アフター・コロナの時代の観光が話題に | がいちのぶろぐ

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昨日の夕方に放送された報道番組「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ系列)で、アフター・コロナの時代を迎える中での『近場観光』のあり方を特集していた。

 

 

 

その中味自体は掘り下げ方も浅ければ、中味も通り一遍と言ってもいいレベルだったけれど、終わりの部分で星野リゾート代表の星野佳路氏がリモート出演され、インタビューに答えておられた。

 

以前このブログで、「理念と経営」6月号の「朝の来ない夜はない」という巻頭特別企画において、星野氏が『マイクロ・ツーリズム』という概念を提唱されていることを紹介した。

 

 

 

昨日も星野氏は、国内観光客の消費金額が観光消費全体の8割近くを占めていることを述べた後で、自身が考えている「マイクロ・ツーリズム」のことを話された。

 

司会で聞き手の福澤朗アナウンサーは、現状で観光関連産業が抱える問題点や、星野氏の言われている意味を深めようとせず、時間通りに話の進行をしていたのは残念だったが。

 

それがこのアナウンサー個人の能力の限界なのか、それとも番組の作り手側の意図として、通り一遍の話を並べて終わり、ということだったのかは知るよしもない。

 

ただ星野氏が言わんとしていること、すなわち「マイクロ・ツーリズム」の重要性を、制作サイドが今ひとつわかっていないことだけは、番組を見ているこちらにはっきりと伝わってきた。

 

以前のブログにも書いたけれど、外国人観光客(インバウンド)が急激に増えたが、その見かけの〝派手さ〟から、私たちはインバウンドの消費金額が大きいという印象を持ってしまいがちである。

 

だが実際には、観光関連消費金額の半分あまりは国内宿泊旅行客の消費であり、国内日帰り観光客の消費金額を合わせると、総額の4分の3以上を占めている。

 

それに対して、インバウンド消費金額は2割ほどである。このように観光消費の主体となっているのは、あくまでも国内の宿泊旅行客ということなのだ。

 

ここを〝勘違い〟してはいけないのである。この間は、単にインバウンド需要がほぼゼロになっただけではなく、国内旅行客も自粛によって移動がほぼなくなっていた。

 

この先アフター・コロナの時期になっても、外国からの訪日客が急に元に戻ることはあり得ないだろう。だからといって、国内の移動も戻らないのかと言えば、それはあり得ない。

 

まずはビジネスの移動があり得るだろう。いくらリモート・ワーク、リモート会議が進展したと言っても、やはり、やむを得ずビジネスのために国内移動することはあり得る。

 

また13日付の毎日新聞夕刊には、19日に県境をまたぐ移動の自粛が全面解除されるため、京都市は都道府県・政令市宛てに、京都への修学旅行の実施を依頼する文書を送付したと掲載されていた。

 

 

 

記事によれば、京都市には年間100万人もの修学旅行生が訪れているという。これだけでも、ざっと考えて100億円程度の観光消費が見込めることになるから、京都市も全国に向けて発信したのだろう。

 

記事では、京都市も徹底した感染予防策・医療体制だけでなく、修学旅行生が文化を体験できる場を設けることも検討している、となっていた。

 

一方、「理念と経営」の記事では、星野氏が考える「マイクロ・ツーリズム」は、地域の人こそが自分たちの地域の再発見のために、〝近場〟へ旅行することを提唱されている。

 

 

(「理念と経営」6月号より)

 

星野氏は、この先「観光事業は近くから戻ってくる」と考えておられる。そしてこれは「地域の人たちがその地域の魅力を再発見する、とても良い機会」だと捉えている。

 

その結果、地域の人同士が出会うことで「地域のネットワークが生まれ」、そのネットワークが「次のコラボレーションにつながる」と言われる。

 

このように、国内での旅行客の姿をもっと多様に捉えることで、観光のあり方、ツーリズムの今後への取り組み姿勢が変わって来るだろう。

 

少なくとも〝近場での宿泊〟という、これまであまり考えて来なかった旅行をすれば、今までとは異なったかたちで旅行客が地域と出会うことになる。知っていたはずのことを、あらためて発見し直すということだ。

 

アフター・コロナの時代になって何かが変わるとすれば、こうした〝人と人との関係性〟が変化することも十分に有り得ることだと思う。

 

私自身も、そのあたりを考えるヒントとして、これからの観光地のあり方のようなものをもう少し考えてみたいと思っている。