観光ヘイトを招いてディスられるだけだろう | がいちのぶろぐ

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今日は良い記事と出会った。ダイヤモンド・オンライン誌に掲載されていた、ノンフィクションライターの窪田順生氏の「『Go Toキャンペーン』は観光ヘイトを招くだけ、旅行復活の方策は他にある」という記事である。

 

それこそ全文を〝丸パクリ〟したいほどだが、要約を転載させていただく。

 

記事で窪田氏が主張しておられたのは、「全国規模のキャンペーンを強行しても、(中略)観光客への『ヘイト』が盛り上がるだけで、長期的に見るとマイナスの効果しか期待できない」ということである。

 

Go Toキャンペーン」を強行すれば、「得られる経済効果より『観光客が感染を拡大する』というネガティブなコンセンサスを社会に定着させるという『副作用』の方が、はるかに大きくなってしまう」とも。

 

「そうなってしまったら、観光業へのダメージは計り知れない」ということは、ホントに誰でもすぐにわかることだ。

 

 

 

ここで窪田氏は過去の出来事を振り返って、「コレラみやげ」という言葉を紹介しておられた。1970年代から80年代に海外旅行に出掛けた人が、訪問先でコレラに感染し、帰国後周辺に広く感染を生じさせたという出来事である。

 

「自分勝手な観光客が、コレラを広めている」という評価になった。「それが『観光ヘイト』のムードを醸成して」、その時期には「『海外旅行控え』を促した可能性もある」と書かれている。

 

そういえば、当時は連日、新聞などにこれら感染の記事が載っていたことを思い出した。

 

だから、「歴史の教訓を踏まえれば、『Go Toトラベルキャンペーン』というものが観光業を元気にするどころか、差別や偏見を助長させてしまう『悪手』という結論に到達せざるを得ない」と述べておられる。

 

Go Toトラベルキャンペーン」が実施されれば、「観光地に『コロナみやげ』をバラ撒くのは目に見えている」から、「日本中に『観光客が感染を拡大する』というコンセンサスをつくりだす、ネガティブキャンペーンをやっているようなもの」だと言われる。

 

だからこのブログでも書いたけれど、星野リゾートの星野佳路氏が言われる近場の旅行「マイクロツーリズム」が正しいと、窪田氏も考えておられる。

 

 

(「理念と経営」誌に掲載された星野氏の意見)

 

〝コレラ騒動〟の時には、あえて海外旅行へ出掛けなくてもということで、「安・近・短」の旅行である国内旅行が増えたという、〝歴史的な事実〟もあるということだった。

 

そして窪田氏は、「『観光』は極めてレジリエンス力(注;打たれ強さ・しなやかさ)の高い産業で、(中略)ガクンと落ち込むことがあっても、時間が経過すれば持ち直す」とも。

 

人間にとって「『遠くに行きたい』『異文化を見たい』というのは普遍的な欲求」だからと説明しておられる。私もその通りだと思う。

 

だからあえて今、「『Go Toトラベルキャンペーン』などというバラまきをしなくても」良いのではないかと言われている。お説ごもっともだと思う。

 

「ヘイトが溢れるムードの中で、無理に遠くに行かせてトラブルが多発すれば」、それこそ観光業は一時の収入と引き換えに、その後は大変なダメージを被ることになるだろう。

 

だから窪田氏は、「まずは身近な場所を観光することから盛り上げるなど、丁寧に話を進めるべきではないのか」と結んでおられた。まさにその通りだと思う。これほど明々白々なことを、政府の関係者はなぜわかろうとしないのだろう。

 

専門家会議から分科会に移行した、政府のサポート機関のトップに就任された尾身・分科会長は、今日も「旅行では感染しない」という趣旨の発言をされたらしい。当たり前だろう。

 

「旅行(という〝行為〟)では感染しない」のではなく、旅行に行く〝人間〟が仮に無症状でも感染者だったら、その人間が宿泊施設などの従業員に感染させ、そこから、今まで感染者が少なかった地域に集団感染を引き起こしかねない、ということだ。

 

もし「旅行では感染しない」というのであれば、すでに各地から東京に出張したり、出掛けたりして感染している人がいることを、尾身氏はどのように説明するのだろうか。

 

〝それは、その人が会食したり会話したりしたから〟だとでも言うのだろうか。旅行だって出張だって、人の行動は同じになる。時には、会食や飲みに出掛けることもあるだろう。

 

旅行に行ったとしても、サッと目的の観光地を回ったら、後はひたすら旅館に籠って、温泉に入る以外は、テレビを見ているだけ?全員が、必ずそうするだろうと期待する?

 

大多数の人はそうするだろう、と期待できるかもしれない。でもたった一人が〝やらかしてしまった〟とすれば、結果はそれが全てになってしまう。それが窪田氏の言われる「ヘイト」の気分の蔓延なのだから。

 

国土交通省は明日にも結論を出すということだが、なお正面突破して実施するとなれば、青森県むつ市の市長がおっしゃるように、観光地側が逆に観光スポットを閉鎖して観光できなくするという〝荒技〟も視野に入れなければならないかも知れない。

 

 

(青森県むつ市の風景)

 

なぜ今なのか。なぜ全国一斉なのか。なぜ観光産業なのか。他にも困っている業界は少なくないし、宿泊施設と言っても、外国人観光客が多かったゲストハウスなどは恩恵を受けない。

 

こんなゴリ押しの政策は「アベノマスク」に次いで、窪田氏も書いておられるように、「Go Toトラブルキャンペーン」として、「人々にディスられる」のが〝関の山〟だろう。