都道府県「生活満足度」ランキングが出ていた | がいちのぶろぐ

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良い天気になった。土曜日は久し振りに本降りの雨だった。昨日は晴れ空が戻り、今日は暖かな日射しが注ぐ好天だ。三寒四温というか、周期的に天気が変わる春の空になったようだ。

 

ところで少し前になるが、先週初めに配信されていた「ダイヤモンド・オンライン」誌に、「都道府県『生活満足度』ランキング【2019】」が紹介されていた。

 

これは「ブランド総合研究所」が全国でアンケート調査を行った結果ということだった。

 

そこで記事では、「上位と下位の都道府県には、それぞれどんな特徴があるのだろうか」として、次のように書かれていた。

 

「上位には、千葉や埼玉、兵庫、滋賀、京都のような大都市圏にある県、あるいは名古屋市と福岡市のような大都市を抱える愛知県と福岡県がランクインした」。

 

 

 

「一方の40位以降には、東北地方の4県(秋田県47位、福島県41位、岩手県44位、青森県46位)が入り、(中略)東北地方は厳しい結果になっている」ということだった。首都圏の核である東京都が28位、関西圏は大阪府が24位になっていた。

 

 

 

東京都と大阪府の周辺地域がズラッと上位に来て、核となる東京都・大阪府が真ん中あたりという結果だった。都道府県単位というくくりだから、ということもあるのだろう。

 

この記事の解説では、「生活への満足度には『電車やバスの路線廃止・減便』『病院・医療施設の不足』に関する住民の不満や悩みが大きな影響を与えている」と書かれていた。

 

 

(千葉県の中央部を走る「いすみ鉄道」)

 

確かに生活面での満足感として、〝移動のしやすさ〟や、健康面も含めた暮らしの〝安全・安心〟が大きく影響するのは当然だろう。

 

だから、下位に東北の各県が集中していたことについては、「東北地方は人口減少や過疎化にともなって、電車やバスの路線廃止・減便が相次いでいる」と指摘されていた。

 

「これは学生や高齢者にとっては喫緊の問題であると同時に、40代~50代にとっても近い将来の不安につながりやすい」ということだ。だから、生活して行く上で移動が不便になることは大きな問題となる。

 

そこで調査したブランド総合研究所は、「生活への満足度と相関が強かった社会の課題として挙げられるのが、『人口減少・過疎化』『商店街の疲弊・店舗の減少』『空き家の増加・ゴーストタウン化』『少子化』だ」と指摘していた。

 

「人口減少・過疎化」「少子化」⇒「空き家の増加・ゴーストタウン化」⇒「商店街の疲弊・店舗の減少」と、下りの一本道で〝らせん階段〟を下りているとも言える。

 

 

(日本の「原風景」といえる山間地の集落)

 

過疎化が進行すれば、ゴーストタウンになって行く。そうなれば、電車やバスも赤字になるから減少せざるを得ない。高齢者や学生にとっては、いよいよ移動が不便になる。

 

この課題を解決するには、「若年層を呼び込むことが大切」だということはわかる。だが「人口減少・過疎化」は、地元には農・林・水産業以外に仕事がないから、若年層がその土地を離れるということから起こってきた。

 

だから「若年層が増えれば、電車やバスの路線廃止や減便を免れたり、商店街が再び活性化して便利になったりする」と言われても、それを実践することが難しいのが現状だ。

 

若年層が増えることが、「高齢者にとってもメリットは大きい」とわかっていても、その解決方法が見出せないからこそ、現在の〝下り〟一本道の〝らせん階段〟を生んでいる。

 

辛い現実だと思う。現状は、農・林・水産業でも元気な場所は各地にそれぞれあるけれど、大筋で見れば夢が持てない職種になっているのだろう。

 

 

 

農業でも、会社を定年になったから、地元に戻って親の跡を継いで農業を始める、といった話を聞くことも少なくない。林業は需要を外国産材でまかなうので、国内の林業は疲弊して行く一方だ。

 

水産業は、元気になる要素も各地で芽生えかけているが、昨年はサンマが不漁だったように、養殖漁業か、魚種ごとのブランド化でなければ中々に厳しいとも言える。

 

このあたりをブランド総合研究所でも、「『農林水産業の衰退』『新産業・新市場の創出』『地域文化・芸術の消滅』という要素も、生活満足度と相関が高い」と解説していた。

 

結論として、「“地域らしさ”がなくなることも、生活満足度を下げる要素」だというけれど、「地域らしさ」はそこに暮らす人々が創り出すことであり、人がいなくなって行けば、「地域らしさ」も消えて行く。

 

 

 

なんとも、辛い調査結果だ。〝満足度が高い〟となっていた上位の府県だって、その府県の中では格差が生じている。

 

満足度が県としては1位になった千葉県なら、南部の房総半島の銚子市や鴨川市、2位の兵庫県なら北部・日本海側の豊岡市や、中部の養父市などは過疎化の進行が止まらない。

 

一時期は、〝都市の消滅〟が取りざたされていた。それが徐々に現実味を帯びてきている。過疎化の進行というけれど、もう〝限界集落〟ではなく、本当に限界市町村が生じてもおかしくない。

 

〝平成の大合併〟という形で限界が露わになるのを先送りしたけれど、それすら、もはや無理になるかもしれない。

 

鳥取県(42位)と島根県(45位)が満足度でも下位になっていた。両県を合わせても、人口はやっと100万人を超えるくらいなのだ。とはいえ県の合併となれば、そこに住む人にとって大変な問題になるだろう。

 

 

(鳥取砂丘)

 

やはり、30万人規模の基礎自治体と、道州制による広域行政という視点を持たないと、住民にとっての「暮らしの満足度」を高めることが益々困難になるだろう。

 

(出雲大社)

 

「暮らしの満足度」は、その大前提として「移動が自由にできること」や、医療・健康面も含めた「安全・安心の確保」が得られることだと思う。その次に、「職業の選択肢があること」だろう。

 

そう考えるならこの調査結果は、今置かれている〝現実〟がはっきりと浮き彫りにされている。むしろ、この現実からスタートすることを前提として、その地域で何が可能かを考える方がわかりやすい。

 

移動の足の確保はどうするか、とか、医療機関の消滅を防止する政策といったことだ。いや、行政はもう必死でやっていることだ。それを後押しするのが国の政策なのだ。

 

 

 

せめて、各地の特性を生かした「観光立地政策」くらいは、できるのではないだろうか。