「カタリーナ元大統領、深夜、散歩中に事故死❗️」そのニュースは速報で流れました。
カタリーナが認知症である事は、公表していなかった為、彼女の名誉の為に「徘徊」を「散歩」と差し替えての発表でした。
突然の死に、様々な憶測が飛び交いましたが、全国民、いえ、全世界中の人々が、その死を悼み厳粛な国葬が行われました。
追悼する参列者の行進は、後を絶たず永遠に続きました。
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カタリーナの遺体の首には、赤いマフラーが巻かれていました。
彼女は、ブレッドとお揃いになる様に2本作っていたのです。
もう一つの、カタリーナのベッドの上に置かれていた赤いマフラーには、手紙が添えられていました。
認知症だと診断された直後に、書いた物でした。
「愛するブレッドへ、
きちんと意識があるうちに、したためておこうとペンを取りました。
でも、何を書いて良いのか、思考が纏まりません。まさか、自分が認知症に罹るなんて想像だにしていなかったのです。
他人事と思っていた事が、我が身に起こり、受け止める事が出来ず、今とても動揺しています。
ただ、私が心配しているのは、貴方のお荷物になる、という事です。
ごめんなさい。
優しい貴方に「お荷物」という言葉を使う事自体、傷付けてしまいそうです。
でも、これから始まる私の介護は、恐らく「介護」という言葉の限界を超えた壮絶な物だと予想が付きます。
大切な貴方を、そんな目に遭わせてしまう自分が、情けなくて堪りません。
本当はね…、
貴方との営みが出来なくなった分を償う為に、貴方の老後の介護は、心を込めてさせて貰う積もりでした。
なのに…、
その願いすら叶わない私です。
本当に役に立たなくて、自分で自分が腹ただしいです。
許して下さい。
少しづつ新しい記憶から消えてしまうこの病気は、貴方の存在を知らなかった頃の私に戻すでしょう。
その時、私は貴方をいっぱい傷付けてしまうと思います。
でも、その姿を私だと思わないで下さい。それは今の私ではありません。
私の心と身体は、全て貴方の物です。
貴方と出逢って以来、他の人が私の心に1ミリでも入って来る事はありませんでした。
貴方以外の人は、この世から消えても良いと思う程、苦しい程、切ない程、貴方だけを愛しています。
来世でも、貴方を探し、また結婚したい、そう願っています。
私は、赤い糸でマフラーを編んで貴方に最期のプレゼントをします。
嫌でなかったら、そのマフラーをして、あの世にいる私に逢いに来て下さい。
私は、赤いマフラーを目印に貴方を探し出します。
貴方の優しい顔、笑った顔、匂い、仕草、全て記憶に留めておきたい。
どんなに記憶を失っても、貴方の事だけは忘れないでいたい。
でも…、
もし、私よりも若くて可愛い人が出来たら、私に遠慮せずに幸せになってね。
まあ、なかなか居ないと思うけどね。^ ^
沢山の幸せをありがとう。
愛するブレッドへ、
チャオ、チャオ、バンビーノ!
カタリーナより」
重くならない様に、敢えて明るく締めくくっているカタリーナでした。
が、もう一枚便箋が入っていました。
「私の遺体は、アントニオの墓の隣に埋葬して下さい。
そして、その隣の区画にブレッドが入って来てくれる事を願います」
カタリーナの意志を尊重し、アントニオの隣に埋葬しました。
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ
夏でも赤いマフラーをして、カタリーナの墓に毎日花を届けるブレッドの姿が、目撃される様になります。
その姿は、人々の涙を誘ったのですが、次第に異様な光景に映る様になります。
ブレッドはカタリーナ ロスから立ち直れず、鬱病になっていたのです。
つづく。
