今回はカルナック神殿での思い出を書く。
カルナック神殿は世界最大級の神殿であり、大列柱室や巨像が並ぶメインエリア以外にも見どころが多い。
発掘品が野ざらしに並ぶ区域や、ボロボロの神殿にも歴史的価値がある。
↑野外博物館コーナーにて
神殿の外れを歩いていたら現地のおじさんに
「特別な場所から遺跡を眺めてみないか?」と誘われた。
丁度その場所は警備員が小遣い稼ぎに観光客に案内を持ち掛けると某ガイドブックで注意喚起されていた辺りだった。
あまりに予想通りの展開に、内心思わず笑ってしまった。
エジプトの観光地はぼったくりが多い。
この手の「特別案内」は大抵ショボいところに連れ込んで、記念撮影をしたりそれっぽい解説をして断り辛い空気にして料金をふんだくる。
大きな銃を持った警備兵がニコニコしながらこの手の誘いをしてくることもあった。
彼の見た目は普通で愛想笑いをしていたが、この人も私をカモだと思っているハズだ。
心の準備ができていたので散々騙されてきた意趣返しと好奇心から、裏をかいてやろうという悪戯心が芽生えた。
一度断っておじさんから離れ、財布から紙幣の大半を取り出して隠した。
そして今度は私から彼に案内をお願いした。
彼は嬉々としてバリケードの隙間に案内し、もったいぶりながら私を崩れかけの塔に連れて行った。
記念撮影をし、警備員の目を盗むため忍び足で行くよう告げるなどの芝居をうちながら、彼は私を塔に上らせた。
やはり、景色はショボい。
だが、スリルは十分味わうことができた。
満足して塔を降りている途中で、
先を歩く彼は私に金を払うよう迫った。
そのタイミングは、彼が同行しないと通常のエリアに戻れないかもしれないとか、
警備兵に突き出されるかもしれないといった恐怖を抱かせるにピッタリだった。
狭い階段の先に立ち塞がれては勿論逃げ場は無い。
彼の鮮やかな手際に感心しながら、困り顔で私は少額の紙幣を差し出した。
当然、彼は呆れ顔で全然足りないという仕草をした。
ここはとても特別な場所で、リスクを抱えて案内したと彼は主張した。
負けじと私も金がかかるとは知らなかったと言い返した。
押し問答はしばらく続いた。
最終的に私は財布の中身を見せ、これ以上は逆立ちしても払えないとアピールした。
素寒貧の私に彼も最後は納得し、渋々お金を受け取って私を元居た場所に案内した。
足早に去っていく彼の後ろ姿を眺めながら、私は一矢報いた達成感を味わった。
大事にならない金額を見極めた上でのショボい反抗だったけれど。
何かと振り回されたエジプト旅の中で、自分の思い通りに事が運んで嬉しかった。


