補聴器を買おうか止めようかと思案をしていたが、結局、昨日アマゾンから購入することにして、午前中に購入の手続きをしたら、今日の午前中には早くも商品が届いた。
(購入した耳穴用の補聴器)
それで、3日前にお店を訪問して相談し、補聴器の現物をお借りしていた販売店に、その補聴器の返却と、購入に至った報告に出掛けてきた。
お借りしていた補聴器と、購入したものはほぼ同じサイズで、使用する電池の型式やスイッチの入れ方まで一緒である。だから、購入したものも違和感なく使用開始できた。
販売店にはこの事情を丁寧に報告した上で、今回は誠に申し訳ないと謝ったのだが、店の方は〝むしろ他社製品に関する貴重な情報がいただけた〟と言ってくれた。
(借りていたもの)
それで少し気分的には楽になった。それにしても、アマゾンで購入したものは、私に合うように調整するのに、インターネットを介して行う方式を採用していた。
だから私も、いろいろと苦心しながらだったけれど、何とか自分仕様に調整ができたので、それを装着したまま店に出掛けて、その実物も見せた。
その時、お店の担当者の方から実に意味深長な言葉を聞くことになった。「こうした営業のやり方も、もうしばらくすれば無理になるでしょうね」と、小さな声で言われたのだ。
お借りしていたものは、ネット通販だとまったく同じものが2万5千円余りで売られているが、この店で購入すると2倍近い価格になる。
その人にあった調整とするために要する費用や、その後の使用中に発生するトラブルへの長い保証期間の設定など、それなりに高く設定している理由はある。
しかしネットで売られているものが半額程度となれば、そちらを選ぶ人も出て来るだろう。ところが借りていた機種は、自分で調整できない(しにくい)製品仕様のようだった。
だからこそネット通販で入手しても、その後の調整どうするかで、販売店の出る幕もあるということらしい。
だが私が購入した補聴器は、最初からインターネット経由でソフトをダウンロードし、自分で調整することを前提に販売されていた。
しかも性能的には借りたものより少しだが進化して、通販価格で言えば借りたものよりも1万数千円高めの設定になっていた。
それでも、借りていたタイプのものを店で購入して、調整してもらうよりは1万円ほどは安くなる。
ところで、現状で補聴器を必要とするのは、やはり高齢者が多いだろう。そして、その方々は自分がインターネット経由で調整するのが難しい場合が多いだろう。
そこにこそ、こうした販売店の存在意義がある。いやこれまでは、そこに存在意義が〝有った〟というべきかもしれない。
さらに言えば、例えば私がもっと耳が聞こえにくくなって、まさにオーダーメードでもっと強力な補聴器を作ってもらうなら、こうしたお店で注文しないとダメかもしれない。
しかしそうなれば、かなり少数の顧客になってしまうだろう。だから現状はともかくとして、5年、10年先を見通したなら、こうした営業形態が成立しにくいということだ。
だからこの店の販売担当の方から、「もうしばらくすれば無理になる」というつぶやきが漏れた。補聴器自体も徐々に進化するだろうし、調整方法もさらに簡単になって行くだろう。
もっと言えば、オーダーメードで強力な製品を必要とする顧客が相手となっても、それに見合った製品をインターネット経由で購入できるようになるかも知れない。
ましてや顧客に合わせた調整など、それこそAIが最も得意とする分野だと思う。多数のデータを取り込んで、そこから割り出せば、簡単にその人に合わせた調整ができるだろう。
なるほど、AIの普及とインターネットが簡単に使用できる条件が揃えば、この営業形態は消える可能性を持っているだろう。
そんな場合でも、なお存在するインターネット弱者に対して、どのような取り組みが可能になるのか。きっと〝出前調整〟というシステムになって行くのだろう。
初期設定のために出向くか、店舗を構えるかして、初期設定に係る費用や修理・メンテナンス費を受け取る、という〝販売業からサービス業態″へと変化することだろう。