讃美歌(短編小説)
貴女にだけ捧げましょう。
貴女を讃える、美しい歌を。
此処は氷の都。
空も、大地も、建物も氷。
人は怯え、凍えながら生き永らえている。
氷の都に季節は存在しない。
一年中、いや一生中、氷の世界に鎖されているのだ。
都の氷は溶ける事を知らない。火を使い、炎を使い、焔まで使っても、一筋の水にさえ成らなかったのだ。
氷は光の怒りだった。
凍てつく炎さえ凍らせてしまうほどの冷徹な怒り。
かつて、人は光を悪とし、闇を崇めて生きていた。悪とされた光は閉ざされ、虚無へと追いやられていたのだ。
光は怒り、哀しみ…そして、怒りは氷へと姿を変えた。
氷ならば光を反射し、闇を寄せ付ける事は無いから…
氷都の中央には、高く聳える氷の塔があった。塔の中には光だけが存在し、かつて人が崇めた闇を消し去る程に輝いていた。
少年はその光が好きだった。
優しく包み込んでくれるような慈悲と、何もかもさらけ出されてしまうような恐怖と虚無。
その二つを持つ光を、少年は心から思っていた。
少年は繰る日も繰る日も、光の塔に赴き、光を見詰め続けていたのだ。
ある日、少年が塔の前に立った時、空間が歪んだ。
少年は塔の中、光の中へと誘われていたのだ。
不思議な感覚だった。
自分の手すら見えない光の中で確かに少年は存在していた。
少年は口ずさむ。
幼い頃、教えられた歌を。
光の中で少年は歌う。
貴女の為の讃美歌を
光を讃える歌を。
少年は歌う。
母から、父から教えられた歌、ただそれを光の為に。
かつて氷の都があったのだよ、と祖父が言う。
祖父が歌う歌で、光が世界に散ったのだと。
氷の都は溶けてしまったのだと言っていた。
氷の都。
貴女の歌で、都は溶けた。
貴女へ捧げましょう。
貴女を讃える、『讃美歌』。
END
貴女を讃える、美しい歌を。
此処は氷の都。
空も、大地も、建物も氷。
人は怯え、凍えながら生き永らえている。
氷の都に季節は存在しない。
一年中、いや一生中、氷の世界に鎖されているのだ。
都の氷は溶ける事を知らない。火を使い、炎を使い、焔まで使っても、一筋の水にさえ成らなかったのだ。
氷は光の怒りだった。
凍てつく炎さえ凍らせてしまうほどの冷徹な怒り。
かつて、人は光を悪とし、闇を崇めて生きていた。悪とされた光は閉ざされ、虚無へと追いやられていたのだ。
光は怒り、哀しみ…そして、怒りは氷へと姿を変えた。
氷ならば光を反射し、闇を寄せ付ける事は無いから…
氷都の中央には、高く聳える氷の塔があった。塔の中には光だけが存在し、かつて人が崇めた闇を消し去る程に輝いていた。
少年はその光が好きだった。
優しく包み込んでくれるような慈悲と、何もかもさらけ出されてしまうような恐怖と虚無。
その二つを持つ光を、少年は心から思っていた。
少年は繰る日も繰る日も、光の塔に赴き、光を見詰め続けていたのだ。
ある日、少年が塔の前に立った時、空間が歪んだ。
少年は塔の中、光の中へと誘われていたのだ。
不思議な感覚だった。
自分の手すら見えない光の中で確かに少年は存在していた。
少年は口ずさむ。
幼い頃、教えられた歌を。
光の中で少年は歌う。
貴女の為の讃美歌を
光を讃える歌を。
少年は歌う。
母から、父から教えられた歌、ただそれを光の為に。
かつて氷の都があったのだよ、と祖父が言う。
祖父が歌う歌で、光が世界に散ったのだと。
氷の都は溶けてしまったのだと言っていた。
氷の都。
貴女の歌で、都は溶けた。
貴女へ捧げましょう。
貴女を讃える、『讃美歌』。
END
指切り(短編小説)
小指、って大切。
だって約束する指だから。
稲光が光る夜に産まれたから、私は雷って名前なのよ。
母様と、空の主サマとの子供なの。
母様は海の主サマ。広い広い海の奥にいらっしゃるの。
母様は綺麗な碧色の髪を漂わせて、海の話を聞いているの。
父様は優しい紅の目で空を見渡しているの。
母様の髪は海の色。
父様の瞳は夕焼けの色。
私は海と空の間に一人で居るのよ。
空にも、海にも私は帰れないから。
私の髪は紅。
私の瞳は碧。
私は空と海の子。
父様と母様との『約束。』
遥か昔にした約束。
私の小さな小指と、父様の大きな小指。母様の優しい小指。
大切な、大切な約束をしたの。
何年も、何年も私は空と海の間に居るの。
私は大地の主だから。
『お前は大地を護るんだよ』
はい、父様。
『貴方は大地を護るのです』
はい、母様。
私は空と海の子。
大地の主。
父様と母様と、私。
『約束』がある限り、私は空も海も侵さない。
クス、クス、クス…
さぁ、約束は…
イツマデカシラ…?
END
だって約束する指だから。
稲光が光る夜に産まれたから、私は雷って名前なのよ。
母様と、空の主サマとの子供なの。
母様は海の主サマ。広い広い海の奥にいらっしゃるの。
母様は綺麗な碧色の髪を漂わせて、海の話を聞いているの。
父様は優しい紅の目で空を見渡しているの。
母様の髪は海の色。
父様の瞳は夕焼けの色。
私は海と空の間に一人で居るのよ。
空にも、海にも私は帰れないから。
私の髪は紅。
私の瞳は碧。
私は空と海の子。
父様と母様との『約束。』
遥か昔にした約束。
私の小さな小指と、父様の大きな小指。母様の優しい小指。
大切な、大切な約束をしたの。
何年も、何年も私は空と海の間に居るの。
私は大地の主だから。
『お前は大地を護るんだよ』
はい、父様。
『貴方は大地を護るのです』
はい、母様。
私は空と海の子。
大地の主。
父様と母様と、私。
『約束』がある限り、私は空も海も侵さない。
クス、クス、クス…
さぁ、約束は…
イツマデカシラ…?
END
魂の寄り所(短編小説)
言魂を司る俺の家。
俺の初めての力の解放。
神社の境内は真っ暗闇だったんだ。もちろんアイツの周りが一番暗かった…怖いくらいに真っ暗。小さい頃から見慣れてたはずなのに俺はアレが怖くて怖くて仕方なかったんだ。
『葉ノモノカ?』
ソイツの口から出た声は異様にねじ曲がっていて、唇が裂けるようにニヤリと動く。
葉の者。それが俺の一族の名前だった。言の葉が語源で、言葉を操るから葉の者らしい。
『知ッテイルゾ。』
ソイツが呟く。既に…ヒトガタに完全に乗っとられ、人としての姿まで失われている。
゛地に眠り、水に踊り、風に乗り、火に遊ぶ゛
゛鎚を下し、渦を弾き、嵐を呼び、焔を返す゛
゛モノよ、ヒトガタを闇に葬り…雷を落とせ!!゛
゛我が名は………「葉」!!!!゛
俺の口上にソイツはニヤリと笑った。
『キサマノチカラデハ…!?』
空を覆っていた闇を切り裂き、雷がヒトガタに落とされる。
ま、呼んだのは俺だ。
俺の力が呼ぶのは、八百万の神らしい。
統べての神を呼べるのは、俺だけみたいだけど、な。
雷が落ちるまでの短 い間、俺は乗っとられた奴の為に、詩を