やがて綺麗な蝶になるために -6ページ目

原油価格

なんと、135ドル/バレルになった。


商品相場のことはよく分からないが、感覚的にはこのスピードは異常じゃないかと思う。

ほとんどバブルの終局になっているのか、誰かが指摘していたけどどこかで情報のミスリーディングが発生しているのか、そんな風にしか思えなくもない。

 数年後には需要が供給を上回る、なんていうレポートが出ているんだけど、本当なんだろうか...。

それが本当だとしたら、人類がもっと真面目に代替燃料を考えるためのステップなんですかね?


何にしても、サブプラローンの話が多少落ち着いた(忘れ去られた)としても、原油高騰問題がある限り、まだまだリスク資産市場に何が起きても不思議じゃないだろうとは思っていますけど。

長期投資の疑問、その2

それでは、今度はインデックスについて。

つまり、TOPIXやNK225の指数などを長期投資する、ということですが、これはどういうことでしょうか?


 例えばNK225なんていうのは、その構成銘柄がそれなりの頻度で代わっている訳で、個別企業に対しての投資よりはリスクが軽減されているかもしれません。衰退していく企業は採用銘柄から外れていく訳ですし。

そういう意味では、日本という国全体に明るい未来が持てるのであれば、インデックスに投資するのは悪くない方法だと思います。誰でも出来るし、調査労力も千里眼も、もしかしたらそれほど必要ないかもしれません。


ということで、、大きな問題は、

 "日本の未来は明るいんですか?"

というところですね。


インデックス投資については、30年とか50年とかのスパンのリターンを持ち出して

 "年利8~10%"

みたいなリターンが確約されているかのような話がよくあるんですが、日本の事例をとれば、この長期投資というスパンの中には非常に高いGDP成長率だった時代が長く含まれているように思えます。

ちょいとググると、こんなのが出てきましたが(無断リンク失礼)、

 http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/4400.html

50年前、日本のGDP成長率は中国も真っ青だった訳ですね。

してみると、長期投資という指標を持ち出すと、1950年から1980年くらい、引き伸ばしても1990年くらいまでの寄与率が全体のパフォーマンスを引き上げてしまうと思うんですよね。それを織り込んで、前述のリターンになると思われる訳です。

それでも、今の時代からでも、インデックスの長期投資を信じるんですか?っていう話ですかね。

日本がアトラクティブで無くなればMSCIインデックスとかの比率も下がって、いわゆる"持たざるリスク"という側面の投資家の呼び込みも難しくなりますし、悩ましいところです。

 一方で、ポジティブな側面を考えると、今まではドメスティックなマーケットだけを見ていた大きな企業が世界に勝負にいって成功するかもよ、っていう話がありそうです。このような例として、どこかに資生堂やヤクルトが紹介されていましたが、つまりこういう企業がどんどん出てきて、利益の源泉を海外売り上げに求めて、これらのエース企業が指数構成銘柄となっていくならば、案外、インデックスへの投資は悪くないのかもしれません。

(それよりも、国内の個人消費を上げる方法を考えるほうが簡単かもしれませんが)


 まぁ少なくとも、このあたりの状況について何らかの自分なりのビジョンを持ち、かつNK225採用銘柄一覧なるものをじっくりと眺めてみて、そしてインデックスの長期投資というものを考えてみるとよいのではないかと思います。

 私はインデックスも、インデックスに近い動きをする投資信託も持っていますが、それらはあくまで海外債券・株式などとの組み合わせの中の一商品という風に考えているので、インデックスをじっと買い持ちして今後10年間くらいで安定的なリターンが生まれるとはあまり考えていません。そうなりゃ嬉しいんですが、現実問題としては、やっぱり、国民の所得が上がっていって、消費意欲がそれなりの水準をキープしていて、という内需の動きが見れないことには、なかなか難しいですよね...。

