「想定外」という言葉で許されると思っている人々
東京電力は、福島原発の事故を「想定外」のものとして、賠償責任からの逃げ切りを図っている。
(以下引用)
「東電側が今回の大震災は原子力損害賠償法(原賠法)上の「異常に巨大な天災地変」に当たり、「(東電が)免責されると解する余地がある」との見解を示したことがわかった」
(引用終わり)
日本では、M8以上の規模と推定される地震は、有史以来以下の通り確認されている。
1世紀 東南海 M9級
684 白鳳地震(南海)M8.0~8.3 土佐で津波大被害
869 貞観三陸地震 M8.3~8.6 貞観津波による大被害
887 仁和地震(南海)M8.0~8.5
1096 永長地震(東海)M8.0~8.5 伊勢・駿河で津波大被害
1099 康和地震(南海)M8.0~8.5 土佐で津波大被害
1200ころ南海・東南海・東海地震
1360 紀伊・摂津地震 M7.5~8.0
1361 正平・康安地震(南海)M8.0~8.5 摂津・阿波・
土佐で津波大被害
1498 明応地震(東南海・東海)M8.2~8.4 伊勢・駿河
で津波大被害
1586 天正大地震(東海東山道)M7.8~8.1
1605 慶長地震(東海・南海・東南海連動)M7.9~8 紀伊・阿波・土佐で津波大被害
1611 慶長三陸地震 M8.1
1703 元禄関東地震M8.1 関東南部に津波
1707 宝永地震(東海・南海・東南海連動)M8.4~8.7
伊豆・伊勢・紀伊・阿波・土佐などで津波大被害
⇒富士山宝永の大噴火
1793 三陸沖地震M8.0~8.4 陸中から常陸にかけて津波
1843 十勝沖地震M8.0 厚岸に津波
1854 安政東海地震(東海・東南海)M8.4
伊豆から熊野にかけて津波大被害
安政南海地震 M8.4 紀伊・土佐などで津波大被害
1891 濃尾地震 M8.0
1896 明治三陸地震M8.2~8.5 津波大被害
1911 喜界島地震M8.0
1933 昭和三陸地震 M8.1 津波大被害
1946 昭和南海地震M8.0 房総から九州にかけて津波
1952 十勝沖地震 M8.2 北海道から東北に津波
1958 (択捉島でM8.1)
1960 チリ地震大津波
1963 (択捉島でM8.1)
1994 (北海道東方沖地震M8.2)
2003 十勝沖地震M8.0
2011 東北地方太平洋沖地震M9.0
1世紀の東南海と推定される地震を除くと、684年から2010年までの1326年の間に、M8以上の可能性がある地震は24回観測されたことになる(被害のほとんど無かった択捉島地震を除く)。M8.4以上に限ると10回である。これにはM8に達しなかった関東大震災や阪神・淡路大震災は含んでいない。直下型地震は地震のエネルギーの割りに被害が大きくなる傾向があるが、そのような地震を含むと上記の倍以上になるだろう。
ここで言いたいのは、日本で原発を作る以上、地震や津波は想定されるのが当然である、ということである。しかも、貞観三陸地震のような、大津波が来た事例も既に情報としてあったのである。
日本電産の永守重信社長は「政府や東京電力は想定外と言っているが、我々がそんなこと言っていたら、つぶれてる。想定外なんて言い訳したらあかん」と述べたが、これは全国のまっとうな企業経営者(特に中小企業)の想いを代弁したものだと思う。
今回の震災の影響で、既に企業の倒産が生じ始めている。若干政府の支援がもらえる会社もあるかもしれないが、ほとんどは経営者は家族ごと財産を身ぐるみ剥がされ、従業員は路頭に迷うのである。永守氏は「昔は生命保険で(自殺して)返すしかなかった」と述べている。
東電が現在も命脈を保っているのは、彼らが優れているからでも偉いからでもない。単にその事業が電力供給という無くてはならないものだからである。彼らの高待遇は、電力の安定供給と引き換えのものであった。
しかし、その前提は崩れた。電力供給は不安定となり、福島の多くの住民の生活を奪い、その他のエリアの住民も不安に陥れている。海外に対しては日本全体を放射能の風評被害に晒しているのである。
前回書いたように、このような状況下であるのにもかかわらず、東電は甘い人件費削減案を出してきた。特に社長、会長のトップ2名の減額幅が50%に過ぎなかったことが批判されている。
東電の役員報酬は、他大手企業と比較すれば高いものではない。
しかし、この状況下で報酬を半分ももらおうというこのトップの度し難い愚かさは救いようが無い。そして、国にはしきりに原子力損害賠償法に基づく免責を求め、税金の投入を求めているのである。
他原発、特に浜岡原発を止めるためには、このような東電の居直り、陰謀を決して許してはならない。これが通ってしまえば、他電力会社は「原発事故をを起こしても原因が地震であれば身ぐるみ剥がされるわけではない。国に助けてもらえる」と慢心し、原発を稼動し続ける。
東電には恨みはない。一般社員やその家族は、あずかり知らない原発の批判に晒され大変だと思う。しかし、自社の不始末で多くの住民の生活を破壊しておきながら、自分らだけがぬくぬくと生活することは許されない。特にトップが先頭をきって就任して以来の報酬全額を返還するくらいのことを行ない、他役員、社員についても最低限の水準まで給与を切り下げなければ、国庫からの負担を行なうことを許すことは出来ない。
国庫負担を行なう場合は、更に原子力行政を行なってきた国の責任が問われなければならない。国家公務員給与の大幅削減、国会議員の報酬額半減などの実施なしにこれを認めては決してならない。
決して原発震災は許されない、免責されないという断固たる姿勢を持って、浜岡を筆頭とした危険な原発を止めなければならない。