阿佐ヶ谷姉妹は「薄味の凄み」とは良い表現だと | がいちのぶろぐ

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昨夜、テレビ番組「歌ネタ王決定戦」が行われ、2017年にM-1でファイナリストになり、翌年には「歌ネタ王決定戦」でも決勝に残った、結成7年目の若手コンビ「さや香」が優勝した。

 

この「さや香」が決勝で見せたキレッキレのダンスは見事だった。若手のお笑い芸人にとって、こうしたコンテスト番組で決勝に残ればブレイクのきっかけになることが多い。

 

 

昨年のM-1チャンピオンの「ミルクボーイ」や、3位になった「ペコパ」の今年の大活躍をみれば、そんなことは当たり前過ぎるほどのことだろう。

 

 

そんな中で、今日のネットニュースに面白い記事が出ていた。「デイリー新潮」の記事から採った、冨士海ネコという方の「阿佐ヶ谷姉妹はなぜ愛される? 『ネタ』より『関係性』に萌える時代」という記事だった。

 

「阿佐ヶ谷姉妹」は、アラフィフの姉・渡邊江里子さんと妹・木村美穂さんという立場のお笑いコンビである。

 

 

 

記事では「阿佐ヶ谷姉妹の芸風やキャラも、濃いか薄いかといえば薄い。歌は必ずあるけれど、これといって代表的な持ちネタがあるわけではない。(中略)だからこそと言うべきか、今や二人は『上品』『癒やされる』と大人気」だと紹介されている。

 

ホントにおっしゃる通りだと思う。「濃いか薄いかといえば薄い」というか、バラエティ番組の中にいてもガツガツと前に出るようなタイプではない。だから「薄い」となる。

 

そして「瞬間的な大爆笑は起きない代わり、ずっと微笑んで見ていられる。面白さより、人の良さが印象として残るコンビ」だとも。

 

このコンビが、今なぜ受けているのかを考察した記事だったが、冨士海ネコさんによればそこに一つの時代相が見えて来るというのだ。

 

「最近テレビでよく見る面々は、コンビ内格差を売りにしないコンビばかり」だという。代表格となるコンビとして、「阿佐ヶ谷姉妹」の他に「千鳥」や「サンドウィッチマン」などの名前が挙げられていた。

 

こうしたコンビは、私も大好きなお笑い芸人さんたちである。ついでに言えば、浅草の舞台から出た「ナイツ」のお二人もそうだと思う。

 

こうしたコンビの特徴として、「視聴者がついつい見てしまう理由は、ネタよりも彼らの関係性にあるのではないか」と書かれている。

 

それは「『面白さ』の前に、『仲の良さ』が買われている。コンビ内の風通しの良さが、見ている側にも爽快感や安心感を与えてくれるから」だと解説されていた。

 

ただしこの「阿佐ヶ谷姉妹」は、女性芸人のトップを決める「THE W」で、2018年に優勝という実績もある実力派芸人でもある。さらに、必ず〝歌ネタ〟を交えるという点も特徴になっている。

 

 

 

そこを記事では、「歌の上手さを自負している本気の目つきと歌い方」という表現で、「ただのいい人ではない片鱗を見せる」と評価している。

 

こんな「阿佐ヶ谷姉妹」が、「確かな技術や主張の強さを、最終的には『上品な味』に仕上げるたたずまいは見事」だと絶賛されている。なかなか良い表現だと思った。

 

そして、「二人の印象は薄味」だけど、「これみよがしの自己主張をせず、調和の取れた味わいを作り出す」から、「疲れた時にしみる味」だとも。

 

つまり「阿佐ヶ谷姉妹」をひと言で表現するなら、「薄味の凄みを体現する」ということになる。「京料理しかり、選び抜かれた素材と細やかな技術が隠されているのが薄味の極致」だという。

 

面白い記事だった。「薄味の凄み」という表現は〝言い得て妙〟と言うべきだろう。「阿佐ヶ谷姉妹」の2人は、コンビ結成からでも13年になる。

 

姉・渡辺江里子さんは、〝それまで劇団にいた〟と別の番組で話していた。だから、芸歴という点では25年余りになるらしい。だから、けっして若手の〝ぽっと出〟ではない。

 

しかも自分たちのポジションをわきまえて、まさに「薄味の凄み」をたたえながら番組の脇役としてきっちりと存在している。

 

目立ちたいからつい前に出ようとする芸人が多い中で、こうした芸人がいてくれるだけでも、見ている方としてはホッコリとする。それがこのコンビの「凄み」ということになる。

 

なんとも面白い視点からの記事だった。コロナ禍という閉塞状況の中で、テレビに出ている芸人があまりにガツガツした印象だと、どうしても胃もたれする感じになってしまう。

 

その点「薄味の凄み」の中にある、じっくりとかみしめる〝味わい深さ〟という評価をしていた今日の記事は、この時代相を捉えた評価になっていたと思う。