 歴史的に言えば、株式の投資リターンは長期国債のリターンを超えてくることになっているし、原理的にもそうなることは説得力があるような気もしますが、そもそも現状は超低金利が永遠と続いている訳です。だからこそ、益利回りから見て株式投資は魅力的だ、という考えもあるのでしょうが、どちらかというと、ある程度金利水準が引きあがっている状況でそれを主張しているほうが健全な気がします。

 "強いドルは国益"と散々主張している財務官がいますが、一方、日本は経済大国としてどうあるべきなのでしょうか?各政党が何を発しているのかきちんと調べてみることも、日本の将来を知る手がかりになるかもしれません。


長期投資の疑問、その1

Akiさんが自身のブログで長期投資について問題提起していました。

 AKIさんのコメント


まず第一に、正しいと思っていることを疑うっていうことは、一般的にかなり価値のあることなんじゃないかと私は思っているので、割安株のエントリ同様、このような切り口が結構好きです。

本に書いてあることを信じるのは割と簡単なのですが、でも、こういうときこそ、それを疑ってみることの方が、自分が考える力がつくんじゃないだろうかと思う訳です。そうやって考え抜いて得られた結論やそのプロセスは、うまくすれば近視眼的に、悪くても長期的にはその人の肥やしになるんじゃないかと思う訳です。



で、この

 "長期投資は儲かる"

という点に関して言えば、個別企業に関しては儲かる会社を買えば儲かるでしょう、というのが私の結論です。

屁の足しにもならん結論ですが、つまり、より遠い未来の予測が要求される訳ですから、その予測に足る何かを見つけ出さないといけないという意味です。それは少なくとも会計上の数字だけでは見えてこない筈で、要するに

 "これだ"

というシステマティックな方法論ははなかなか無い訳です。とても難しい作業ですね。

逆にそれがあるというならば、自分で会社を興せば良いし、経営者としての才覚が無いならベンチャーキャピタリストになればよい。その素晴らしい才能を投資家などという受動的な生き方で埋没させるのは、私みたいな千里眼の無い人間から見るとあまりに勿体無いことに思えます。


で、未来に永続して利益を産み出す源泉って何でしょうか?

・カリスマ経営者

・真似出来ないスキル

・ブランドイメージ

・シナジー効果

・企業力

・特許

・...

この分析は相当骨が折れます。

例えば、ある会社のある技術がどれほど優れていていて、どれほど参入障壁があって、その技術はどれほど未来でも陳腐化しないのか、どうすれば分かるのでしょうか?

こんなことは、その道の専門家ですら頭を抱えるのですから、たかが投資家がその本質を理解できるとは到底思えません。我々に出来ることは、せいぜいROICや利益率を見て、"何やら事業の質が高そうだ"と思い込むくらいです。しかし、それはある時点の"結果"であって、未来を信じるに足りる材料としては弱すぎます。

「分かることにしか投資しない」

というバフェットやリンチの言葉は有名ですが、個別企業の長期投資をやるためには、少なくともその企業の能力というのを多角的に分析する必要があると思います。分析するためには、当然、投資家自身がその分野のエキスパートじゃないといけません。

 貴方が不動産屋ならマンション事業を、半導体屋さんならNAND-Flashの行く末を、webアプリ屋ならweb2.0なるものの中のアプリケーションの真の強固さを、モジュール屋さんなら高密度実装の真の技術的優位性を、これらのことを少なくともそのあたりの投資家やアナリストの100倍以上は知っている筈です。そのあたりの自分の強み、つまり自分が"分かること"のエッジをあってそれを信じていれば、長期投資に値する企業は見つけられるかもしれないと思います。

 結局、バフェットは、コカコーラ、アメックス、ジレットなどの企業とそれを取り巻くアメリカ文化というものを足し合わせて、更に経営者の人間力を見抜く力とあわせて、誰もがうらやむような(=買ったら放置するだけ)長期投資で大成功していると思うのです(まぁ現実はバフェットの中でbuy and never sellな企業はごく少数だと思いますけど)。

