ラグビー人気が止まることがないようだ。今日の午後、関西ローカルだと思うが、トップリーグのコベルコ・スティーラーズとサントリー・サンゴリアスの試合が民間放送で生中継された。
ラグビーの試合がテレビ中継されるのは、全日本選手権の決勝や大学選手権の決勝といった、「テッペン」を決める試合がNHKで放送されるくらいのものだった。
それが民間放送で流されるということは、それなりの視聴率が見込めるという判断があってのことだろう。もちろん神戸製鋼とサントリーの試合だから、番組のスポンサーも集めやすかったのかも知れない。
それにしても、リーグ戦は今月始まったところで、まだ3戦目という序盤戦だ。昨年度の1位と2位の対戦だから、好カードであることは間違いないが、それでも生中継には正直言って驚いた。
神戸製鋼にはワールドカップで人気者となったPR・中島イシレリ選手やFB・山中亮平選手が、サントリーには日本の司令塔SO・田村優選手やワールドカップでいきなり3トライを挙げたWTB・松島幸太朗選手など、スターが揃っている。
だから、スタジアムの観客も満員という状態だった。そう言えば、先日行われた2部りーづの試合でも、近鉄ライナーズのLO・トンプソン・ルーク選手の引退試合で、3万5千人もの観衆が押し寄せていた。
「トモさん」という愛称で近鉄ファンや地元・東大阪市の人から愛されてきたルーク選手は、4度もワールドカップに出場するなど、日本代表を支え続けてきた名選手だ。
だから、惜しまれながらの引退だけど、試合終了後には近鉄の全選手がトモさんの背番号4が描かれたTシャツ姿で、巨漢のトモさんを胴上げするシーンが、テレビニュースに流れていた。
少しウルッとするくらい、良い場面だった。今回のワールドカップは間違いなく混成ジャパンだった。半数近くが、国籍は別にして〝外国人″選手だった。
それが、流行語大賞にまでなった、あの「ワン・チーム」として桜のジャージで戦った。かつてニュージーランドのオールブラックスに、屈辱の大敗を喫した後、故・平尾誠二さんが中心になって、〝外国人″選手も含めた日本代表チームを作って行った。
トップリーグも創設された。「サンウルブス」として、南半球のトップチームで作るリーグ戦にも参加するようになった。
こうした強化策が実を結んで、日本代表チームが世界の強豪国に追いつこう、という位置にまで来た。しかし、高校ラグビーの参加校は、サッカーの参加校の10分の1に過ぎない、という現実もある。
世界のトップレベルの国々の代表チームと比べれば、体格差はまだ歴然としている。世界では、190cmで100kgクラスの体格の選手が、トップスピードでぶつかり合うのだ。
そこで通用するのは、まだ一握りのトップ選手だけということも否定できない。それでもこうして混成ジャパンが、「ワンチーム」となって見せてくれたワールドラップは画期的な出来事だった。
この人気を一過性のものにしないために、日本協会としても全力で取り組む必要があるだろう。次は東京オリンピックでの、7人制ラグビーの活躍に期待がかかる。
これからはサッカーでもラグビーでも、アジアのスポーツ大国・中国が強化策と取り組むだろう。それが「国威発揚」につながるから。そうなれば、日本もお祭り騒ぎではいられない。
ところで、今日の試合は大接戦になり、神戸製鋼が35対29でかろうじて逃げ切って勝利した。しかし大熱戦だった。スタジアムに詰めかけたお客さんも大満足だっただろう。
かつてラグビー界は、大学と社会人の優勝チーム同士が、日本一の座を懸けて戦うという時代が長く続いてきた。しかし、社会人チームの選手のプロ契約化が進行し、大学勢とはレベルがケタ違いに開いた。
今では、大学チームは日本選手権に参加すらできないほどの差になった。ここでもプロ化による、スポーツの〝コンテンツ″化が止まらない、という状況が見られる。