楽器と会話ができたなら
I「お疲れ様。8年間よく頑張ってくれたよ。ありがとう」
P「どうして私を売るのでしょうか?」
I「次のピアノが来るんだ。2台置いていく場所もないし、何よりここに居ても出番が無くなって弾かれないのでは君の音が維持されなくなるよ。新しいユーザーを探してもらうために業者に引き取ってもらうのさ。」
P「残念です。」
I「大事にしてもらうんだよ。元気でね。」
とでも言うのかな?
店を開業する時に女房のお世話になったピアノの先生のお宅で使われなくなっていたピアノを譲っていただいた。8年前。
当初音響的に言うならとても「暴れた」つまり高音にも低音にもハウリングポイントがあって天蓋を開けてるとピアノ自身の音も外部からの他の音も拾ってマイクで拾音してコントロールするのにとても手を焼いた。
あの頃は私もPAの仕事を始めたばかりで自然な音がベストだと信じてフラットな音響にこだわって暴れ放題にしていたから大変だった。
このピアノも音楽教室でそれもいくらも弾かれてなかったのだろう。製造から25年も経っているのに若い、喧嘩っ早い音を出してたように思う。
それがだんだんホールとも音が馴染んで落ち着いていくのに2年ぐらいかかったと思う。
私もPAの仕事を少しずつ勉強させてもらって積極的に恣意的に音作りをしていた。
音響の仕事は里山を作るのに似ている。
人の手を入れないと山は荒れ放題の雑木林だ。だが里山は枝をはらい、間引いたり、時に植林してそれぞれの長所を生かした調和を作った人の創作、自然との共作だと思う。
PAの仕事もいろんな楽器と演奏者とのコラボレーション。いつもその最上を目指して勉強も精進もする。
苦楽を共にしたこのC3Bがいつかどこかで誰かの心を癒してくれたら嬉しい。
