多様性の時代とはこういうことだ | がいちのぶろぐ

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31日付で配信されていたダイヤモンド・オンライン誌で素晴らしい記事と出会った。テクノ・サービス グローバルセンターの伊藤薫さんという方が書いておられた記事である。

 

「外国人社員の不満・悩みからわかった!日本人上司に持ってほしい配慮」と題されていた。私が関わっている『定住外国人支援』というテーマと深く関わる内容だった。

 

 

 

以下に、伊藤氏の文章を引用しながら、その骨子を紹介したいと思う。

 

「彼ら(注;伊藤氏の外国人の部下)は私たちが思いもしない瞬間に言葉の壁にぶつかっている」という。これは「難易度の高い表現を習得していないだけで、やさしい表現に改めれば通じるケースは意外に多い」と説明されている。

 

私たちが実施している『やさしい日本語ワークショップ』は、日本人の側が、まさにこのことを理解し習得してもらいたい、ということで行っている。

 

「相手(記事では伊藤氏の部下の外国人)が自身の母国語と異なる言語でコミュニケーションをしてくれている」ことに対して、「話し手(記事なら伊藤氏)がどれだけ配慮できるか」ということになる。

 

私たちも日常で外国人が日本語を話せば、つい『日本語がお上手ですね』という言葉を言ってしまう。そういうことなのだ。相手は〝外国語〟を話していることを忘れてはいけない。

 

伊藤氏の職場で「イングリッシュフライデー」を始めたときに、「外国語を話す立場になると、部下の会話についていけない」と、伊藤氏も痛感したという。

 

だから伊藤氏は、「関係代名詞を使った文章が私(伊藤氏)には難しい。ゆっくり、短く区切って話してほしい」と頼んでいるそうだ。「それは彼らが日本語で会話するときも同じ気持ち」だと述べておられる。

 

 

「相手の日本語レベルに合わせることでコミュニケーションの問題はかなり解決」できるという。だからこそ、『やさしい日本語』という考え方が重要だと思う。

 

その例として、「『立入禁止』ではなく『ここに 入っては いけません』、『土足厳禁』ではなく『ここで くつを ぬぎましょう』」と書けば良いと、「ちょっとした工夫で言葉の壁は乗り越えられ」ることを示しておられた。

 

これがとても大切なポイントなのだ。私たちにはごく当たり前の日常用語であっても、外国人にすればとても難しい表現になることがある。さらに〝漢字〟となれば文字も難しい。

 

つまり、「相手に確実に伝わるよう明示する、すなわち話し手の責任が大きく問われるのがグローバルスタンダード」だと指摘しておられた。「暗黙の了解」ではなく、明確に言いたいことを言う、ということだ。

 

 

 

多国籍の人間が一緒にいる場合に、何かの共通言語を決めていたとしても、その言語の習熟度合いは様々なレベルになる。だからわかりやすく、はっきりとした表現が求められる。

 

伊藤氏の職場では、「言葉を積み重ねることが相互理解の土台」になるという考え方から、外国人の部下の方は「業務中の会話が日本人より圧倒的に多い」と書いておられる。

 

外国人を雇用した場合に生じる「企業からの懐疑的な声も、課題の根源はコミュニケーション不全にあること。それを解消するには、まずマネジメント側が変わる必要」があるという指摘だった。

 

伊藤氏は続けて、「マネジメント変革は、外国人を部下に迎えるときだけの特別なものではない」とも言っておられる。

 

「育児や介護と仕事を両立する人たち、6070代のシニア層など、1つの職場にさまざまな人が集まる多様性の時代」だから、今後はますます「異なる価値観や事情を持ち、働き方も多様化」して行くと述べられる。

 

 

 

そうであれば「異なる価値観を持つのだから、理解できないことがあって当然」だし、「壁自体はなくすことはできない」かもしれないけれど、「違いを認め合い、尊重することで壁を低くすることはできる」と結んでおられた。

 

ビジネスマンとして伊藤氏は、「変化の激しい時代だからこそ、いろんな人の力を借りながら変化への対応力を上げておくこと。それが、これからの強い組織に必要な条件」だと、多様性の時代のマネジメントのあり方を示しておられた。

 

その通りだと思う。私は伊藤氏のこの『卓見』に頭が下がる思いだった。〝多様性の時代〟というテーマの本質がここに示されているということだ。