ネット通販ですら足元が揺らぐ時代になるのか | がいちのぶろぐ

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この間の「巣籠り生活」で、ネット通販で購入したり、食事の宅配を頼むことが話題になっていた。そうした状況はあるけれど、その底流では微妙な変化が起き始めているらしい。

 

今日配信されていたダイヤモンド・オンライン誌で、その変化に関する〝力作〟の考察を読むことができた。

 

今枝昌宏氏という方が書いておられた「『ZOZO離れ』に『アパ直』、企業の脱プラットフォームが進むワケ」という寄稿である。例えば世界的なスポーツシューズメーカーの「ナイキ」が、アマゾンから離脱したらしい。

 

こうしたことが起こるのは、一つの大きな理由として「単純にプラットフォームによる課金負担」が大きいことがあるという。

 

これは、消費者にはわからないけれど、メーカーサイドとしては大問題だろう。だから、この課金負担を「ディスカウントに回せば、大きな集客力」を持つ、という考え方はよくわかる。

 

またネット通販が成長を続けていれば販売効果も大きいが、「成長が一段落すると(中略)考えていたほどのネットワーク効果は働かない」ということも有り得るだろう。

 

それ以上に問題と考えられるのは、「コーポレートブランディング」の問題だという。「多くの競合と一緒に並べられ、無残な比較コメントにさらされる」ということも起こる。

 

そうした状況の下で、現状は〝価格.com〟のように、同じ種類をまとめて比較するだけのサイトも現れてきた。いわゆる「プラットフォームのプラットフォーム」の出現である。

 

これによって、「事業者としては既存のプラットフォームをスキップして自社サイトへ顧客を流入させる道筋」ができてきた。

 

これまでの通販のように、「プラットフォームを介した取引」では、「顧客自身のプロファイルや行動、感想などについてのデータを収集することはできず、個別プロモーションを行うこと」もできなかった。

 

だがPCからスマホが中心になって来れば、「顧客データ収集の可能性が増大し、イベントに選択的に招待するといった個別プロモーションが可能」になってくる。

 

だから、ネット通販に頼らなくても良いと考える業界リーダー企業などでは、「プラットフォームからの離脱と垂直統合によりプラットフォームに支払っていたマージンがなくなる分」だけ、「商品の価格」を低下できるようになる。

 

だから、「市場シェアが高いほど垂直統合性」を上げる状態になって来ている。つまり、自前の卸売機能を持ったり、ネット販売を行ったりできるということだ。

 

ネット通販のためのノウハウとして、「オペレーションは初期的には重要」であったとしても、結局は「『リアルの機能』を握った者が勝てる」ということだ。

 

製造業という〝製品を作る機能〟がまずあって、それをいかに上手く販売するかというところで、ネット通販という〝一つの方法〟が編み出されてきた。

 

今度は、その〝ネット通販の大手〟という〝巨大仮想小売店〟が力を持ってきた。そうなると、購入パワーを武器に製造業がネット通販大手に支配されかねない状況になる。

 

初期段階こそ、〝ネット通販〟という小売システムを自前で持つことができなかった製造業も、現状は「プラットフォームのプラットフォーム」といった比較サイトまで現れたから、ネット通販の大手を通さなくてもネット販売できる道ができてきた。

 

こうして、あらためてネット通販の大手に縛られる状態から、自前で直接に消費者とつながり、プロモーションまで行えるような環境ができたということだ。

 

だからこれからは、「プラットフォーム機能を使った産業バリューチェーン全体の改良に移行」する段階になってきたという。

 

そんな中で、「誰が支配的な顧客接点を構築し、それを競争優位に結び付け」ることができるか、「予断はできない」現状だと結ばれていた。記事の全文は随分と長いものだった。

 

だが要約すれば、これまでアマゾンや楽天といった〝ネット通販の大手〟が担っていたネット通販分野を、大手企業であれば、何らかの方法で自前化することもできるようになってきている。

 

さらにネット通販企業が介在することで、これまで製造業は直接に購入者とつながれなかったけれど、このままでは製造業だけが辛い目に合いかねないから、そこを何とか乗り越えようとなって来ている。

 

だから、これから再び大手製造業とネット通販大手との間で、どちらが主導権を握るかという厳しい局面になりつつある、ということだ。

 

この情勢だと将来のネット通販は、自前でネット通販システムを構築できない中小企業が中心となることも考えられる、ということだ。

 

楽天やアマゾンが成長をしてきたこの25年間ほどの間には、製造業も随分と浮き沈みがあった。まさかと思われた大企業が立ち行かなくなり、買収されることも少なくなかった。

 

銀行もメガバンクに統合されていった。百貨店が冬の時代になり、総合スーパーが苦しむ時代になった。そして全盛を誇っているコンビニ業界も、決して先行きは安閑としていられる状態ではない。

 

何がこれからの時代を勝ち抜くための決め手になるかすらわからない時に、コロナ禍でいよいよ経済全体に不透明感が漂っている。

 

ネット通販という、このウィズ・コロナ時代の寵児となっている事業ですら、その足元が揺らぎ始めることも起こり得るのだ。事業を行う上では難しい時代だと思う。