東京一極集中の是正は無理なのだろう | がいちのぶろぐ

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東洋経済オンライン誌に面白い記事が掲載されていた。「止まらない『東京一極集中』に見る強烈リスク」と題された、山田稔氏というジャーナリストが書かれた記事である。

 

内容は東京にどれほど一極集中が進んでいるかを、人口増減や鉄道の混雑率、物価比較などの統計に基づいて書かれた記事だった。

 

もちろん今回のウィルス騒動は、現状でも東京がきわめて厳しい状況に置かれているけれど、地震や洪水などの災害が起こった場合にも過密による影響は大きい。

 

数年前には「地方消滅」論が話題となったが、その後も東京への人口集中が進み、この先は、首都圏と大阪府や愛知県などの限られた地域以外は、すべて消滅の危機にあると言っても良いくらいではないだろうか。

 

 

今回読んだ記事では、首都圏の東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県の人口は約3677万人で、実に日本全体の約3割になっているという。

 

しかも、「20191年間に東京都内への転入者は466849人、転出者は383867人で82982人の転入超過」となり、もちろん全国でもトップだった。

 

さらに、「前年が79844人の転入超過だったから、一極集中の加速が止まらない」とも書かれていた。というよりも、他のほとんどの地域は転出超過になっているはずだ。

 

しかも東京都の常住人口は1395万人だが、「昼間人口はさらに膨らんで1592万人にもなる(2015年国勢調査=常住人口は1352万人)。昼夜間人口比率(常住人口100人当たりの昼間人口の割合)117.8」で、「区部は129.8」に達している。

 

簡単に言えば、東京23区内に住んでいる人に対して、昼間つまり仕事の時間帯にはその1.3倍がいることになる。増加した3割は23区の外部からやって来ている。

 

「他県から都内に通勤、通学している人は約290万人。都内に住む通勤、通学者(679万人)を合わせると約970万人が毎日何らかの形で移動している」とも書かれていた。

 

こんな超過密な状況だから、「国土交通省の都市鉄道の混雑率調査(2018年度)」によると、「主要区間の平均混雑率は東京圏163%」にも達するという。

 

これは三大都市圏の、残る「大阪圏126%、名古屋圏132%」と比較しても、異様に突出している。

 

これでは混雑による通勤地獄は当たり前だけれど、今回のウィルス騒動でもなお通勤しなければならない人には、本当に通勤そのものが地獄のようなものだろう。

 

 

 

その上に、東京の物価は高い。「小売物価統計調査(構造編)2018年によると、都道府県別の物価水準の総合指数が最も高いのは東京都で104.4。最も低い宮崎県は96.0と比較して8.4ポイントの差」があるということだ。

 

中でも「物価が最も高いのは住居費。東京都の指数はなんと133.0とけた違いに高い。最も低い愛媛県は82.7だから、その差はなんと約50ポイント」になっているという。

 

とは言え、所得がそれに応じて高ければ、物価高でも生活レベルは他の場所と変わらないことになるけれど、「1世帯当たり1カ月間の収入と支出(勤労者世帯)の可処分所得全国平均は455125円。東京都区部は519217円で全国5位」だったそうだ。

 

東京都は全国平均の1.14倍の可処分所得があるので、これだけをみれば住居費の高い分くらいが辛いのか、という程度にも思える。ただし、東京都には高収入の人も多いから、平均値で話してもあまり意味がないかもしれない。

 

それでも東京へ行きたい、東京で暮らしたいという若い人も少なくない。テレビのバラエティ番組の「幸せ!ボンビーガール」では、毎週のように、上京する若い女性の〝住む部屋探し〟の密着取材を放送している。

 

このテレビ番組の事例だけでは、データという意味合いは持たないのはわかっているけれど、その内容からうかがえるのは、東京に行かないと仕事や通学ができない、という〝切実感〟から東京に住むのではない場合が多いことだ。

 

例えば専門学校に進学するから東京へ行くという場合でも、東京以外は、他の大都市圏にすらその種の専門学校はないのか、ということになる。

 

しかも放送の中では、1ルームの家賃が6~7万円だけど、これからアルバイトを探して自活するなどというケースもあった。

 

 

 

たしかに東京のアルバイトの平均時給は1100円あまりで、他の地域と比較すれば20%ほどは高かったと思う。

 

だが家賃を払って生活をして行くために、東京では仮に15万円が必要だとすれば、130時間以上はアルバイトをする必要がある。16時間勤務としても、ほぼ毎日出勤することになる。

 

つまり東京で、アルバイトで生活しながら大学や専門学校などへ行こうと思えば、通学以外に肉体を削る思いで働いて、やっとカツカツの生活ができるだけ、ということである。

 

これでは自分の時間など、とても持てる状況ではないということだ。もし体調が悪くて1週間でもアルバイトを休むことになれば、それだけで生活は破たんする。

 

こんなことは、ほんの少し計算すればわかりそうなものだけれど、〝それでも東京〟なのだろうか。

 

〝非正規切り〟や契約社員の〝雇止め〟という話が出るたびに、そこまで東京や首都圏以外には仕事の場がないのか、と思ってしまう。現実問題として、東京に行かなければ若い人たちの働く場がまったくないということなのだろうか。

 

私は、たまたま仕事の拠点が大阪だった。だけど、首都圏でなかったら仕事がない、とも思わなかった。札幌や福岡だって、このウィルス騒動までは元気だったし、名古屋だってそうだ。

 

こう考えて来ると、東京以外の〝大都市圏〟であることと、〝東京〟であることの差とは、とりわけ若い人たちにとってどんな意味があるのだろうか。

 

今回読んだ記事でも、「収束が見えないコロナショックは、超過密都市・東京のハイリスクを顕在化させた。今は感染拡大を食い止めることが最優先だが、ポストコロナ時代に向けて、一極集中の是正は待ったなしの政策課題」だと結ばれていた。

 

もう耳に大きな〝タコ〟ができるほど聞き飽きた話だろう。その政策課題に対する答えも出ている。「地方創生」であり「首都機能の移転」なのだ。それが、どうしてもできない。

 

文部科学省のごく一部の、「文化庁」が京都に移転するだけでも大騒動になった。それ以外の首都機能が移転するとは、全く考えられない。

 

 

 

政府が本気になって東京一極集中を是正する意思がない以上、このコロナ騒動が終息しようと、いずれ東京が自壊するか、その他の地域が疲弊して崩壊するかだろう。

 

これでは、この国も先行きも明るくはないだろう。