昨日、市川森一先生が亡くなられた。
つい最近、テレビでお元気な姿を拝見したばかりだったので、
突然の訃報に茫然となり、まだ信じられないような気持だ。
市川先生にお目にかかったのは、もう十年以上前のこと、
円谷プロの『ウルトラマンティガ』で脚本家として仕事を始めて
間もないころだった。
先生もその昔、円谷プロの『ブースカ』やウルトラマンシリーズを
数多く手掛けられており、その縁で、ある雑誌で対談させていただいた。
先生は開口一番、「あなたはいいね、『ウルトラマン』でデビューできて。
僕は『ブースカ』なの。デビュー作っていうのは一生、変わらないからね。
やっぱり『ブースカ』より『ウルトラマン』がいいね」
と一気に仰って、実に大らかな声で笑われた。
何を話せばいいのかとひどく緊張していたのが、その一瞬でふっと楽になった。
脚本の話になると水の色が変わるようにたちまち真剣な目になる。
それが、たじろぐほど印象的だった。
若いクリエーターに対して、率直に、情熱的に接してくださる方だった。
先生の脚本集は今も本棚の中心にある。
心からご冥福をお祈りいたします。