届ける、手紙と思い(短編小説)
『アナタが生まれた日。
それを僕はハッキリ覚えているよ。
桜が綻び始めた暖かな日。
アナタは小さくて、だけれど力強く泣いていた。
たった一人、僕の弟であるアナタ。
そして今日、アナタは二十歳になりましたね。
皆への感謝を忘れずに素敵な大人になって下さい。
兄貴より』
一人だけの兄貴。
両親共に離婚、再婚で…兄貴と二人で生きてきた。
その兄貴が…俺の誕生日の前日に…死んじゃったんだ。
呆然とする俺の元へ、兄貴から手紙が届いた。しかも丁寧に郵便で。
「……馬鹿、だよなぁ兄貴…」
郵便配達員だった兄貴は、自分で届けるつもりだったんだな?
「兄貴、俺…二十歳になったんだぞ…!!一緒に酒も飲めるように……ッ!!!!!!!!」
兄貴の手紙を糧に俺は大人になっていく。
兄貴が言っていた…『素敵な大人』に近づけるように。
いつか、天国(行けたのか?)で酒、飲もうな。
ありがと、兄貴。
END
癖(短編小説)
君の癖。
本当は臆病な君。
その自分を隠すためにかけている眼鏡。
眼鏡のフロントを中指で押し上げる。
君の癖。
隠さなくて良いんだよと、僕。
君は「何が?」と言ってまた眼鏡を上げる。
照れくさい時、考え事をしている時、動揺した時・・・
君の眼鏡は、感情表現の一種なのかな?
でも、隠さないで。
隠してしまえば君は君じゃなくなるから。
君の癖。
僕はその癖、嫌いじゃないよ。知ってるよ、眼鏡を外して笑えば、目許もしっかり笑うこと。
知ってるよ、本を読んで泣きそうになる事。
知ってるよ、泣き虫な事も。
知ってるよ、君の事。
だって、僕が「眼鏡」なんだもの。
僕で隠さないで。
君を見せて。
君の癖。
いつか、いつか君の癖が無くなるといいね。
僕と一緒に、さ。
END
約束の場所(短編小説)
『約束の地へ…』
遥か彼方の地に降り立つ。
私は誰だろう。
遥か昔に、誰かと居た場所。
私は誰だろう。
私は何だろう。
昔々、光の降り注ぐ古城の頂上に神が降り立ったという。
そんな伝説が僕の村には伝わっていた。
幼い頃から僕は一人で、そんなお伽話をしてくれる親すら居なかった。僕は、たった一人。
寂しいとか、悲しいとかは思わなかったけれど、孤独ではあった気がする。
『約束を覚えているか?』
またあの夢だ。
ずっと繰り返し見る夢。
光の中から、誰かが僕に話しかける夢。
不思議と怖くは無かった。
包み込まれるような光、そして僕を呼ぶ声…
その夢を見た後、僕はどうしようもなく孤独になる。
「…誰…?何故、僕を呼ぶ?貴方は何処にいる?」
僕の声が夢の中で響く。
話しかけたのは、これが始めてだった。
『約束の場所へ…』
約束の…場所?
「それは何処です!?貴方は一体誰なんだっ!!」
『…遥か彼方の………頂上…』
そこで僕は目覚めてしまった。
不思議な気分だった。確実に…僕を呼んでいた!!他でも無い僕を…!!
明るみ出した外から、村の子供たちの歌声が響く。
゛湖の真ん中。゛
゛山の上に光が降る。゛
゛山の上に城が降る。゛
゛約束を忘れた?゛
゛私を思い出して。゛
村に伝わる歌。僕を呼んでいた声と同じ…?
湖の真ん中…?まさか…!!
僕は走った。
直ぐに着くはずの湖が遠く感じる。湖の真ん中に浮かぶ山。
村の掟で立ち入ってはならない山。
湖には一隻の船が浮いていた。
声が聞こえる、夢の声…
僕を呼んでいる――
城を目指して、僕は船を漕ぐ。
約束の場所へ…!!
『約束の場所へ。やっと、やっと貴公に会える。』
村に一人の青年が居た。
幼い頃から、一人ぼっちの青年が。
ある日青年は姿を消した。
湖に浮かぶ山へと向かったのを村人が見ていた。
そして青年は―――
神々しい光と共に―――
孤独から逃れた。
END
遥か彼方の地に降り立つ。
私は誰だろう。
遥か昔に、誰かと居た場所。
私は誰だろう。
私は何だろう。
昔々、光の降り注ぐ古城の頂上に神が降り立ったという。
そんな伝説が僕の村には伝わっていた。
幼い頃から僕は一人で、そんなお伽話をしてくれる親すら居なかった。僕は、たった一人。
寂しいとか、悲しいとかは思わなかったけれど、孤独ではあった気がする。
『約束を覚えているか?』
またあの夢だ。
ずっと繰り返し見る夢。
光の中から、誰かが僕に話しかける夢。
不思議と怖くは無かった。
包み込まれるような光、そして僕を呼ぶ声…
その夢を見た後、僕はどうしようもなく孤独になる。
「…誰…?何故、僕を呼ぶ?貴方は何処にいる?」
僕の声が夢の中で響く。
話しかけたのは、これが始めてだった。
『約束の場所へ…』
約束の…場所?
「それは何処です!?貴方は一体誰なんだっ!!」
『…遥か彼方の………頂上…』
そこで僕は目覚めてしまった。
不思議な気分だった。確実に…僕を呼んでいた!!他でも無い僕を…!!
明るみ出した外から、村の子供たちの歌声が響く。
゛湖の真ん中。゛
゛山の上に光が降る。゛
゛山の上に城が降る。゛
゛約束を忘れた?゛
゛私を思い出して。゛
村に伝わる歌。僕を呼んでいた声と同じ…?
湖の真ん中…?まさか…!!
僕は走った。
直ぐに着くはずの湖が遠く感じる。湖の真ん中に浮かぶ山。
村の掟で立ち入ってはならない山。
湖には一隻の船が浮いていた。
声が聞こえる、夢の声…
僕を呼んでいる――
城を目指して、僕は船を漕ぐ。
約束の場所へ…!!
『約束の場所へ。やっと、やっと貴公に会える。』
村に一人の青年が居た。
幼い頃から、一人ぼっちの青年が。
ある日青年は姿を消した。
湖に浮かぶ山へと向かったのを村人が見ていた。
そして青年は―――
神々しい光と共に―――
孤独から逃れた。
END