2010年10月31日にアニメ作家の首藤剛志さんが急逝してから5年。首藤さんは生前、今やモンスターコンテンツと化したアニメポケが終了する事を念頭に置いてシナリオとストーリーを遺していました。
それは劇場版第3作幻のプロットとアニポケTVシリーズ幻の最終展開で、今日は幻の劇場版第3作目の構想とあらすじを書こうと思います。
ポケットモンスター映画第3作目(仮)
『結晶塔の帝王』の前身にあたる企画。これもやはり、没最終回と同じ方法で公表。
幻の第3作目のイメージイラスト
作品のテーマは『進化論』や『本物の動物』、そして『この世界とは何なのか?』である。
これはポケモンシリーズ当初の設定である「ポケモン以前には地球の生き物が存在していた」という設定を応用したもの。
実際に当時のテレビ絵本には子犬が登場するし、赤緑の図鑑説明には『インドぞう』が登場し、
『ミュウツーの逆襲』では、ボイジャーが『カモメ』の存在をほのめかすような発言をするほどだった。
後のシリーズでは、このような人間・ポケモン以外の生物の存在について、設定はなかったことにされたり、されなかったりと曖昧な扱いをされている。
これは脚本づくりにも大いに影響を与えており、首藤氏はヤドンがただのんびりする日常回を書こうとして、小道具として蚊や蝿のようなポケモンにたかる小虫を出そうにも(それらをモチーフにしたポケモンがいない為)出せずに苦労したとも語っている。
ストーリー
ポケモンと人間しか動物のいない『ポケモン世界』において、ある重大な発見があった。
なんと中生代にこの地球上で生きていたティラノサウルスの化石が発見され、ポケモン学会は大騒ぎになる。
ここでオーキド博士は重大なことに気づく。
ポケモンがこの世に発生した時期も定かではなく、進化論(ポケモンでいう進化のことではない)はポケモンにも通用しない、新発見のポケモンはどんどん増えていくばかり。
しかも、地球上の動物(犬、猫など)の記録は残っているのに、なぜか人々の記憶から消えていたのだ!
しかも誰もがそのことに疑問を感じていないのだ。
何かこの世界には秘密があるのか。人々も自分の生きる世界について考え始める。
その最中、突如ティラノサウルスが動き出し、ある場所を目指し進撃を開始する。
ポケモンや人間たちは踏みつぶされていく。とにかく邪魔なものは踏みつぶす。海も川も越え…。
町は破壊されてゆく、オーキド博士は研究所を踏みつぶされても「いつかこんな時が来ると思っていた。何故こうなるのかわからんけど」としかしゃべらない。
実はオーキドにもわかっていないのだ。『いつかこんな時が来ると思っていた』以外は。
ポケモンたちや人間は本能的にティラノを止めようとする。
ティラノを止めなければ『ポケモン世界』が危ういと感じたからだ。
ロケット団たちも協力し始める。
そこにはいつもの敵味方もありはしない。
しかし、冷静なのは『自己存在』をテーマとするミュウツーだけだ。
そしてティラノはある場所で動きが止まる。
果たしてその場所とは…。
以上がストーリーの概要である。
実際のプロットはもっと簡潔らしく、進化論や学会云々の話は大幅に削ってあるらしい。
没になった経緯
首藤氏はこれを企画するにあたり、反対意見はあらかじめ想定していた。それは『ポケモンの世界観の破壊』である。半年構想にかけたこともあり、それに対する反論は当然用意していた。
しかしトップが言い放った反対意見は、首藤氏の予想にはなかった意外なものだった。
それは『無機質なものに、意識が宿り動き出すというストーリーはヒットしない』というもの。
これは以前にトップの久保氏が以前プロデュースした『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の劇場版(ストーリーは意識を持ったミニ四駆が暴走するという内容)がヒットしなかったからである(他に『ティラノサウルスでならポケモン映画以外でも書ける脚本だ。』という意見が出たからという話もある)。
久保氏はそういった経験から首藤氏のプロットを却下した。
首藤氏の想定した反論はあくまでストーリーやアニポケ世界観に関するものであり、ヒットするか否かという反論は予想だにしていなかった。
言い換えれば「興行収入数十億円を目指す、失敗が許されなくなったポケモン映画において、この脚本でそれぐらいのヒットを出せる確固たる自信があるならばいい」と言われたということである(久保氏はエンターテイメント性を重視しており、『ミュウツーの逆襲』のヒットに対しても自分の理論と違ったため驚いていた)。
しかし、全体的に暗く重いストーリーの『ミュウツーの逆襲』がなぜヒットしたか、自分が書きたい話を書いただけの首藤氏自身も理解しておらず、明確に説明もできるわけもなかった。
この3作目のプロットについて、ヒットする自信もなかった首藤氏は、久保氏の反対を否定できるだけの意見を持ち合わせておらず、それを泣く泣く受け入れざるを得なかったという。
止まった場所に対する考察
ティラノが動きを止めた場所はプロットを手掛けた首藤氏以外真実を知る者がおらず、当の首藤氏も種明かしをしないまま他界してしまったため、その真相は今でも闇の中である。
そのため、ファンの間ではこの手の考察が後を絶たない(首藤氏曰く、『動物とは何か?』『人間とは何か?』を考えればさほど難しくないとのこと)。
例として、
など。
余談
上記のポケモンの反乱の設定のオマージュともいえる設定がのちのシリーズにも登場している。以下がその一例である。
- 『劇場版ポケットモンスター ミュウと波導の勇者ルカリオ』における古代の戦争シーン。
- 『ポケットモンスターブラック・ホワイト』における聖剣士の昔話
- 『ポケットモンスター サン・ムーン』でのウルトラビースト他。
このほか、映画『キミにきめた!』でも「ポケモンがいない現実世界」というこの没プロットを連想させるシーンが出てくる。
また、映画『ココ』でも人間とポケモンが争うシーンや、人でもありポケモンでもある特異な存在:ココが物語の中で重要な活躍をする。
恐らく、これらの作品は映画のテーマである「原点回帰」を強く意識しているのだと思われる。
ネット記事より引用
これは衝撃的な展開と同時に、アニポケの歴史を終えたかも知れない結末でした。明日はTVアニメ版幻の最終展開を書こうと思います。