 情報理論を勉強した人はシャノンという学者を知っていると思いますが、この歴史上の天才的な数学者は株式運用でもバフェットを上回るトラックレコードを出していると言います。そして彼のごく少数の銘柄で構成されたポートフォリオは、主にモトローラ、ヒューレットパッカード、テレダインなどのコンピュータ・情報関連企業で構成されていました。



 厳密には上記のような思考が個別銘柄の長期投資に対しての姿勢だと思うんですが、もっとザックリとして"希望的観測"というのも大いにアリだと思います。

 例えば、NK225に採用されているような企業って、現在でもその内部には沢山の無駄があると思うのですが、裏を返せば、無駄を許容していてもやっていけるような知力・体力・ブランド価値を持っていると思う訳です。

これはある意味では、日本の価値であり、底力であるとも思ったりします。すぐ不採算事業をレイオフして人も事業も皆サヨウナラということは現在でも欧米よりは全然少ないと思います。

GoogleやAmazonみたいな企業も、Steve JobsやJack Welchのようなカリスマもなかなか現れないかもしれませんが、それに匹敵するような"力"があるから日本のトップ企業は世界と戦えているのだと思います。これはもしかしたら、盛田さんや稲盛さんみたいな人とそれを支えてきた戦後の我々の先輩たちのDNAなのかもしれません( thanks to 諸先輩 )。

 ですので、日本に住んでいる我々日本人は、世界と真っ向から戦っている素晴らしい企業、例えば、トヨタ自動車、キヤノン、えーっとそれから、信越化学、ソニー、ファナック、コマツや村田製作所、こんな企業のDNAを信じて長期投資するっていうのはアリだと思います。

だって、これらの企業が世界市場で駆逐されるのだとしたら、30年後の日本経済なんて何も残されていないんじゃないの?って思いますから...。


まとめると、個別企業の長期投資で勝つには

 ・投資家自身の知恵が信じるに値する

 ・企業の知恵が信じるに値する

のいずれか、出来れば双方が必要になると私は考えています。

残念ながら今の私には前者のスキルがあまり無いので、長期投資というものに対しては後者のスタンスで挑んでいます。少しずつ前者のスキルも身につけたいと思うんですが、知識もさることながら、考えるという姿勢も不足しているようですね。;)

この1,2年はテクニカル投資にどっぷりだったので、最近は少し気分転換も兼ねて、こういうことに立ち返っていたりします。


相場とゼロ歳児と性別

ゼロ歳児クラスの小さい子供と接していると面白いものです。


・入力に対しての出力の統計情報を取る

・効果があると思われる方法を試す

・うまくいくと"しめしめ"と思う

・しかし、彼(彼女)に真意を確認できないので、因果律は不明のまま

・肝心なところでN匹目のドジョウはいなくなっている

・慌てふためき、己の無力さを知る


相場にそっくりですね(笑)。


ゼロ歳児と上手に接することが出来る女性は、案外、トレーダとしての資質も高いのかもしれません。

一方で、男性はとにもかくにも"理屈"が好きな傾向にあるので、不可解なもの(=相場)とは折り合いがつきにくい性別なのかもしれません。


そう考えると、例えば、相場参加者の男女比率がイーブンになったら、案外、ファットテール現象が無くなったりしないんですかね?

