◆ししまる小説『弐ノ罠』(第２話フタツズツ)◆

警部『フタゴのホシか…やっかいだなぁ』

新米『そうですねぇ。』

警部『で、どんな目撃情報だったんだ？』

新米『はい。犯行現場の近くに住んでいる老人が早朝の散歩をしていた際に見かけたそうです。』

警部『なるほど。じゃあ犯行推定時刻である午前２時よりも後の目撃情報という事だな？』

新米『はい！』

警部『よし。続けてくれ』

新米『まずはこちらをご覧ください』

第２話【フタツズツ】

警部『ゴール？……』

新米『何かお気付きになりませんか？』

警部『手書き？』

新米『………』

警部『木製？』

新米『………』

警部『カタカナ？』

新米『………』

警部『フタツ？』
新米『さすが警部！気が付きましたか？』

警部『ん？お！犯人はフタツにこだわっていたという事だな！』

新米『はい！なので、今まで目撃情報が入ってる場所が散り散りにあるのにも、合点がいきます！』

警部『犯人はフタツにこだわるが故に、すぐ犯行には及ばず遠回りして現場に訪れた。』

新米『そういう事です。』

警部『そしてその犯人は双子で、どちらか片方が両方の名を名乗りアリバイを作りまくって、もう片方が犯行に及んだと』

新米『はい。』

警部『よし！もう一度今までの目撃情報を時系列で並べてみよう』

新米『はい！最初は…午後９時頃。被害者宅の最寄駅近くにあるコンビニですね』

警部『確か店員の中国人が情報提供者だったな』

新米『はい。今日改めて確認しに行ったのですが、犯人は缶コーヒーを２つ買ったそうです』

警部『２つ…。もう２つへのこだわりが、始まってたというわけか』

新米『その後すぐ近くの駐輪場でも目撃されています。これは写真もありますね』

警部『あ！！』

新米『そうなんです。当初は気にも止めなかったのですが赤い三角コーンが２つあるんです』

警部『犯人は自転車に乗っていなかったとされているが何故駐輪場に？という所に気を取られていたが、この三角コーンが目当てだったのか！』

新米『はい、おそらく。』

警部『その後は、二子玉川か！』

新米『午後１０時頃、二子玉川駅で電車に乗る所を大学浪人生に目撃されています』

警部『フタゴ…玉川…。あ、そうだ！』

新米『どうしました！？』

警部『犯人は、２号車の２つ目のドア付近の角から２番目の座席に座った可能性は無いか？』

新米『それは、わかりません』

警部『２にこだわってるんだろ？だったらその可能性は大いにあるんじゃないか？』

新米『わかりません。』

警部『うむ。そうか…』

新米『そして午後１１時半頃。路上でカップルが、犯人らしき人物を目撃したと』

警部『カップル…？２…？カップル！！！』

新米『警部！２に敏感になるのもわかりますが、このカップルは特に犯人の意図としている２ではないと思われます。』

警部『そうか？もしかしたら２にこだわり過ぎた故に目撃情報すらも２に』

新米『警部！それは、わかりません』

警部『うむ。そうか…』

新米『……。このカップルが言うには、犯人は自動販売機の周りをグルグル回っていたと』

警部『確かにこの目撃情報も謎だったな』

新米『そこで、その自動販売機へ行ってきました。』

警部『お！そうか！どうだった？』

新米『驚かないでください。なんと自動販売機が２台並んでいたんです。しかもゴミ箱も２つありました。』

警部『何という事だ！』

新米『これが、その写真です』

警部『確かに２だな。サイズは違うが２だな』

新米『この周りをグルグル回っていたのは、おそらくサイズが違うから２にカウントするかどうかを迷っていたんじゃないかと。』

警部『なるほど！』

新米『しかも、この数メートル先なんですが』

警部『お、なんだ？』

新米『こんな物が放置してありました』

警部『酒屋で見かける、酒のケースか？』

新米『はい。しかも逆さに放置してありました』

警部『逆さには何の意味があるんだ？』

新米『これも私の見解ですが、おそらくベンチ代わりに使ったんじゃないかと』

警部『自動販売機で飲み物を買って、ここへ座り、ニコニコ動画でも見てたと言うことか！』

新米『ニコニコ動画を見たかはわかりませんが、飲み物を買ってここへ座ったんじゃないかと私も思います』

警部『ニコニコ動画だろ！２にこだわってるんだからニコニコ動画の可能性は大いにあるだろ！！』

新米『わかりません』

警部『うむ。そうか…』

新米『で午前１時すぎ、また別の場所で犯人らしき男が駐車禁止の看板を動かしていた！と酒気酔いサラリーマンが証言しています。』

警部『これも謎だったが、写真を見ると理解できるな』

新米『そうですね！おそらく２つを並べたかったんでしょう』

警部『頑固というか真面目というか。』

新米『そして犯行推定時刻とされる午前２時』

警部『２時！！そうか。』

新米『最初から２時に犯行予定だったのでしょう』

警部『すごいこだわり様だな』

新米『感心してる場合じゃありませんよ！』

警部『ああ、そうだな！で犯行推定時刻の後の目撃情報だ！』

新米『はい！午前４時半頃に現場近くの公園で、木に向かって拝んでいた犯人を見たと、深夜営業帰りの居酒屋店主が証言してます』

警部『木に向かって拝む。か。』

新米『ここも、行ってきました！』

警部『お！何かわかったか？』

新米『それが…』

警部『どうした？』

新米『ここまで来たらもっと驚愕の事実！みたいな衝撃が欲しかったのですが』

警部『なんだ？』

新米『その犯人が拝んでたとされる木は』

警部『おお！』

新米『不自然な場所に２本生えてました』

警部『驚愕の事実！！！』

新米『え？これがですか？』

警部『では、ない、かな。』

新米『そして、先程のこれが』

新米『犯人らしき人物が颯爽と走り去っていった。と早朝散歩をしていた老人が証言してくれたものです。』

警部『２へのこだわり。執念。凄まじいな』

新米『そうですね』

警部『まぁ犯人はフタゴで間違いない！そして２へのこだわ』

新米『もしもし！はい！はい、はい。…はい。』

警部『が強くとても執念深い人間な……ん？おい！』
新米『本当ですか！？そんなはずは……。いえ、はい。わかりました。お疲れ様です。』

警部『おい！上司が話してる最中に、勝手に電』

新米『警部！！！』

警部『なんだ！？』

新米『驚かないでください』

警部『だからなんだ？』

新米『先程、犯人が自ら警察署まで出頭し自首したそうです。』

警部『え！！おーそうか！それは良かった！』

新米『いえ。それが、どうやらそうでもなさそうです。』

警部『ん？どういう事だ？』

新米『自首しに来た男なんですが…、一人っ子だそうです。』

警部『な、なんだと！？』

新米『驚愕の事実！！！』

つづく