脚本家/小説家・太田愛のブログ -23ページ目

『歴代沈壽官展』を日本橋で観た。


沈壽官窯は桃山時代に始まる薩摩焼窯元のひとつで、その代々の当主が沈壽官。当代で十五代目を数えるそうだ。薩摩焼は16世紀末、朝鮮出兵の際、秀吉に連れてこられた朝鮮人の陶工たちが始めた焼物で、沈家の初代・当吉もその創始者の一人だ。やがて沈家は薩摩焼の中心的な役割を担うようになり、江戸期には藩主・島津家のもとしばしば藩営焼物所の主宰を務め、時代変わって維新の後にはパリ万博、ウィーン万博を通じて欧米にも活路を開いていったという。
脚本家・太田愛のブログ-薩摩焼②
今回、展示されていたのは酒器、香炉、花器など百点ほど、明治期に活躍した十二代目から当代十五代目までの作品が中心でになっていた。中でも『白薩摩』と呼ばれる作品群が際立って美しく、独特の白に深さがある。二十余年の歳月を経て陶工達が見つけ出した白色陶土から生まれた白。澄んだ光沢にうっすらと黄味を帯びた白地は、やわらかな手ざわりをも錯覚するほどに温かで、どこまでも気品がある。技巧を凝らした大胆なデザインも、精緻な絵付けや驚嘆すべき彫りの細工も、すべてこの白あってこそと思えた。


脚本家・太田愛のブログ-薩摩焼①

ところで、たとえば一脚の香炉は、それが置かれた座敷と立ちのぼる灰白色の煙、あたりに籠める御香の薫りとそれを聴く人々の静謐な佇まいを思わせる。そのように陶芸や蒔絵などの工芸品には、絵画や彫刻とは異なる魅力、そのものの背後に人々の息づかいを思わせる魅力がある。巧緻をきわめた白薩摩を眺めるよろこびは、その一点の美の背後に幻の営みの豪奢と華やぎが感じられるところにもあるように思う。

オンエアのお知らせです。


1月26日(水)21時より

  

『相棒 Season9』 テレビ朝日系


第13話「通報者」の脚本を担当しました。


是非、ご覧下さい。



脚本家・太田愛のブログ-梅と鶯





本日1月18日発売の月刊ドラマ2月号(映人社)に


相棒Season9第3話『最後のアトリエ』のシナリオが掲載されています。



掲載されているのは"決定稿”と呼ばれるもので、


撮影前の時点での最終稿です。


ですから、実際に放映された本編とは若干、異なる箇所もあり、


比べて読んでいただくのも面白いかと思います。



よろしければ、是非お手にとってご覧になってみてください。


脚本家・太田愛のブログ-冬木立



明けましておめでとうございます。


本年もよろしくお願いします。


脚本家・太田愛のブログ-玉飾り
1月22日より『犬とあなたの物語』が全国ロードショーになります。


犬好きの方も、そうでない方も

是非、ご覧下さい。



脚本家・太田愛のブログ-犬とあなたの物語

『犬とあなたの物語』の公式ホームページはこちらです。

  ↓

http://inu-eiga.com/

〈まぼろしの画家・小林かいち〉を知ったのは、つい最近のこと。

ある店でかいちがデザインした絵葉書を見かけ、一目で惚れこんだ。

脚本家・太田愛のブログ-絵葉書
小林かいち(本名・嘉一郎)は、大正から昭和20年代ごろまで京都で活躍した叙情画家・デザイナーで、絵葉書や絵封筒の図案を多く手がけている。国書刊行会から出ている『小林かいちの世界』の帯には「幻の画家」「謎のデザイナー」といった魅惑的なことばが並んでいるが、それらは決して大げさな惹句ではない。実際、2008年に御子息が「かいちは私の父です」と名乗り出るまで、小林かいちは性別すら知られていなかったそうだ。京都新聞の記事で次男の嘉寿さんは次のように語っている。