経済学における統計的アプローチでは、標本空間が男性主体であることについて何らかの問題提起をしていたりしないのかなぁ...。


バリュー株で勝つための【図解】「決算書&企業価値」分析ドリル

バリュー株で勝つための【図解】「決算書&企業価値」分析ドリル/角山 智
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カテゴリ:株式投資

レベル:中級者

点数:97点


*概要

タイトルの通り、投資家という視点で決算書をどのように見ればよいのかについて要点を整理している。多くは定量分析だが、定性分析の手法も少し紹介されている。

大きくて薄い、ということが特徴。



*良いところ

ものすごく良い本だと思う。角山さんの本は、視点がクリアで、そして要点が整理されていることが特徴でこの本以外のものも悪くないけど、この本は抜群に良い。

そして、最高に素晴らしいところが、

 "こうやれば儲かります"

ということがほとんど記載されていないことにある。

 個人投資家が個別銘柄で株式投資をやるのであれば、最低限ここに記載されている内容を理解して決算書を読めるレベルになってからでも遅くは無いのではないかと。

株式の個別銘柄投資をやるのであれば、教科書として最高にオススメの本です。


*悪いところ

無い、と思う。

強いて言うと、本の大きさだが、これは見易さとのトレードオフなので。

筆者は客観的な記述を淡々としていますので、力強い主観性を求めている人には向かないでしょう。

よって、決算書は投資家の視点としてはほとんど読めるし、WACCやROICといったものも全て分かっている人は、この本を買ってもあまり得るものは無いでしょう。

 つまり、"知識書"ではなくて、"教科書"です。

楽天球団に思うこと

私は野球ファンで、特に最近は楽天という球団がとても気になっています。



*球団発生の経緯

近鉄バッファローズとオリックスブルーウェーブの合併があり、基本的にはオリックスに行き損ねた選手で作られた球団が楽天です。例外が、確か岩隈と磯部。

つまり、リストラーズ、な訳です。


*野村監督

吹きすさぶサッチーブームの逆境の中で、野球史に残る偉大な人がこのリストラーズの監督を引き受けました。本当に野球が好きな人なんだと思います。


*田中のマー君

楽天からの一位指名を快く受け入れ、気持ち良さそうに野球をやっている。顔も無骨だし、ハートも熱いし、こんな選手が今の時代にもいるんだなぁと感じさせてくれる魅力を持つ野球選手。


*山崎武

かつての中日の4番にしてHR王。"松井君はこの先何度でも取れるだろうから、僕はなんとしてもタイトルが欲しい"という率直な台詞を聞いてから気になる選手でしたが、終わったと思われたオリックス時代を経て、昨年、そして今年の活躍は本当に素晴らしいです。中年の星ですね。


*岩隈

往年のパリーグのエース。気概を見せて楽天に移ったが、怪我にも泣かされてここ数年結果が出ず。今年は復調の気配あり。


*一場

不祥事により、相思相愛の巨人に行けず。


*高須

誰にも知られていない、得点圏打率一位男。


 楽天は本当に魅力あふれる登場人物で構成された、漫画でも描けないような魅力的なチームになっていると思います。それはまるで、"野球狂の詩"のメッツみたいなもんです。今年は何とかプレーオフに進出して、ぜひパリーグを盛り上げて欲しい!そして出来ることならば、パリーグの覇者となって日本中を盛り上げて欲しい!

今年は本当にその可能性がある年です。出来れば野村監督時代にそれを達成して欲しい。


さて、こんな楽天から我々投資家が学べることは、

「決して諦めるな!」

ですかね。

100人中100人が"駄目だ"と言っても、現実は必ず駄目になるとは限らないこと、そしてそのためには本人の努力と周囲(ファン)の支えが必要であること、などなど。

間違っても、楽天という上場会社の株式購入を推奨している訳ではありませんので、ご注意をば。


内閣支持率

 福田内閣の支持率が21%、政党比でも、民主党支持が自民党支持を上回っているそうな。

しかし上には上がいたもので、かつての森内閣の末期(スピードスケート選手を"水すまし"呼ばわりした伝説の人)は16%になったらしいですね。

って、すでに福田さんは森さんに近い評価を国民から得ているというのだから、冷静に考えてみるとすごいことですね。



 解散すると民主党政権になる感じですか、これは...。

今以上に生き生きとした管+鳩山コンビを見るのは心苦しいですが、相変わらず小沢に政権政党をゆだねたいというキモチも僅かながら私の中に残っているので難しいところです。

どっちにも入れたくない二つの党が二大政党を目指している(実際、そうなっている?)のでは、一国民感情としては困ったものです。


 株価的にはどうなんでしょうね?

