♪雪解け間近の~ 北の空に向かぁい
♪いい日~ 旅立ちー 夕焼けを探しぃに
山口百恵さんが歌って大ヒットした、谷村新司さん作詞の名曲だ。今はなき日本国有鉄道(国鉄)のキャンペーンソングだった。
この曲が世に出たのは、今から40年余り前の1978年のことだった。このころに、ようやく旅行に出ること、特に家族で旅行に出かけることが広まり始めたと思う。
海外旅行も少しずつ普及しはじめていた。新婚旅行にハワイへ行くことも、珍しくなくなったころだ。ただ、家族単位での旅行は、このころから根付き始めたように記憶している。
その時期に出たこの曲が、人々に旅への憧れを駆り立てることとなった、「歌は世に連れ。世は歌に連れ」などと言えば、もう笑われるかもしれないがその典型例だったと思う。
そして今では、海外から日本を訪れる人が昨年は3188万人と過去最高を更新し、この先も増まだえるだろうと予想されている。
ところが、国内の旅行需要はどうなのだろうか。もはや、旅行ということ自体は珍しいことでも何でもない。家族旅行も、ごく当たり前のことになった。
しかし若い人たちは、夏の海にも、冬のスキーなどにも出かけない。スキー場は、長野県の飯綱高原スキー場のように、お客が減ったことで閉鎖を決めるところも出てきている。
そして、国内の旅行の主役は高齢者に移っている。外国人観光客が急速に増加しているから、現状では、観光関連産業は一定の収益を確保できているだろう。
だが国内の旅行需要が縮小しているとすれば、観光関連産業も決して安閑とはしていられないだろう。外国人観光客が日本へ来ることには、確実な保証があるわけではない。
それぞれの国の政治情勢や経済変動によって、変化が起きることは十分に考えられることだから、それが顕著に現れたのが、昨年の韓国からの訪日客の減少だった。
昨年の夏以後、韓国からの訪日客はそれまでの半分以下に落ち込んでいるという。全体の4分の1を占めていた、韓国からの訪日客が激減したため、昨年の訪日客の伸びは2%あまりに留まった。
韓国からの観光客が多かった九州各地の観光地では、客数の減少に苦しんでいるところもあると聞く。こうしたことは、これからも起こり得ることだろう。
だから安定した集客源としての、国内旅行需要が重要になる。それが縮小を続けているのだとしたら、ちょっと寒くなるような話ではないだろうか。
今あらためて、国内の旅行客の需要開拓を考える必要があるのかも知れない。そのターゲットとなるのが、高齢者ならそれでも良いのではないだろうか。
そこにターゲットを絞るのなら、それなりのマーケティング戦略を考えることが必要になる。高齢者が旅行にどんなことを求めているのかを、今一度考えるべきだ。
こうしたことを真剣に考えず、とりあえず外国人観光客の増加にあぐらをかいていれば、そこに落とし穴が待っているかもしれない。
政府は今年の外国人観光客数を、4千万人になると掛け声をかけていた。それが、とても達成できない数字だという雰囲気になってきた。
〝夢よ、もう一度″ではないけれど、最初に書いた国鉄のキャンペーンから生まれたヒットソングのように、国内需要の掘り起こしのためのキャンペーンがあっても良いかも知れない。