親孝行2 | 雲の呟き

雲の呟き

流れる雲のように、浮かんでは消えていくものの名残を文字にしています。
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悪しからず御理解願います。

2日目。


東伊豆から中伊豆の伊豆長岡に移動。


1日目は伊豆縦貫道から下田側まで抜けて東伊豆を北上したが唄に名高い天城越えや河津七滝ループ橋などアップダウンやカーブに疲れたので東周りで伊豆高原から峠を越えることにした。


宿でトトロ展をやっていると勧められた伊豆高原のテディベアミュージアムに女房が孫に土産が欲しいとせがまれて寄り道していくことに。


ここも昔来たことがあるが正直コレクションとしてはそこそこあるものの関心のない輩には時間のいる場所では無い。


孫のお土産を仕入れ峠に向かう。有料の伊豆スカイラインを使ったけどここもほとんどすれ違う車も少ない。ツーリング中のバイクが目立つ程度だった。


11時チェックアウトでは昼過ぎには着いてしまった。


残念なことに宿では軽食も取れないとのことで近くの蕎麦屋を紹介されて出回ったが休業日だった。


仕方ないので検索したらガストがあったので軽く食事をした。それでも時間があったが宿のラウンジでウエルカムドリンクにコーヒーを頂いているうちに部屋の準備が出来たらしく案内される。


この日の宿、三養荘はもともと三菱創業の岩崎弥太郎の長男の別宅が起源、昭和初期に建てられた敷地3万坪ほどの平屋の入母屋造りが数棟あって、今でこそコンクリート造りの大広間や大風呂が増築されているが広大な日本庭園が売り。


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私が小学生だった50年以上前にはぶりのよかった父に幾度か連れてきてもらっていて昭和天皇、平成天皇、今の令和天皇もお泊まりになったこともあり数年前に本館は重要文化財に指定されている。


そんな当時小さかった私はただ駄々広い客室に大きな庭。ひたすら静かで日が暮れると真っ暗な田舎で気味が悪かった印象しかない。


母もさすがにここだけは記憶していて父との思い出を蘇らせていたようだ。


伊豆といえば富士だったり海であったり風光明媚で華やかな印象をお持ちだろうがここは山の中で川がそばにあるだけでたいして眺めのいい場所では無い。


父母との思い出探しのような旅である。


こうした文化遺産のような建築物は泊まるには不気味な妖気のようなオーラを感じる。全体に暗い照明は雰囲気づくりには間違いないが深夜、手洗いにいくにも憚られる。


子供時代の強い庭園の印象はいくらか目が肥えたせいか期待値まで達していなかった。もう2ヶ月ほど遅らせて紅葉していたら素晴らしい景観になっているだろう。


今回案内された客室はベッドのある比較的新しい部屋で(それでも30年はたっている)裏の箱庭のようなところにしか面していなかった。


最初荷物を運んでくれたスタッフに昔話を伝えて大きな庭に面した部屋のことを尋ねると今はそちらの棟は会員制の利用しかできないそうで、非会員でも泊まれる部屋はあるがベッドではないらしい。


母は数年前から背骨を数カ所に圧迫骨折があって畳に布団では硬くて寝られそうもなく今回のリクエストには無理だった。


最終日


そんな不満がどう伝わったのかチェックアウトの前にスタッフが気を利かせてくれて大きな庭園に面した本館の客室を案内すると言ってくれた。


案内された部屋はシンプルだが作り手のこだわりの詰まった純和風、しかも年を経た渋さの強烈な和室だった。私の子供時代にタイムスリップしたような、、記憶どおりの部屋。



スタッフと話すと手入れのできる職人がどんどん減って維持がたいへんだという。


縁側のテラスでコーヒーをいただくなどまさにプライスレスな時間を母、女房と過ごさせてもらった。


サービスはさすがにプリンスと頷ける宿。


母が居なかったらきっと来なかったろうし、おそらくもう訪れることはないのではと想像している。


帰り道に昼時だったので新静岡で降りてうなぎをいただいたあと、いつもお茶を送ってもらっているやまはちさんに寄ってお茶を仕入れた。


こことの付き合いも10年は越えている。直接お邪魔するのは2回目だが先回お話をさせていただいた先代の会長さんは亡くなったと聞いてとても残念だった。確かに当時でも90を越えておられたが毎日良いお茶のおかげで元気だという言葉が忘れられない。


ここのお茶師はNHKのプロフェッショナルの初期に特集された前田文男氏。


たまたま一人で留守番されていた。以前は来訪者にはお茶のサービスがあったがコロナ対策で休止しているという。正常になるにはまだまだ道半ばということを改めて気づかされた。


母との旅行はこれが最後になるだろうか?


母もそれはとても意識している。


「たられば」はきっとあるだろうけど今精一杯のことだけはしてあげられたように思っている。