目にすることもある。

 

人口の社会的な変化とは、つまるところ〝生き方の選択の集合〟でしかない。今回の沖氏の記事が、そのことをよく表していて面白いと思った次第である。