京都市が、市内の大学に在籍している留学生と、地域住民との交流事業に対する補助金を制定しており、その募集案内が、私が関わっている「定住外国人支援」のNPO団体にも回ってきた。
(京都の大学/同志社大学)
私たちの活動目的とピッタリ合う補助金であり、当然ながらこれに応募しようということになった。ということで、団体内で「その他業務」の引受人(つまり、〝何でも屋″さん)である私が、企画書を考えることになった、らしい。
多分そうなるだろうと思っていたが、実は私の頭の中でずっと温めて来たテーマがある。そのアイデアが、ちょうどこの補助金の趣旨と一致するので、そのテーマで申請してみようと思っている。
)京都の大学/龍谷大学)
この補助金の申請に当たって、私が考えたことは、まず対象となる留学生たちにとって「新鮮味」があるテーマであること、である。
次に、それが留学生にとって「有用性」がある内容であること。最後に、地域住民の方々には、留学生たちの考えていることを、直接に聞く機会が得られることの3点だった。
留学生の中には、すでに数年間の日本(京都)暮らしで、日本語もよく理解し、生活面でも日本(京都)に馴染んでいる学生もいるが、その一方で、まだまだ日本語も難しく感じ、生活面でも不安感を感じている学生もいる。
(京都の大学/京大)
ただ、ある程度日本暮らしが長くなっていても、留学生にとって、やはり生活の中心は大学の中にあるため、町中で暮らす普通の「大人の日本人」との交流の機会はそれほど多くない。
特に東京とは異なって、京都の町中で暮らす場合には、古くからそこに住む大人が多いから、日本の暮らし方の「基層」というか、昔ながらの暮らし方のマナーやルールが、今もしっかりと生きていることが多い。
それが良いか・悪いかではなく、こうした生活のマナーやルールがなぜ存在するのかを留学生が知ることは、「多文化共生」という意味からも必要なことだと思っている。
東京に暮らすのであれば、アジアの他の国々の大都市で暮らすのと、それほど変わりがない暮らし方になる。だが、京都という町だからこそ、そこには「多文化共生」という視点で、生きた教材があると思う。
(出格子のある京町家)
だから、こうした暮らし方のマナーやルールを知ることは、とりわけ社会学・文化人類学や国際関係論などを学ぶ留学生には、実体験として直接に役立つことでもある。
さらに商店街の「町歩き」を通して、地域で暮らす人たちの実際の生活行動を観察し、そこで感じたことを、その商店街の方と直接に意見交換ができれば、地域の人たちにとっても、今まで気付いていなかったことを発見できる機会になる。
こうしたことから、全体的な企画案を練り上げているところである。そんな中でも、まず留学生たちに伝えたいことは、「京町家」と言われる家屋の構造の必然性である。
そこには、京都が古くから日本の〝都会″であった町だからこそ、家屋の作り方として発達してきた生活の知恵がぎっしりと詰まっている。
「うなぎの寝床」と称される細長い京町家が、どのように採光や通風に工夫しているか。また、壁が持つ意味や、階段箪笥という収納の知恵、「表の間」と「奥の間」の関係など、生活面の必然性から生まれた家屋構造となっている。
さらに町歩きでは、商店街での買い物がスーパーなどの場合と異なっていることの意味や、商店で顧客と商店側の接し方に見られる様々な工夫、といったことも、日本という国の文化的側面として、留学生に知っておいてほしいと思う。
可能なら、留学生たちが銭湯の入浴体験もできれば、とても楽しいだろうと思っている。こうしたことを、アイデアとしてだけでなく、予算も考慮した企画書としてまとめ上げたいと思う。