しばらく前に見た紅葉。
天候不順で危ぶまれた今年の紅葉だが、
運よく晴天の秋空の下で鮮やかなさまを眺めることができた。
一年の始まりを、どこか不安な思いを誘う桜花が彩るとすれば、
終わりを告げる紅葉は明朗で、逡巡がなく、明るさに満ちている。
冬の到来を予感させるひんやりとした澄んだ大気の中、
時が熟したことを告げて
色づいた葉々は最後の光を放つ。
生も死も肯定するような決然とした明るさだ、と思う。
一ひらの濃ゆき紅葉を手向かな 富安風生
落葉みな天にのぼりてこの夕焼 平井照敏