「父と一緒に遊んだ記憶はほとんどないが、夜中に、机に向かって御所車などの模様を描いていたのを覚えている。あの父が謎の画家のかいちだったとは本当に驚きました」

脚本家・太田愛のブログ-かいちの本
かいちのデザインは同じ大正モダニズムを代表する竹久夢二よりも圧倒的に鮮烈だ。赤、ピンク、金、黒といった強い色彩の大胆な配色。夢二と同じく『嘆く女』を多くモチーフとしながらも、女の顔の表情はほとんど描きこまず、あくまでデザインの素材として配置する造形的な画面構成。もちろん少女向けに作られた絵葉書や絵封筒にはハートや薔薇や綺羅星が惜しげもなく散りばめられているが、洗練されたアール・デコ風のデザインは過度な叙情に流れず、あくまで装飾的だ。物語のぬくもりと奥行きを排したヴィジュアルに、独特の切れ味がある。


実は昨年、ニューオータニ美術館でかいち展が行なわれたらしく、寡聞にしてその頃、まだ小林かいちを知らなかったことが残念でならない。

と、悔いていたところ、たった今、まさにこんな展覧会が開かれていることを知った。

脚本家・太田愛のブログ-大正イマジュリィ

場所は、渋谷区の松涛美術館。

竹久夢二、高畠華宵らと共に、小林かいちの絵も展示されているらしい。

是非とも、観に行かねば。


最後になりましたが、放映後メッセージを下さった皆さん、

どうもありがとうございました。

chachaさん、『雪の扉』は公式ホームページにシナリオを公開してあります。

よろしければどうぞ。


オンエアのお知らせです。


11月24日(水)21時より

  

『相棒 Season9』 テレビ朝日系


第5話「運命の女性(ひと)」の脚本を担当しました。


原田龍二さん演じる陣川公平警部補のエピソードです。


是非、ご覧下さいませ。


次回放映は、またお知らせいたします。


脚本家・太田愛のブログ-黄葉


メッセージを下さった方々、どうもありがとうございます。

kikuさん、ワインをどうも。



オンエアのお知らせです。



11月10日(水)21時より

  

『相棒 Season9』 テレビ朝日系


第3話「最後のアトリエ」の脚本を担当しました。


米倉斉加年さんに客演していただきました。


是非、ご覧下さいませ。


次回放映は、またお知らせいたします。


脚本家・太田愛のブログ-篝火


※長らくブログの更新が出来ていませんが、


折をみて色々とアップしていこう……と思っています。


kikuさん、プレゼントありがとうございました。

今年の夏は、久々に花火を観に出かけた。

雨上がりの河川敷に大勢の人が行楽シートを広げ、空を見上げる一時間ほど。


脚本家・太田愛のブログ-花火1


打ち上げの正面に偶然、座ることができ、

夜空を真上に仰ぐようにして、夏の夜を満喫する。


うしろに並んで座っていた女子高生3人組は心底、感激しており、

嬌声とため息に混じって「ほんとうに空に花が咲いたようだね……」と呟いていた。


脚本家・太田愛のブログ-花火2


大輪の色々は、夏の夜のぬるい風に火の匂いを残して消えてゆく。


あれが火だと忘れるほどに残酷にみどりが散ってゆきたる花火  井辻朱美





今年の夏は帰省せずにお仕事。



ついさっき不意に雲が切れて陽が射して来る。


雨が上がったかな、と仕事部屋の窓を開けてみると


明るい陽射しの中に大粒の雨が光っている。


お天気雨だ。


もしや、と外に出てみる。


脚本家・太田愛のブログ-虹


ほんの5分ほどの虹。

映画『犬とあなたの物語 いぬのえいが』
            (2011年公開予定)
シナリオを担当しました。
先日、制作発表され、ようやくお知らせできることになりました。
    
松嶋菜々子さん、大森南朋さんをはじめとした素晴らしいキャストの方々と、
長崎俊一監督をはじめとする素晴らしいスタッフの方々によって
ただ今、製作されています。

公開時期などが決まりましたら、またお知らせいたします。
しばらくお待ちくださいませ。