2週間ほど前に、「サバンナ思考とマヨネーズ理論」という話をブログに書いた。
その時に「サバンナ思考」とは、「サバンナで生きている草食動物は、ボーっとしていたら肉食動物に襲われてしまう」から、生き残るためには「危機感を持ち、一つでも多くのことに気づき、すぐに行動すること」が求められる、という意味だと書いた。
つまり自分がいる地点に安住し、危機感を持たずにそこで停滞していれば、その間に研鑽を積んでいる他者に追い落とされてしまうことを、サバンナに生きる動物に喩えていた。
実は今日配信されていたダイヤモンド・オンライン誌に、マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラー教授が「企業が5年後も今と同じ経営をしていたら消えていく」と述べたと書かれていた。
これはコトラー教授が主宰しておられる、「ワールド・マーケティング・サミット(WMS)」という会合が今月初めにオンラインで開かれ、その場で講演された際に語られたそうだ。
この「WMS」は、「マーケティングを通してこれからのより良い世界を創造する」というビジョンを共有し、「マーケティングのアイデアやツールを探究するだけでなく、社会経済問題についてのソリューションを見出そうとする活動」だと、記事に紹介されていた。
コトラー教授は、「コロナ禍では、消費者心理にも『自宅の重要性に気づき、その居心地を意識するようになった』『気候変動、人種差別問題、選挙などに関心を高めている』といった変化」が起きたと述べたそうだ。
その結果、「新しい『消費者行動グループ(New Consumer Behavior Groups)』が出現している」という。
だからコトラー教授は、「短期間にモデルチェンジを繰り返して消費を喚起するといった若者向けのマーケティング手法は、彼らの批判の対象になりうる」と注意を促したそうだ。
それで「講演の終盤、コトラー教授は『今後は多くの国で、GDPだけでなく、人々の幸福度が指標として用いられるようになるでしょう』との見通し」を示したという。
その結果世界は、北欧型の「格差の解消をめざす『社会的資本主義』へ移行」していくだろうと述べたそうだ。
最後に、「物事は変わってゆくものであり、企業が5年後にも今と同じ経営をしていたら消えて」いくだろうと結ばれたということだった。
今回の新型コロナウィルスがもたらした出来事は、世界の多くの人たちが生活の方向を変えるきっかけとなり、結果的に「企業が5年後も今と同じ経営」をしているようでは、その企業は脱落せざるを得ないということだ。
まさにサバンナで生きる草食動物のように、常に危機感を持ってアンテナを立て、自分の周囲で変化が起これば、ただちに対応する素早い行動力が求められている。
とりわけ今回のコロナ禍は、〝まさか〟の連続のような状況になっている。それだけに、今までつちかってきた経験が役に立ちにくい状況でもある。
だからこそコトラー教授が述べたように、「人々の幸福度が指標」となる社会がやって来るのならば、〝幸福とはどんな状態なのか〟を深く考え、企業はそれに向かう取り組みを進める必要がある。
それを早く実体化し、行動に結び付けられた企業が5年後には生き延びているということだと思う。
いまこそ経営に哲学が必要だということを、コトラー教授はこの講演で訴えたかったのだと思う。〝幸福とは?〟という問いは、難しい問い掛けかもしれない。
しかし日々を暮している人たちの姿を真摯に見つめていれば、そこに解答が見えてくるような気もするのだが。