民主党政権はポジティブにはならないでしょうが、福田政権のやっていることもネガティブなことが多いので、結局のところ、大同小異なのかもしれません。


ラリー・ウィリアムズの短期売買方法

ラリー・ウィリアムズの短期売買法―投資で生き残るための普遍の真理 (ウィザードブックシリーズ)/ラリー ウィリアムズ
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カテゴリ:投機、テクニカル、システム

レベル:上級者

点数:65点~95点


*概要

リアルマネーでの先物コンテストで1年で100倍にした伝説のトレーダ。

この本は、彼がこの信じられないパフォーマンスを達成するのに使った色々なテクニックを公開している(ということになっている)。

本人はシステムトレーダと言っているが、中身はシステムトレードらしいことはあまり書かれてなく、多くをエントリポイントの説明に費やしている。またチャートからボラリティまで、さまざまな視点で(脈略無く)色々なトピックが語られている。最後のほうはニュースレターの抜粋で、いわゆる精神論が語られている。



*良いところ

聖典...、なのだろうか?

 私自身はこの本の魔力に魅せられた(騙された)部分が多かれ少なかれあるのだけど、一般的にこの本がどのような評価を受けているか分からないし、今見てみるとそれほど良い内容だとも思わない..。

この本の良いところは、テクニカル投資家という類の種族はこうまでしてデータマイニング的なを試みをしている、ということを知れることにあるだろうと思う。そういう意味で、他の書籍もそうだけど、ラリーという人は飽くなき探究心を持っている人なんだろうと思う。

 ただ、間違っても、ここに書いてあることをいきなりそのままリアルマネーで実践するのは控えたほうがよいだろうと思う。アイディアそのものは株式市場単体でもうまく機能するものもあるだろうけど、何せ、"聖杯"が万が一あったとしても、そんなもの10,000円やそこいらの本で公開する馬鹿は世界中探してもいないとしたもので...。

 2,000円くらいで売られている酷いテクニカル投資やデイトレードの本に比べて多くの情報が埋め込まれているので、そういう本を5冊買うのだったら、これを一冊買ってみるのも良いだろうと思う。お金に余裕がある人も、買ってみるとよいだろうと思う。



*悪いところ

とにかく日本語訳が....。原文がどうだという以前で、日本語を普通に読んで、日本語として意味が分からない部分が多い。原著を読んでいないので分からないが、この書籍の値段には翻訳代金も含まれているのだろうから、この文章はプロの仕事として如何なものかなぁと思う。

 それと、ここで記載されている1万パーセントリターンの秘訣である資金管理方法だが、まずきちんと算術平均/幾何平均などのことを勉強してから実際に使うことにしましょう。さもないと、あっという間に一文無しの一歩手前まで行ってしまうでしょうから。



ピーター・リンチの株で勝つ

ピーター・リンチの株で勝つ―アマの知恵でプロを出し抜け/ピーター リンチ
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カテゴリ:株式投資、長期投資、バリュー投資

レベル:初級者

点数:90点


*概要

きっと、ウォーレンバフェットの次くらいに名前が出てくる伝説のファンドマネージャの超有名な書。個人投資家は機関投資家よりも優秀に振舞うことが出来る、ということを説明し、自身が信じる長期投資のことを漏れなく記載したもの。"株をやる人なら誰でも知っている本"のうちの一つだと思われる。

なお、記載内容の対象としているのは、もちろん米国の株式だけ。


*良いところ

まず堅苦しくない。そして、随所に笑いがこめられている。

無成長産業、つまらない会社名、自分が理解出来る業種、ニッチ産業、、などなど一般的に正しいと思われていることの逆にこそ株式投資のうまみがある、ということを説明している部分が多分この本のハイライトだろうと思う。

