インサイト 意識の底を 探り見て | がいちのぶろぐ

がいちのぶろぐ

環境問題と経営の接点、中小企業の戦略やマーケティング活動,
観光・伝統産業関連などについて、「がいち」が考えたこと、思ったことを書きとめてゆきます。

時折りこのブログでも紹介しているが、経営誌「理念と経営」の5月号が送られてきた。これが、〝平成最後″の発行ということになる。

 

その5月号の特集が、「顧客のインサイトを掴め!」と題されていた。「インサイト」という言葉に馴染みがない方もあると思うが、日本語にすれば「内観」ということになって、余計にわからなくなる恐れもある。

 

 

 

このブログでは、顧客の「顕在化している要望=ニーズ」に対比させる形で、「顧客自身がまだ気づいていない欲求=ウォンツ」という言葉を用いてきた。この「ウォンツ」に相当する言葉だと思ってもらえばいいだろう。

 

特集の巻頭では、「インサイト」という言葉の説明のために、アップルのスティーブ・ジョブズの言葉を引用していた。

 

スティーブ・ジョブズの有名な言葉に、「人は、自分は何が欲しいのか形にして見せて貰うまでわからないものだ」というものがある。これがすなわち「インサイト」だということだ。

 

 

 

つまりその商品を目にした時に、「これだ、これが欲しかったのだ」と、膝を打って飛びつくような商品が現れる、ということを意味しているだろう。

 

この特集記事の冒頭でも、株式会社デコムの代表取締役・大松孝弘氏が、インタビューに答えて「人を動かす隠れた心理や無自覚な欲求である」と語っておられる。

 

つまり私が「ウォンツ」という言葉を使ってきたのを、「インサイト」と言い替えても、ほとんどそのままオーバーラップする。

 

人がまだ見たことも聞いたこともないから、そのことを自覚して知っているわけではないけれど、ある日それが形となって目の前にポンと置かれると、〝これだ″と即座に納得するようなコト・モノである。

 

しかも、一度それを目にしてしまったら、これまであった似たようなものが〝色あせて″見えるくらいに、衝撃を与える場合もある。

 

スティーブ・ジョブズが、スマートフォンである「iPhone」を世に問うた時には、今やガラケーと称されるようになってしまった従来型の「携帯電話」との違いを、理解できない人も大勢いたと思う。

 

しかし、電話機能も付いたポケットサイズの通信機器である〝パソコン″と、インターネット機能が多少付けられた〝携帯電話″とは、全く似て非なるものだった。

 

このように、改良の延長線上にイノベーションがあるのではなく、まったく別種のものを生み出すために何が必要なのかを考えるために、今回の「インサイト」という考え方が、語られているのである。

 

では「インサイト」はどうして獲得できるのか、ということになる。それがわからないから苦労しているのだ、という反論というか、ため息が聞こえてくるように思える。

 

その答えはまさに「インサイト」、すなわち「相手の内観」に存在している。顧客であったり、ターゲットであったりする、相手の生活行動の内部のどこかに、チクッと魚の小骨が突き刺さるように存在しているものらしい。

 

とりあえずは〝無自覚″に違いない。無自覚なんだけど、心理の深い底のところに〝さざ波″が立つように存在はしているということだ。

 

だから、消費者=購入者の行動を注意深く観察していると、何か〝ヒントが見える瞬間がある″かもしれない。もちろん、まったく〝無い″かもしれないが。

 

また日頃から、ターゲットと接触を重ねて意見交換を行うなど、「関係性=リレーションシップ」を深く作り上げていれば、ふとした拍子にその答えやヒントを、相手も気が付かないままに語っているかも知れない。

 

それが、私が使ってきた言葉では「ウォンツ」であり、この特集記事では「インサイト」と表現されているものの正体だということになる。

 

誰かの心の中に潜在的には、「あったらいいな」という形で存在しているかも知れないし、そうしたヒントの〝卵すらない″くらいのものかも知れない。

 

「理念と経営」誌の特集では、事例としてカジュアルウェアの「ワークマン」や、コ・ワーキングスペースなどが付いた新感覚のカプセルホテルを運営する「グローバルエージェンツ」、価格競争から脱してアイケア戦略に舵を切った「メガネスーパー」が取り上げられていた。

 

これらの事例では、例えば「ワークマン」はご存知の通り、「プロ仕様の品質」の仕事着にファッション性を持たせることで、購入者にとっては〝高価値″でありながら、それを〝低価格″で提供するという、今までになかったポジションを創り出した。

 

 

 

私自身は、ワークマンのテレビCMを初めてみた時から、この会社の製品のファンになっている。まだ購入もしていないにもかかわらず、である(近くに店舗がないので)。

 

私自身も体験から、建築現場などで着る仕事着は、堅牢で使い勝手が良い割に安価であることは知っていた。しかしデザイン面ではダサくて、とても街着=タウンウェアとしては使えなかった。

 

この課題を突き破り、考え方を変えてしまったのだ。あれば良いなと、誰かの心の奥に潜んでいたものが、実際に商品となって現れたということになる。

 

大工さんなどが着ていた、小物入れがたくさん付いたベストが、いつしか釣り用のベストになっていた。これは単に、すでにあるものを別の用途に転用したに過ぎない。

 

そうではなくて、ファッション性を高めた〝別のもの″を提供したのである。そこが、インサイトなのだ。伸縮性が高いとか、撥水性が高いといった仕事着の要素を〝活かした″新たなファッションアイテムなのだ。

 

今回の「理念と経営」誌の特集記事をじっくりと読んで、これをサービス産業である観光関連業に、どのように応用・展開できるかを考えてみたいと思っている。

 

ちなみに、「理念と経営」は書店販売形式ではないので、見本誌を希望される場合などは、以下の情報を参考にしていただきたい。

 

103-8790

東京都中央区日本橋浜町2-42-9 浜町中央ビル5

株式会社 コスモ教育出版 見本誌係

http://rinen-mg.co.jp

info2@rinen-mg.co.jp