主語を相手側に置き替えること | がいちのぶろぐ

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主語を置き替えることで、見えて来るものが変わる、という文章と出会った。

 

今日配信されていたダイヤモンド・オンライン誌で、中野巧氏という方が書かれた「『人を動かすセールス文章』4つのコツ、読み手のハートを掴むには?」という記事だった。

 

人に何かの情報を届ける場合、専門的な内容になればなるほど、対象者は少数に限定されて行くが、届いた人には深く理解してもらうことができる。

 

そのかわり、多くの人には関係がないこととして無視されてしまう、という話から始まった。その通りだと思う。専門領域になればなるほど、その情報を求める人は少なくなる。

 

テレビのワイドショー番組で見かける、専門家がコメンテーターとして出演する場合などは、専門的な内容を噛み砕いて説明するために存在している。

 

もしもそのコメンテーターが、専門家同士で会話をしているつもりで話をすれば、それこそ視聴者からブーイングを浴びせられるだろう。何を言っているのかわからないと。

 

そうしたことを前提にして、中野氏はビジネスの場で「人を動かすセールス文章」の「コツ」について書かれていた。

 

売り手側は、自分たちの商品・サービスの「メリット」は良く知っている。だから、つい専門家同士で会話するような調子で、その「メリット」ばかりを述べ立てる。

 

これでは買い手である顧客側は、何を言っているのかわからない、という状態になってしまう。これが文章であれば〝心に響かない〟文章になる。

 

だから「ハートを掴む」文章にしようと思えば、〝顧客を主語〟にして考えることが良いという。つまり顧客にとっての「ベネフィット」を考えなさい、というのだ。

 

この記事で中野氏は、「メリットとベネフィットを明確に区別して考えることで、顧客の心に刺さる切り口が浮かび上がって」くると言われる。すなわち、以下の関係になる。

 

「◎メリット:商品のウリ・特徴・利点 ⇒ 商品・サービス(売り手)が主語

◎ベネフィット:メリットによってもたらされるよいこと(体験・変化・利益) ⇒ 顧客(買い手)が主語」

 

その結果、「世界一短いセールスメッセージ」は、「私は、商品・サービスを通じて『ターゲット(顧客)』に、『メリット(機能)』を提供します。その結果、顧客は、『ベネフィット(得)』を得ます」となる。

 

顧客に「メリット」を与えるという発想であれば、主語は「私=売り手」だけど、それは前の文章では前段だけで終わってしまっている。

 

大事なポイントは、後段の「その結果、顧客は、『ベネフィット(得)』を」得るという、「顧客=買い手」側が手に入れるものを明確にしないといけない、ということだ。

 

「メリット」のことは、売り手=提供する側はいくらでも書けたり、話せたりできるかもしれない。しかしそれだけでは、私には関係がないこととして、買い手側にスルーされるかもしれない。

 

顧客側にとってどのような「ベネフィット」が得られるのかという、顧客を主語として考えることが重要なポイントだと解説されていた。

 

そこで文章を書くときには、「『○○というメリットのおかげで、どういうベネフィットが得られるのか?』という質問」を、まず「自分に投げかけてみて」ほしいと言われる。

 

それによって、「『ベネフィット(得)』も自然と思いつく」ことができる、と書かれていた。確かに、一度自分が買い手の立場に立って文章を読み返してみれば、相手にどのように届くかわかって来るだろう。

 

私自身がこの間、同志社大学院の「ソーシャルイノベーション研究プロジェクト」のチームで「半径3キロの旅」というテーマについて考える際に、「お客はどんな人で、その人にどんなことが提供できるか」という考え方をしてきた。

 

 

だけどこの考え方は、今日の記事で言う「メリット」を中心に考えてしまっているように思えてきた。

 

そうではなくて、顧客が「半径3キロの旅」を通して、どんな「ベネフィット」を得ることができるのだろう、という視点から考えないといけないということだ。

 

中野氏は記事の最後を、「主語を『私(商品・サービス)』から『あなた(顧客)』に切り替えるだけで、新しい発想やアイデアが浮かんでくる」と結んでおられた。

 

この視点から、もう一度「半径3キロの旅」というテーマを考えてみる必要がありそうだ。