よくバリュー株投資の教祖の一人と言われているけど、指標を見比べてバリュエーションをどうこうというよりも、その企業の事業資質とその将来性を十分に推測して(自分が理解できるものだけを投資対象として)長期投資することを主眼としているので、バフェットに近いのだろうと思う。

それ以外にも、そこらかしこに金言が散りばめられていて、何度読み返しても面白いと思える本。金言を全て書き写す価値があると思う。

ところで、彼の運用していたマゼランファンドはファンドサイズが大きくなるにつれてインデックスと変わらない運用成績になっていったと聞くので、小型株が成長していくところを捕まえるのが上手な人だったのだろうと思う。



*悪いところ

この本を読むと、テンバガー=10倍株、というフレーズが頭にこびりついて、

「自分もいつかテンバガーを当ててやろう」

と思い始める、テンバガーバイアスが発生しやすい本である(自分はそうなった)。

テンバガーは結果に過ぎないのだが、それが少しでも目的となった時には、手痛いしっぺ返しがやってくると思われる(自分にはやってきた)。

 それと、まぁこれはどうしようも無いのだが、この本で説明されているのはあくまで"米国"という国の企業についてである。米国と日本とは相当に異なる国であるため、個別企業の事例を単純に日本の株式に当てはめようとすると無理があるかもしれない。

(例えば、なぜWallMartがこれほどの企業になったのかを調べてみると、キーワードが見えてくるかもしれません)



同様に反対のことも起きている?

大手企業の2009年の想定為替レートは100円/ドルあたりでしょうか。

ここが攻防ラインになってくると考えておくと良いかもしれません。


2008年は110円やそれ以上の為替レートを想定していたところが多く、まぁ実際は何処まで為替を先物で固定しているのか知りませんが、ファナック、キヤノン、トヨタなどの海外売り上げ依存率の高い企業の決算には悪い影響を及ぼした訳ですね。

これは、


・グローバル企業+自国の通貨が上がる=見ための利益が下がる


っていうことな訳でしょうが、当然ながら、世界のどこかでは


・グローバル企業+自国の通貨が下がる=見ための利益が上がる


というサイクルが起きている国がある筈ですよね。

 この数年、自国の通貨価値が下がり、またグローバル企業を多く抱えている国、それは何処でしょうか?

誰もが最初に思いつくのは、そう、天下のアメリカです。

 ここ にwikipediaのDJIAに関するリンクを張っておきますが、これに採用されている銘柄はアメリカを代表する、いや世界を代表する企業たちの筈ですね。つまり、少なからずグローバルマーケットを持っている企業が多い、ということになりそうですね。

直感で書くと、CAT、DD、GE、GM、HPQ、IBM、INTC、KO、MCD、MMM、MSFT、PGなんてところは、かなりのグローバルマーケットを持っていそうかなぁと思います(何も調べてません)。

すると、ドル安傾向にある限り、人が思っている程、モンスター企業の決算は悪くないんじゃないの?っていう感じがしないでもないですよね?すると、DJIAは底堅い、っていうことになりかねませんね。

あれ?サブプライム問題って何だっけ?っていうことになりかねないですね。


 一方で、メリルだかシティだかは、ものすごいリスクテイクをして資本増強していて、

「あれだけの利率でも、とにかく資金調達が必要だったというのはどういうことなんだろうか?」

とか、

「一説によると、自社ビル以下の買値を最初に掲示されたのに買収に応じたベアスターンズってどういうこと?」

とか、本丸の金融業には色々と理解しにくい状況があります。

してみると、"本当に全て終わったの?"ということにはどうもスッキリ感が無いのですが、人間は忘れる生き物ですので、明快な論理が今無かったとしても、"時間"という最も便利な道具が全てを解決してくれるのかもしれません