マッタリア家での介護生活が始まりました。
生まれ育った家での生活は、カタリーナの病気にも良い影響を与えた様です。
もしかしたら、カタリーナの脳が、若い頃に戻ったと、錯覚を起こしたのかも知れません。
ホルモンの分泌が活性化したかの様に、話し方も、顔の表情も、肌艶も蘇り、若々しくなって行ったのです。
ただ、病状は、カタリーナの編み物の様に一進一退でした。
時々、カタリーナは、狂った様に、折角編んだマフラーを一気に解くのです。
しかし、それはマトモな時だったのです。呆けている時に間違えて編んだ箇所に気付いて、編み直していたのです。
認知症になっても、完璧を求める姿勢は変わりませんでした。
いえ、もしかしたら…、
完成に至らない様に、本能が解かせていたのかも知れません。
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それは、ブレッドが、カタリーナの入浴介助をしていた時でした。
ブレッドは、カタリーナの裸体に興奮していまい、思わず抱き締めたのです。
その途端、カタリーナが怯えた表情をしたのです。
ブレッドは、カタリーナを傷付けた事に後悔すると同時に、ブレッド自身も傷付きました。
まだ、あの事を忘れていないのか…、それとも、もう僕の事が分から無くなっているのか…、
更に、追い討ちを掛ける様な出来事が起こってしまいます。
カタリーナは、夜中になると屋敷の中を徘徊する様になったのです。
そして、いつも同じ部屋に入って行くのです。
ブレッド「部屋に戻ろう」
カタリーナ「迎えに来てくれたの?」子供の様に嬉しそうな表情を見せ、ブレッドに甘えてきます。
でも、その目は認知症になって以来、ブレッドに見せた事が無い目でした。
ブレッド(あの目は、僕に向けられたものでは無い…、多分…)
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•
ある夜、ブレッドは、何時もの様に徘徊するカタリーナの後を追っていました。
やはり、あの部屋に入りました。
そっと、ドアを開けると…、
カタリーナ「何処に行っていたの!探したのよ!もう何処にも行かないで!…、アントニオ!」
その部屋は、アントニオと始めて結ばれた部屋だったのです。
抱きついている相手は、カタリーナの脳内では、最初の夫アントニオになっていたのです。
認知症の介護は、ブレッドにとって残酷なものでした。
カタリーナの認知症は、更に悪化し、排泄行為にも問題を起こす様になってしまいました。
もう、ブレッドの事は記憶から失われていました。
ブレッドを平気でアントニオと呼び、娘のテレーザをママと呼ぶ様になりました。
そんなある日、再びブレッドが入浴介助をしていた時です。
カタリーナが、ブレッドに抱き付き、ブレッドの身体を愛し始めたのです。
ブレッドは、アントニオの身代わりでも嬉しかったのです。彼女を受け入れました。
カタリーナ「ブレッド、今迄、我慢させて御免なさい。本当は、私もこうしたかったの。ブレッド、愛してる」
何が起こったのでしょうか?
カタリーナが、以前の記憶を取り戻したのです。
ブレッドとカタリーナは、長い時を経て、やっと、一つに繋がりました。
しかし、それは…、
カタリーナの脳内で起きた、最期の奇跡だったのです。
つづく。
