クラヤミ(短編小説)
クラヤミに潜むのは、ナニ?
世は常闇の世界でございました。
私が生まれた時分には、空には陽光が降り注がれ、鳥は歌い、人々も晴れやかに暮らしていたのだと申します。
世は泰平、安らかな幸福の上に人間は存在していたのです。
私の両親、それは闇が生み、育て育んだ闇の者にございました。
私自身は闇の覇者として、この安寧の世を乱す者として産み落とされたのです。
「羅様、御心が乱れているようですが…どうなされました?」
そう、私は「羅(ら)」。
常闇の世界の覇者。産まれながらの闇の者。
「案ずるな、炎。」
心が乱れるのは…私が私の破滅を望むから。
クラヤミに抱かれた私の部屋には、小さい燭台が隠すように置かれている。
小さな焔が私の心を満たしてくれる…
「この焔が…私の身ごとクラヤミを…燃やし尽くせばよいのに、な…」
私の望み。
永遠に一人、クラヤミに抱かれて……さ迷うこと。
さぁ、また世界に闇が満ちる。私の望みとは裏腹に、世界は闇に染まって、ゆく。
END
世は常闇の世界でございました。
私が生まれた時分には、空には陽光が降り注がれ、鳥は歌い、人々も晴れやかに暮らしていたのだと申します。
世は泰平、安らかな幸福の上に人間は存在していたのです。
私の両親、それは闇が生み、育て育んだ闇の者にございました。
私自身は闇の覇者として、この安寧の世を乱す者として産み落とされたのです。
「羅様、御心が乱れているようですが…どうなされました?」
そう、私は「羅(ら)」。
常闇の世界の覇者。産まれながらの闇の者。
「案ずるな、炎。」
心が乱れるのは…私が私の破滅を望むから。
クラヤミに抱かれた私の部屋には、小さい燭台が隠すように置かれている。
小さな焔が私の心を満たしてくれる…
「この焔が…私の身ごとクラヤミを…燃やし尽くせばよいのに、な…」
私の望み。
永遠に一人、クラヤミに抱かれて……さ迷うこと。
さぁ、また世界に闇が満ちる。私の望みとは裏腹に、世界は闇に染まって、ゆく。
END
哀しい、なんて(短編小説)
哀しい、なんて嘘。
貴方の「哀しい」なんて、聞き飽きてしまったから。
俺は漂っていた。
記憶と現実の波の合間にただ浮かんでいる。
ただ、意識だけはハッキリしていた。
俺は死んだのか?だとしたら貴方は哀しんでくれるだろうか?
…ありえない、か。
思い切って上体を起こしてみようとするが、漂っているだけの体には力が入らなかった。
空には大きな空洞。空の色は真紅。
「…此処、なんか懐かしい感じがするんだよなぁ…」
優しく包まれている、不思議な感覚が俺に生まれてくる。
………兄さん?
空の空洞から、貴方…兄の声が聞こえた気がした。
いつも「哀しい、哀しい」と呟くだけの、無気力な声ではなく、必死で俺の名前を呼ぶ声。
兄さん、やっぱりその声の方が俺、好きだよ。また、唄ってくれよ、好きだよ兄さんの歌声。
ふわり、と体が浮く。
あ、俺、召されちゃうのかな。兄さんの唄が聞きたかったな。
空の空洞が伝える。
兄さんの歌声を。
明るい光に顔をしかめる。
あれ、兄さん。なんで泣きながら唄ってんの?
「…に、いさ……?」
あれ、俺の声、なんで掠れて上手く話せないの?
兄さんの手が頬に触れ、優しい歌声が涙と共に響く。
哀しい、なんて嘘。
だって貴方には「唄」があるから。
唄ってくれよ、これからも。
…とりあえず…鼻水垂らしながら唄うなよな。
涙を拭いて、兄さんの唄を聞かせて。
END
貴方の「哀しい」なんて、聞き飽きてしまったから。
俺は漂っていた。
記憶と現実の波の合間にただ浮かんでいる。
ただ、意識だけはハッキリしていた。
俺は死んだのか?だとしたら貴方は哀しんでくれるだろうか?
…ありえない、か。
思い切って上体を起こしてみようとするが、漂っているだけの体には力が入らなかった。
空には大きな空洞。空の色は真紅。
「…此処、なんか懐かしい感じがするんだよなぁ…」
優しく包まれている、不思議な感覚が俺に生まれてくる。
………兄さん?
空の空洞から、貴方…兄の声が聞こえた気がした。
いつも「哀しい、哀しい」と呟くだけの、無気力な声ではなく、必死で俺の名前を呼ぶ声。
兄さん、やっぱりその声の方が俺、好きだよ。また、唄ってくれよ、好きだよ兄さんの歌声。
ふわり、と体が浮く。
あ、俺、召されちゃうのかな。兄さんの唄が聞きたかったな。
空の空洞が伝える。
兄さんの歌声を。
明るい光に顔をしかめる。
あれ、兄さん。なんで泣きながら唄ってんの?
「…に、いさ……?」
あれ、俺の声、なんで掠れて上手く話せないの?
兄さんの手が頬に触れ、優しい歌声が涙と共に響く。
哀しい、なんて嘘。
だって貴方には「唄」があるから。
唄ってくれよ、これからも。
…とりあえず…鼻水垂らしながら唄うなよな。
涙を拭いて、兄さんの唄を聞かせて。
END